スノーマジックファンタジー
201×年 4月
転生したとはいえ、まだ小学生だった私は「音楽を聴く媒体」を持っていなかった。
留守番中、親の古い端末をこっそりと持ち出して、履歴を消しながら検索をかけるだけ。
転生したのに、楽しめない!!
そんな事実に絶望した私は、一代決心をした。
音楽プレイヤーを買うぞ!
それは、中学生になったある日のこと。
けれど、されど中学生。
お小遣いはほとんど本に使っていたため、無いも同然。
音楽プレイヤーは5000円くらいした。
ちょっと高い。
そんなとき、父親が提案してくれた。
「中古でもいいなら、安い音楽プレイヤーがあるはずだよ」
そのころの私には、「音質」などの知識は一切ない。
音楽を聴くことができて、転生できればそれで充分。というか、転生させてください。
だから、2000円で中古の音楽プレイヤーを買ったのだ。
初めてCDを借りてきて取り込んだのが、SEKAI NO OWARIのアルバム『Tree』だ。
このアルバムにしたのはもちろん、『炎と森のカーニバル』があるため。
好きな水色のイヤフォンも買って、初めて頭の中で音楽が再生される感覚を得た。
すごい! すばらしい!!
初めて聴いたばかりの曲たち。
その中で惹きつけられたのは、『スノーマジックファンタジー』だ。
スノーマジックファンタジー
雪の魔法にかけられて
僕は君に恋した
もしかして君は雪の妖精?
雪の妖精と恋をした、そんな物語。
この曲を聴いた瞬間、衝撃が走った。
そして、また転生した。
Fukaseさんは、雪の妖精とも恋愛をしたことがあるの!?
同じ疑問を、テレビでNakajinさんが問いかけていた。
そうだよね。同感です。
やがて、僕は眠くなってきた
君と一緒にいるという事は、
やはりこういう事だったんだろう
でも良いんだ、君に出逢えて
初めて誰かを愛せたんだ
これが僕のハッピーエンド
なんて、儚い世界なんだろう。
目の前で、「僕」と雪の妖精の恋物語が繰り広げられている。
現実に帰りたくないな。
ずっと転生していたいな。
そんなことを思うくらい、最高の曲だった。
私の転生は、もとの世界に戻ることができる特異なものだった。
なぜなら。
「ちょっと! 課題はちゃんとやったの!?」
母親の声は、世界最強だったからだ。
転生しながら勉強できるようになるまでは、まだまだかかりそうだ。
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