0時編 真実
0時 微笑みの意味
『生まれ変わっても探しに行く。お前を守るよ』
しかしガラスの靴は、もう片方あったのです。
*
研究所により、漣と神宮、二人の能力の解析は完了した。その結果は残酷で、ただひとつの真実を示していた。
漣は記憶改竄の力を、本当に持たなかった。
神宮は読心術を、能力そのものとして欠いていた。
心がないから使えなかったのではない。最初から欠落していたのだ。
そして、漣の処刑の瞬間。観測された揺らぎは時間の歪みだった。
「過去へ還ろうとした痕跡です」
漣は、処刑の瞬間に悪魔と化し、過去へ跳躍した。
そして、記憶を欠いたその悪魔は――
神宮そのものとなった。
「……違う」
神宮の唇が震えた。
自分が漣を求めたのは、欠けた能力を埋めようとする、本能だと?
その理論には一つ問題があった。否定したい理由があった。
漣は最期に言った。
「お前に愛されていたから満足だ」と。
……だが、本当に、自分は愛せていたのか?
彼の願いを、叶えられていたのか?
理想に、唯一の嘘をつかせてしまったのか?
愛か本能か、どちらでもいいはずだった。
けれどもし君に欠落が残っていたなら、君が満たされることなく消えたのだとしたら、僕はそれを否定したい。
その時、研究所の奥に、神宮は一人の幼い子供が見た。
「あれは誰?」
「最後の模倣体で、あの人の優しさを再現しています。名前はまだ付いていません」
「優しさ……彼には読心術はないの?」
「えぇ、ありません」
神宮は空を仰いだ。
天井を超えて、夜明けの空に、白鳥が一羽、静かに旋回するのが見えた。
最後は白鳥から、ガラスの靴を受け取るんだったな。遥かに、どこまでも翔ぶ鳥のように。
「有馬、遥翔」
彼が最後のガラスの靴だ。
彼と出会い、信頼を築き、そしてその全てを破壊した時。僕の中に、揺れ動くものがあるのなら。漣以外に、何かを感じられるのなら。
僕の愛は本物だったと証明できる。
「……漣くん。やりたいことが見つかったよ」
自然が真空を嫌うように――僕も、君の心の空白を埋めたかった。
証明するんだ。
君への愛を。
真空は、世界を愛せると
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