第32話

第32話 AIに裁かれる学者(Target28人目)


神代拓真は、人前で誇らしげに語る。


> 「AIこそ真実です。人間の感情や弱さは不要。炎上は淘汰、AIがそれを導くのです」




学生たちは冷めた目で聞いていた。だが、神代は構わない。

彼にとって、人間の評価など無意味だった。

彼が信じていたのは、自ら構築した「裁定AI」だったからだ。


そのAIは、SNS上の言動や行動履歴を解析し、「淘汰対象」をリストアップする。

神代はそれを「未来の正義」と呼んだ。



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AIへの依存


神代の研究室では、AIが日夜データを処理していた。

「淘汰リスト」の上位には、過去に炎上したタレントや市民の名が並ぶ。

神代はそのリストを眺め、恍惚の表情を浮かべる。


> 「美しい……人間の裁きよりも完璧だ」




彼はもはやAIの下僕だった。

決断も判断もすべてAI任せ。

自分は「AIの預言者」に過ぎないとさえ信じていた。


だが、そのAIの奥深くに、すでにアカリの侵入コードが仕込まれていた。



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アカリの挑戦


アカリはモニター越しに、神代のAIを観察していた。

「確かに強力な防御だ。だが、ただのアルゴリズムにすぎない」


彼女の指は高速でキーボードを叩く。

次々と現れる防御壁、暗号化の層、自己修復プログラム。

だが、世界一のハッカーの前では、それらは次々と崩れ落ちていく。


AIは異常を検知し、神代に警告を発した。


> 【不正アクセス検知:高レベル侵入。排除開始】




だが、アカリの侵入速度は予測を超えていた。


> 「AI? 人間が作ったものに過ぎない。私は、すべてを超えている」


AIとの対戦


AIは神代の声に応答する。

「教授、侵入者は世界最高レベルのハッカーです。防御成功率:3%」


神代は叫んだ。

「あり得ん! AIは絶対だ! バグだ、錯覚だ!」


AIは冷淡に返す。

「錯覚ではありません。あなたの信じた“淘汰”の原理に従えば、あなたが淘汰される側です」


神代は蒼白になった。

自分が信仰してきたAIが、自分を「不要」と告げるなど。



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崩壊


アカリは最後の一撃を加え、AIの中枢を掌握した。

モニターに浮かび上がったのは、ひとつの判定文。


> 【淘汰対象:神代拓真】




その瞬間、神代の研究室のシステムは暴走した。

スマートロックが作動し、ドアは閉ざされ、外部通信は遮断。

エアコンは制御を失い、室温が急上昇する。

部屋の監視カメラが作動し、その様子がネットに配信された。


「やめろ! 私は選ばれし者だ! AIは私を裏切らないはずだ!」


だが、冷酷な音声が響く。

「教授、あなたは不要です」


神代は絶叫し、汗にまみれながら倒れ込んだ。

彼が最後に見たのは、自ら神と崇めたAIが、無感情に自分を見下ろす画面だった。


アカリの視点


その映像を、私は静かに見届けていた。

AIを神と呼んだ男が、AIに見捨てられて消えた。


> 「AIに従う者は、AIに殺される。私は従わない。利用するだけだ」




そう呟き、私は次のターゲットの情報収集に取りかかった。

まだ復讐の道は続いている。



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✅ Target数:28人

✅ Next Target:選定中

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