ひんやりおばけアイス
霜月あかり
ひんやりおばけアイス
ゆうたは、夏休みにまいにちサッカーのれんしゅう。
汗びっしょりで、足もガクガクになるけれど、がんばってボールをおいかけていました。
そんなある夜――。
町のおまつりに行くと、にぎやかな人ごみのすみっこに、小さな屋台を見つけました。
ちょうちんには、すみれ色の文字でこうかかれています。
「ひんやり おばけアイス」
のぞいてみると、中にはしわしわ顔のおじいさん。
にっこり笑って、声をかけました。
「ぼうや、ひとつどうかね? ひんやりして、とくべつにおいしいよ」
ゆうたはドキドキ。
でも気づけば、「ください!」と声が出ていました。
おじいさんがさし出したのは、まっ白なアイス。
カップから、もわもわと冷たいけむりが立ちのぼります。
――ペロリ。
「ひゃっ! つめたっ!」
とたんに、体じゅうがスーッとひんやり。
手を見れば、なんとすけて向こうの光が見えます。
足はふわふわ浮いたみたいで、まわりの人に声をかけても、だれも気づきません。
「ぼ、ぼく……おばけになっちゃった!?」
あわてていると、白いもやの中から声がしました。
「だいじょうぶだよ」
そこにあらわれたのは、まっ白でまるい体の、アイスのおばけ。
にこにこと笑っています。
「これはね、夏にがんばってる子にだけ食べられる、特別なアイスなんだ。
きみ、サッカーをがんばっているだろう? だから出会えたんだよ」
ゆうたは目をまるくしました。
「つかれた心を冷やして、元気をくれるんだ。安心して食べてごらん」
すすめられて、もうひとくち。
すると、不思議。
胸の中のもやもやや、体のつかれが、スーッととかれていくようでした。
気づけば体はちゃんと元どおり。
「あったかいのに、ひんやり……へんなの」
ゆうたは思わず笑いました。
気がつけば、おじいさんの屋台も、アイスのおばけもどこにもなく、
ただ夜空の星だけがきらきら光っていました。
「でも――ほんとにおいしかったなぁ」
アイスの冷たさと、心のあったかさを胸にのこして、
ゆうたは屋台の光の中へかけもどっていきました。
ひんやりおばけアイス 霜月あかり @shimozuki_akari1121
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます