第5話 作戦会議


岩陰からぴょこっと顔を出したトレミィが、ぱっと笑顔を咲かせた。


トレミィ:「もう大丈夫だよっ!」


盗賊スキル《気配察知》で周囲のゴブリンの気配が完全に消えたことを確認し、彼女は得意げに親指を立てる。


トレミィ:「意外と手強かったね~。ちょっと焦っちゃったかも?」


岩陰の奥から這い出てきたエディは、眉間に皺を寄せながらトレミィの額をコツンと小突いた。


エディ:「だから言ったろ。ゴブどもは群れると厄介なんだって。君は、突っ走りすぎなんだよ」


トレミィ:「てへっ♪ 面目ないっす!」


反省ゼロの笑顔を浮かべるトレミィに、エディは深いため息をつきながらも、どこか憎めないような苦笑いを浮かべる。


エディ:「……まあ、俺も正直、甘く見てた。ここは一旦引き返すしかないか」


その言葉に、トレミィはぷくーっと頬を膨らませた。


トレミィ:「えぇ~? せっかくここまで来たのにぃ~!」


エディ:「ここのゴブリンどもは格が違うぞ。統率も取れてるし、俺たちだけでこれ以上、先に進むのは、さすがにきつい。」


トレミィ:「そうだねぇ……でもさぁ……」


納得いかない表情で、トレミィは洞窟の奥を見つめた。


エディはふと視線を横に流し、隣で眉間にしわを寄せているトレミィの顔をちらりと見た。


エディ:「ところで……」


その一言に、トレミィがぱちりと瞬きをして首を傾げる。


トレミィ:「なに?」


エディ:「ここにいる連中って、君が追ってた奴らか?」


トレミィ:「――あっ!そうだった!忘れてた!」


まるで雷に打たれたかのように叫ぶトレミィに、エディは呆れ顔で額を押さえた。


エディ:「おいおい、それを確かめに来たんじゃなかったのかよ……」


トレミィ:「うーん……でも、まだハッキリしないんだよねぇ」


トレミィは困ったように唇を尖らせ、首をかしげる。その様子に、エディは深々とため息をついた。


エディ:「……仕方ない。いったん街に戻るか」


そう言って踵を返そうとしたエディの袖を、トレミィが慌てて引っ張った。


トレミィ:「ちょっと待った!これ、どうかな?」


その声に、エディの足がピタリと止まる。


エディ:「……は?」


振り返った彼の顔には、すでに嫌な予感が滲んでいた。

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