第2話 軍艦狩り2
肌に照りつける太陽光が痛いが、気温が低いらしく、丁度いい感じで曇りのない空を見上げる。
空には大小の親子の様な月がうっすらと見える。
どこかの映像ライブラリにあった、アメリカだかどこかの広大な風景を思い出させる。ゴツゴツとした岩山が多くある荒野にムサシはいた。
空を見上げムサシは呟く
「空を飛んだら気持ちが良いだろうな? 飛行機とかあっても飛べないけど。未だに残るナノマシン災害が憎たらしい……それにしても青いなぁ」
テラフォーミングの名残でそこら中にナノマシンが存在するらしい、人類が空を飛ぼうとすると、機械になんらかの異常が発生する。
ひどい時は物理的に重要箇所が破壊される。
そのような災害の名残は人類を地上から飛び立つことを許してはくれなかった。
ミサイルやら誘導兵器が使用不可、対戦車ロケットは使える。
例外として車両型等の小型誘導兵器は都市によっては生産可能となる。
当然、それはレアな存在である。
地雷や不発弾などは短時間で土中のナノマシンにより不活性化されてしまうらしい。
個人的に一番不思議に思っているのは機械は空飛べなくてもナマモノは空を飛べる事だ。
鳥やナマモノは飛んでいるのだ。
全くもってワケがわからない。
空を飛ぶって基準がよくわからん。
いや、これは俺が障害が発生する条件を理解していないってとこもあるだろうが…兎に角わからない。
話を戻そう。
ロケット噴射がだめなんだろうと思ったら一部違うようだ。
RPGがあるからな。ならば有人という事象が要因なのかと言うとどうも違う。
グラップリングなどで事故で落下した時に、生命を守るために推進剤噴射する緊急回避装置がある。
あれなんか一時的にだが有人で飛んでいるとは言えないだろうか? 落下速度を低減させる程度なので空はトンではいない判定なのだろうか?
一部の例外がナノマシンに許されている? あぁ、何を基準に飛行禁止を決めているのか非常にワケがわからない。
「ぶっ飛んだ技術がそこらにあるってのに空が飛べないとか、悲しいなぁ……」
ムサシは空を飛べないことに苛立ちを覚えていた。
異世界転生したのであろう、明らかに所々に見たことがない情景が見られる。
ムサシがこの世界に目覚めてからオーバーでテクノロジーがロマンで大暴走な、そんな状況を見せられた。
そんなのを目の前にしたら、嫌でも異世界感を脳裏に焼き付けてくる。
だいたい、冷凍睡眠だかタイムトラベルだかで、わけわからん状況から目覚めて、ただでさえ混乱しているというのに。
状況はさらに追い打ちをかけてくる。
まず、自分の身体に驚かされた。
体は筋肉質になっていた。
顔つきは雰囲気は30代前半の苦労人風にも20代前半にも見える。
自分が元高校生の標準体型であったはずだと、色々と記憶障害があるがムサシは記憶の断片を思い出していた。
しかし、身体には不思議と違和感を感じなかった。
少し動いてみて、まったく問題なく身体を動かせた。
一通り身体の状態を把握して一旦落ち着くとAIの誘導に従い外に誘導された。
そして、新しい世界への扉を開いた。
眼の前は海などないというのに。
広がる荒野に巨大な戦艦を見た。
正しくは足のある軍艦、歩行戦艦を見た。
それはムサシの脳裏に強烈に一種の憧れと共に焼き付いた。
そして、その直後に薄く小麦色の日焼け肌が健康的なバレーボールかバスケでもやっているのがお似合いな少女アミに会った。
そのアミにムサシは保護された。
それはムサシにとって、幸運なことでもあり、また地獄の始まりでもあった。
危険な敵性体が彷徨くこの世界は人類にとって完全な安全圏は無かった。
都市と呼ばれる巨大な外壁に守られた安全に引きこもる場所もあった。
しかし、完全な安寧を得られる世界ではゆったりとした絶滅が待っている。
都市制御AIの方針で、最低限の遺伝子プールを確保できる人数以外は、基本的に外の世界で生活を強制させられる。
ムサシは外の世界で生きることを決めた。決めさせられた
最初にアミに連れられて訪れた都市ファンティア。
その市長サラの提案により、熱いサポートを得られる事もあったので、ハンターとして生きることを決めた。
若さ故の判断でもあった。
初めて歩行戦艦を見たときの衝動が、歩行戦艦が欲しいと己の心の声であったことを後で理解することになるが、その時は世界に対して湧き上がる好奇心を抑えられなかった。
決して美人な市長に踊らせられたわけではない。ムサシは心の片隅でそう思った。思っただけであった。
性根としては安全を好む傾向にあったムサシであるが一種の渇望のもとに行動した。
表向きには歩行戦艦に対する憧れ、裏に潜むは女にモテたいというスケベ心を持って世界に挑んだ。
しばらく訓練施設で鍛え、サバイバル能力を得たあと、地獄のような半年間を乗り越えた。
ムサシは訓練と海賊船での実戦経験で立派な戦士になっていた。
海賊船に乗り込んでから幾度も死線を潜り実戦より恐ろしいアミの訓練も乗り越えてきた。
ムサシ達が海賊船に乗りたての頃は何時死ぬかを賭けられていた。
オッズの大半がムサシの逃亡。
死亡するまで精神的に耐えられないと、おおかた逃げるだろうと。
船員の大半がそのように考えていた。
それほど過酷な訓練と実戦だった。
そんなムサシはメゲながらも生き残り、船の仲間たちにも認められ始めるくらいの期間が過ぎた。
海賊船でのお試し期間が過ぎて、戦士としての自信がムサシにもついてきた。
そして、船員たちからも認められるようになった。
そこにムサシは軍艦を手に入れるチャンスが巡ってきた。
ファンティア市長サラから野生の歩行軍艦が徘徊している情報がもたらされた。
念願の歩行軍艦を手に入れるチャンスだぞ。
船の仲間から声援を受けムサシ達は待ち伏せポイントで待機していた。
しかし、ムサシはビビりまくっていた。軍艦狩りは初めてであったからだ。
訓練では乗船行動など色々と行っていたが凄惨な戦闘光景を見るのは初めてであった。
車両による乗船攻撃に失敗したサイバーな武者達の惨状を見てしまった。
作戦初期で起こった壮絶な戦闘を中継映像で見てしまった。
その圧倒的な歩行軍艦の火力に意気消沈し、怯えていた。砲撃の凄まじさや火線の物量はムサシを怯えさせるには充分であった。
だが、軍艦への恐怖と渇望の狭間でムサシの心は揺さぶられていた。
それで思わず空を見て現実逃避をしていた。
空に虚ろな目線を送るムサシに声をかけたアミがムサシに近づいてきた。
「ハィハイ、いい加減に覚悟を決めて作戦開始するよ? 準備はいいムサシ?」
近接戦闘用にまとめた装備と小銃を調整しながらムサシに問いかけてきた。
1週間前に見た安全な艦内で過ごす薄着のアミ、その薄く小麦色の日焼け肌の健康的な姿が思い浮かぶ。
だが、目の前にいるアミの肌は砂埃などで薄汚れていた。
一瞬、脳裏に浮かんだ光景が懐かしく感じられた。
偶然を装いムサシのお目付け役となりこれまでムサシを鍛え精神的にも支えていた。
そんな彼女は褐色の健康的で活発な美少女ではあるが戦闘に関してはプロ中のプロである。
彼女は子供の頃からのハンターとしての経験、ハンター活動を支えた天才的なエイム能力と研ぎ澄まされた五感による知覚能力、これらを備えた若手のエースハンターとして名を上げていた。
だが、そんな彼女の地獄の訓練でもムサシの根幹は修正できなかった。
「もしもの時に救援の車だって、すぐ来てくれる手筈でしょ? 私達が戦闘開始したら一定距離でサポートしてくれるって話を…ムサシ? 一緒に聞いてたでしょ? ビビりすぎよ。ハイ、深呼吸して」
「スーハースーハ。ブリーフィングの奴だろ?スースーハーハー。 ちゃんと聞いてたよ? いやでもさ、主砲弾が直撃したら終わりじゃないか? 形も残らないよ? 」
「めったに当たらないって、それにほとんどの攻撃手段を奪ってるって話だよ。へーきへーき」
アミは怪訝な目を向け、狼狽えるムサシにカツを入れていた。
だがムサシは不安を口にする。
「やっぱりね、軍艦に人間が歩いてって乗り込むのって無理があると思うんだ、僕かぁ。無防備でトコトコと歩いて行くとかおかしいと思わないかい? 」
「ムサシ? あなたは戦闘が始まると頼りになるんだけど…戦闘前はいっつも臆病なのよ。そろそろなんとかならない? 」
「そんなことを言われてもだね、君たちぃ? 怖いもんは怖いんだ。仕方がないじゃないか? 」
「今までさんざん訓練したでしょうが。いい加減に腹くくって覚悟決めな? VR訓練だけじゃなく、実戦で死線を何度もくぐったでしょうに? 」
「軍艦狩りの本番は初めてじゃない?」
「母艦でなんども乗船攻撃の訓練させてもったでしょう? あんまりおっかなびっくりで準備するもんだから。しまいにはみんなの賭け対象にまでなっちゃって。艦の最高スピードでの飛び乗り成功させて大番狂わせしたじゃない? もぅ忘れた?」
「あれ、弾が飛んでこないじゃない? ある程度安全が確保されてたじゃない? 」
「大丈夫だって、人の歩く速度っくらいがセンサーに囚われにくいから一番安全に乗り込めるんだって。あんまり疑うから味方艦のいくつかで実験までしてセンサーの有効範囲を確かめたでしょ? 」
「せやかて工藤? 」
「だれが工藤じゃぃ。だいたいこの作戦で行こうって言ったのムサシじゃない? 」
アミに拾われてから、師匠でもあり友人でもある。
そんな複雑な関係を続けている。
ムサシはこんなやり取りが儀式めいた大切な時間でもあった。
だが、このようなやり取りをしているときは、たいていムサシが怖気づいている状態が多い。
ムサシは己を鼓舞するためか軽口や屁理屈を言うことが多い。
アミはそれを知りつつムサシに少しうんざりしながら付き合っていた。
「だいたいね。前から納得がいかなかったんだよ」
「なにがさ?」
「歩行軍艦ってやつだよ。八脚や六脚はまだ良いよ。虫っぽい動きとかなんか絵になるし」
「何脚でもいいじゃない? 」
「問題なの4脚シリーズだ。爬行系もまぁわかる。ぬめっとした船の曲線美に合うんだ。船体の横から出る感じがどっしりと構えていて違和感を覚えない」
「それは君の感覚がへんなのでは? 」
「4脚のうち高速系の連中が変なんだ。なぜ、象とサイとかの大型哺乳類みたいな走り方してんだよ? 歩行じゃないじゃないか? おかしいだろ? 重力どうなってんだよ? なにが走行軍艦だ! ウォォォォン!? 」
「その話、またするの? 歩行してる軍艦を初めて見た人たちが報告したから。初観測が歩いてたから歩行軍艦になったって説明したでしょうに? 」
「高速駆逐艦なんてネコ科とか犬かの動きだぜ? さすがに馬とかの動きする奴はいなかったけどさ? 見事な走りっぷりで初見の時はお茶吹いたわ」
「それを言ったら私的には2脚艦が違和感あるんだけど? 」
「あれはいいの。違和感ありすぎて逆に気にならない」
「なにそれ? 」
「鶏とか駝鳥的な親しみ感がある」
「あたし的にはTなんとかな恐竜なんだけど」
「似たようなもんだろ」
「だいたい速度出てるのも意味わからん。歩行している足運びのくせに速度でてるんだぜ? 遠くで動く巨大なものが実際は早く動いているのにゆっくり動いて見えるってやつか? 」
「まーたそんなこと言ってる、誰とは言わないけど、ありがたいいながーい解説を聞く羽目になるよ? あたし、速度が出てくると色々な物理現象の異常が起きて、重力が軽減するとか粒子フィールドがどうとかあの辺の説明されると頭が痛くなるんだけど? また巻き込まないでよね? 」
「俺達は今からそんな異常なモンに飛び乗ろうって話なんですけど? 」
「さて、そろそろ現実を見ましょうかムサシ? 現実逃避してないでイメージトレーニングでもしたら? 」
「さんざんやったよ? 艦速だって50キロで沢山イメトレしたよ?? それでもふとした瞬間に思ってしまうのよ。グラップリングショットで飛び乗るとか正気の沙汰じゃないでしょ? 」
「よそ様でも結構成功している人いるって話したでしょ? だから射出データ揃ってて参考にしたじゃない? 飛び乗り船用の設定がグラップリングショットにもあるでしょ? 機械側で勢い殺しながら飛び移れるようにしてくれるから大丈夫だって」
「あの感覚が嫌なんだよ。高いとこに上るときは引っ張られる感じでグィーンって上ってくけどさ、移動物体に乗り移るときは相対速度を合わせる感覚っていうのかな、ぬるーってロープが持ってかれるやつが気持ち悪くてさ」
「そりゃまぁね、向かってくる物体に飛び乗るんだから勢いを殺さないとね、急に引っ張られたら危ないでしょ、いくらグラップリング機構が頑丈だって、私たちの体がもたないよ」
「艦の側面からトライする感じは何回もやったんだし、できるよムサシ。横からスィーって乗込む感覚を身に着けたでしょ?」
「いやまぁ、飛び乗りは成功するようになったけどさ。問題はその先よ。怖くない? 飛び乗った瞬間に防衛ドロイドなんかに逆襲撃くらったりとか? 」
「あー言えばこう言う。そうならないように各種スモークグレネードにチャフグレネードに持ってきてるでしょう? 」
「レイダーとかなんか特殊なロボットとかいるかもしれないじゃない? 」
「レイダーなんていないって、居たとしても先に襲撃かけたお侍さんたちが片付けてくれてるって。ほんとに…まったくもぅ」
アミはムサシのあれこれに応対して流石に辟易していた。
だが、ムサシには救いの女神がまだいる。
「観測班からそんな報告は無いよ。それに近接戦闘になったら時の為に私がいるよ。ムサシ? 」
ゴテゴテと重苦しい装甲版が付いた外装に包まれた西洋甲冑を縦に縮めたような姿のバトルスーツが近づいてきた。鎧の中身からアーニャが透き通った通る声を響かせてきた。
ゴツイ装甲兜を脱いで、サラサラのプラチナブロンドに青や緑の宝石の輝きの瞳持つ美少女が、ちんまりとした顔を覗かせている。
見える頭部だけは高原で花でも愛でているのが似合いそうな心優しそうな少女がいた。
重そうな動作を見せることもなく、スムーズにムサシの横に来ると、艦内突入時の防御扉を破る為に用意したヒートナイフの設定を確認していた。
「これでバッチリ守ってあげれるよ、ムサシ」
そう言う可愛らしい笑顔とは裏腹に物騒に鈍く赤く光る刃物がヴヴヴと異音を発し、ムサシの前に掲げられていた。
氷のように冷静に炎のような闘志を心に宿したアーニャは狩人生活で鍛えられた。
時には静かに獲物を仕留め、時には大胆に突撃するハンター美少女であった。
そんなアーニャはその小柄の身体には不釣り合いな爆発推進システムを備えた鎧を着込んでいた。
ムサシのチームに入ってくれた。
ムサシにとっては大変ありがたいことではあったが少女兵と言う後ろめたさがあった。
アーニャくらいの女の子を先鋒として突撃させる事に何かモヤモヤとした葛藤があった。
ならばせめて彼女の突撃スタイルにあった装備ということでアミに相談して無理を言ってハンター組合から仕入れてきた。
かなりのオーバーテクノロジーが使われていて軽量装甲ではあるが性能は恐ろしく高い。着るVFなんて言われている代物だそうだ。
ムサシはコレにより心の平穏を得ていた。彼なりの自分の倫理観への言い訳程度である。
そもそもこの世界では生きるために子供でも武器を取る。
アミもムサシもであるが、以前の世界では高校生として、本来は学業をしているのが普通である。
それ故に威勢の良い小娘として関係者から人気を得ていた。
半年間にわたる共同生活と度重なる戦いを経て、アーニャは海賊船の仲間である侍や海兵隊から、その実力を認められた。
彼らの親しみと海賊らしい軽口が込められた彼女のあだ名は、アーマード小娘と呼ばれるようになっていた。
当初は小娘の部分を気に入っていなかったが、可愛がってくれる様子から嫌味のないことは理解していたので、アーニャはこのあだ名を今では受け入れていた。
「今に見ていろ飛び切りのいい女になって見返してみせるからな」
と、優しくも怖い目線を送っていつも彼らに言い返していた…
勇ましくも気高いアーニャから奮起を促される、慣れた光景があった。
アミとアーニャは自分達の準備を完了して相互確認を行っていた。
彼女達は甲板での戦闘に備え、ECM、チャフ、サーマル、通常弾、様々なグレネードを体のあちこちに装備していた。
そして確認作業を終えると今度はムサシの世話を焼いた。
アミはムサシのタクティカルベストを確認する。
「左上がECM、左下チャフ。腰が通常弾。サーマルは脚ね。応急治療剤は左右の腰に入れてあるからね。ちょっと聞いてる? 」
「キキキキ聞いてるさ。左上がECM、左下チャフ。腰が通常弾。サーマルは脚だ。大丈夫だろろろろろ?」
「ポーション忘れてる」
「ポポポーション? あぁ応急治療剤ィィィな、急にファンタジーっぽい名前がでてくるからうっかりしてた」
「水薬だから、みんな面白ってポーション言ってるもんね」
プラスチックにもガラス製にも見える小瓶の中の液体を触りながらムサシは言う。
「落ち着いて考えてみればさ、ナノマシンで重症がだ。急速治療で戦線復帰できるって、こわくない? 」
「腕がもげかけても運が良ければって」
「あれは大げさだけどね。そういう一例もあるって」
「うん、自分も端末で確認した。あれグロいけどすごいよね。よしっと、用意万端です」
「武器弾薬 グラップリングショットの設定も良し。迷彩マント動作確認 ヨシ オールグリーン」
ムサシは声を出して確認作業を行っていった。
これらの装備は乗船攻撃時に迎撃に来るである防衛機械人形に対する備えであった。
「あのね、ムサシ? 以前にフリゲート級の大物も捕らえたじゃない。あんな感じの艦内外戦闘だよだよ。いけるって」
あえて冗談めいた口調でアミは言葉を投げる。
「あれ、軍艦じゃない。敵性体の軍艦を背負った巨大陸ガニだろ? 砲撃してこなかったじゃない? 」
「それはそうだけども」
「対軍艦戦は違うよ。あのやたら強そうなサイバー武者達が蹴散らされたてんだぜ?」
「そうだけど武者さん達は機械化してる人が多いから生存性かなり高いよ? 砲撃で吹っ飛んで車が横転してもぴんぴんしてる感じ? 」
「砲弾直撃したら?」
「クリティカル系や大口径直撃に関しては、死んだことも気が付かないぐらいだろうし…きっと痛くないよ? きっと」
そう言うと、アミはなんとも言えない笑顔をムサシに向ける。
「アミさんやめて…暗黒微笑はやめてくれ。怖い」
「うん? 怖がってるからジョークでほぐしてあげようと思ったのに。その言い草は何? 」
アミはプンスコ怒り出した。
気を利かせたアーニャが予備弾薬を収納しながら話しかけてきた。
「小口径なら喰らっても、ボディーアーマとかで結構耐えるよね」
胸の装甲板を叩きながらアーニャが呟く。
「機関銃とか対空砲じゃなかった速射砲は? 対地砲関係は?」
ムサシはすかさず返す。
「つらい、きびしい、やばい」
淡々とアーニャは返した。
「怖い やっぱカエル」
呆れてアミは少し棘のある感じでムサシに言葉をかける。
「師匠が言っていたでしょ? イサム先生? 突入ポイントは主砲の死角を、主砲以外の艦載兵装の射角射線を考え攻めろと。タイミングによっては血路が開かれると。前部主砲損傷して攻撃能力なし、注意すべきは両用砲や銃座なんかの艦載兵装、それだってかなりの数が先に攻撃してるサイバー武者おかげで損傷している。軍艦の攻撃能力は低下していて死角が多い。こんなチャンスめったに無いよ? もたもたしたらどこからかで嗅ぎつけた連中に横取りされちゃうよ? 」
「いやだって、それでもサイバーな武者さん達吹き飛ばされてたじゃないか? 怖いって」
「そもそも危険性が高いって話を伝統だかしきたりだかで無理して強行したからあんな目に合うのよ。こっちは止めてたんだから。それを押し切ってさ。見事に谷間に追い詰める役を務めてくれたよ。あの侍の文化はわけわかんないけど度胸は一級品よ。状況によっては突撃で被害少なく成果を上げることもある。けれど今回は別だったみたいね。まぁ、彼らも納得して仕事をしてる訳だし、契約通り先陣を切らせたから。遠慮なく対艦歩行主義をやらせてもらうまでよ」
海賊船と車両の武者集団の契約でムサシ達に作戦権限が移る前に仕留めることができたら報酬は武者達の物になるとかあった事をムサシは思い出していた。
「囮の自動操縦車がある程度いるからさ、結構無事って報告あったよ? それに梅雨払いしてくれるだろうから自由にさせてやれとキャプテンは言ってた」
不安そうな顔をしていたムサシに気を使ってアミが戦闘データを確認しながら力強くムサシに言う。
「歩行軍艦の弾薬消費も激しいだろうね。私達が取りつくころには少なくなっていると良いね」
アーニャがアミに続いてムサシを気遣う。
「あの人達は死ぬのが怖くないクレイジー集団だからねぇ。体もサイボーグや機械化率が高いから吹っ飛ばされても意外と生き残ってるもんよ。生存性高め高め」
「ほんとに?」
「さすがに艦載砲には耐えられないけどね。でも、あれだけ損傷してる艦なら、生きてる主砲も少ないし、なかなか当たらないもんよ」
「先ほど何台も吹き飛ばされてましたけど?」
アミとムサシのやり取りを眺めていたアーニャは不敵な笑みを浮かべて呟く
「彼らは不運と踊っちまったのさ」
「ちょ? アーニャ? そんなセリフどこで覚えた? 」
「海兵隊のおにーちゃん」
「そんな言葉忘れなさい」
「それはそうと、彼らが勇ましく散ったことは尊敬してあげるべき。その手の価値観持ってる人達だから」
「蛮勇じゃない? 」
アーニャとムサシのやり取りにアミが割って入る。
「あれはあれで効率良いのよ、たぶん。それに誉のほうが大切なのよ彼らは」
「あーうん。そうなのかもだな。それはそれとして歩行軍艦の状況を見たい。衛星写真で状況確認したい。いや、空飛ぶ偵察ドローンでもいい、手に取るように状況がわかるようにしたい!! 不安でたまらないんだ」
ムサシがまた不安を表した。
衛星も偵察ドローンもない世界だというのを理解いしているのに無い物ねだりをしてしまう。
やれやれとアミとアーニャが肩を竦めていると3人とは違う声の通信が入った。
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