第5章 『黒百合の罪 ー 花の巡り』
「行くぞ。ルナ」
「うん」
出来なかった分の親孝行を、
もっとしたかった。
けれど、アタシは行かなきゃならない。
お母さんがいた塔に背中を向け、
前を見ようとしたその時
――柔らかい風に背中をトンっと押された。
「お母さん…?」
振り向くと、黒百合が優しく揺れていた。
「…ありがとう。頑張るね」
足を前に向け、アタシは先に進む。
この決意は揺れない――絶対に。
――――――
「それで、『黒百合の城』ってどこにあるの?」
「地図を見ると、ここから南西の辺りだな」
ノクタが地図を開いて
場所を教えてくれたけど、
ちんぷんかんぷん。
そもそも、現在地がわからない…
そんなのお構いなしにノクタは続ける。
「その途中に、
ちょっとした町があるらしいから
そこで少し休んでくぞ」
「うーん…まあ、ノクタに任せた!」
ノクタのため息が、
ちょっとだけアタシの心を軽くした。
「オレから離れて迷子になるなよ?」
「子供扱いですかー?」
ノクタと合わない歩幅。
体力だけは自信あるけど……
「さ、さすがに疲れた!」
「あと少しだから頑張れよ…」
「だって、ノクタ早いんだもん…!」
疲れて座り込むと、遠くから甘い香りがした。
「クッキー?それともケーキ屋さんかな?」
その香りがだんだん近づいてくる。
「……!この匂いは!?」
「あ!ルナとノクタ!!」
「ミミ!!テミも!!どうしてここに?」
「実は、ずっとノクタと連絡をとってまして…」
なんか、少しテミの表情が暗い気がした。
「それより、ふたりともごめん…!!」
「え?ミミ、どうしたのいきなり…」
ミミの真っ赤な瞳が、涙で溺れていた。
ふたりの道のりで、一体なにがあったの――?
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