第18話 辿り着いた答え
「このままじゃ落ち着かないし、誰か住んでるのかどうか、みんなで調べてみようか?」
「それがいいね、トモヤ君」
「はいですー」
「……そ、そうだな、主よ……」
僕の提案に対して、ゴンだけ少し躊躇した感じだけど承諾してくれた。なんせ、屋敷内はとても広い。なので、全員で各部屋を調べながら移動すれば虱潰しに探せることになる。
そういうわけで、まずは最初の部屋からスタートする。ここはルームカードを使ったときに入れる部屋で、2階の寝室に相当する。ここにある扉から校内へと戻れるんだ。窓の外はすっかり暗くなっているのがわかる。ベッドの下、箪笥やソファの後ろを調べても特に異変は見当たらない。
「主よ、隠し部屋みたいなものがあるかもしれないぞ!」
ゴンが細かくテレポしながら壁に軽く体当たりするけど、そういうのが出現する気配は一向にない。
「ゴン、壁が壊れちゃうからもっと優しく」
「りょ、了解だっ!」
「ゴンさん、こんな風にもっと優しくするですー」
エルが飛び跳ねている。どうやら地下室がないか床を調べてるらしいけど、スライムなら軽いだろうしどんなにジャンプしても壊れる心配はなさそう。
「……ここじゃなさそうだね」
壁に飾られている風景画の周辺を調べていたリンが呟く。僕たちは寝室をあとにして、他の場所を手当たり次第に探すことにした。
寝室を出ると、すぐ脇に一階へと続く螺旋階段がある。それを素通りして二階にある各部屋を見て回る手筈だった。何があるのか一度だけ確認してはいるけど、詳しく調べるのはこれが初めてなんだ。二階にはトイレ、物置部屋、空室A~G、それに書斎みたいな部屋があったはずだ。
それらの部屋をみんなと一つ一つ隈なく探して回るけど、どこにも変わったところは見られない。しょうがないので一階に降りてリビング、ダイニング、トイレ、シャワールーム、玄関等、色んな場所を調べたものの、結局何も見つからなかった。
「――あ、もしかしたら……」
僕はそこで一つの仮定が浮かんだ。
「僕たち以外に誰かがこの屋敷にいたとして、それは隠れ住んでるとかじゃなくて、普通に住んでたんじゃないかな?」
「……トモヤ君、それってどういうこと?」
「あ、主よ、我もちんぷんかんぷんだ! 詳しく頼む!」
「エルも気になりますですー」
ますます注目が集まる中、僕は自分の考えに確信を持ち始めていた。
「屋敷内のどこかに秘密の部屋があって、誰かがそこに隠れ住んでいる、という考え自体が先入観だったんだ。そうじゃなくて、その人には隠れなくてもいいくらいの気配を隠す能力があって、姿を見られる心配もなかった。でも、ちょっとしたミスで音を立ててしまって僕たちに気づかれたってことじゃないかな?」
実際、それまではここに誰かいるんじゃないかっていう疑念はあっても、それは庭や屋敷内の手入れが常に行き届いていたからであって、第三者の視線や気配を感じていたからではなかった。物音によって初めて自分たち以外の誰かがいるとわかったんだ。
「そ、そういえば……」
ゴンがハッとしたような顔になる。
「書斎に置いてある植木鉢が倒れた痕跡があった! 土がほんの少し零れていたのだ!」
「……それじゃ、あの音は、その人が植木鉢を倒した音……?」
「リンさん、その線で間違いなさそうですねー」
「……」
僕たちは顔を見合わせて頷いた。
「お見事ですね」
「はっ――」
そのときだった。僕たちのすぐ背後に、誰かが立っていたんだ。
恐る恐る振り返ると、黒いローブを着た金髪の女性だった。耳が尖ってて長くて、容姿の端麗さから察するにどう見てもエルフそのものだ。
「あ、あ、あの――」
「危害を加えるつもりはございませんので、どうかご安心を」
「あ、は、はい」
エルフの女性はなんとも穏やかな表情で言ったけど、その落ち着きっぷりが僕には妙に恐ろしかった。
「わたくしは、この家の使用人を務めているシスと申します」
「僕はトモヤ」
「私は、リン」
「我はゴンだ!」
「エルっていいますー」
「……存じております。会話を盗み聞きするつもりではなかったのですけど、掃除をしている最中に聞いてしまったので。ただ、邪魔をするつもりはなくて。わたくしは、この屋敷の状態を維持したかっただけです」
「でも、シスさん。僕たちは勝手にここを使ってるわけで、邪魔にならないのかな?」
「トモヤといいましたね。そんなことはありませんよ。この屋敷の主人はとうに亡くなっております。わたくしが勝手に残って手入れを行っているだけで、所有権を主張するつもりはありません。大切な屋敷を荒そうとするのなら別ですけど、そうでないのならここに誰が住んでも一向に構いません」
「では……あなたは、ただ綺麗な状態を維持するためだけにいるということ……?」
「リンといいましたか。はい、その通りです。気配を感づかれるとは思いませんでしたし、それがなければずっとそのままでいようかと思いましたけど、トモヤに気づかれたことで、こうして自ら打ち明けたほうが安心させることができると判断しました」
「なるほど……」
シスってなんだか不思議な人だ。ここに住んでるのに所有権を主張もせず、僕たちに気づかれないまま空気のように生きるつもりだったなんて。そう考えると俄然興味が湧いてくるのも自然な流れだった。
「シスさんって、よっぽどこの屋敷に思い入れがあるようだけど、どうしてなのか聞いても?」
「えぇ、構いませんよ。折角ですから、紅茶でもお出ししますね」
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