第4章 『カモミールの想い』


「…ほんとに妖精と一緒に行っちまうんだな、

エルフって」



ノクタが屋根よりもっと奥を見て呟く。



「…エルフなら本当は長生きなのになんでっ」



悔しい。


お母さんは、

アタシを『愛』してくれていたのに――

アタシは、それを知らずにずっと憎んでいた。



あの時、忘れたりなんてしなければ、

こうはならなかったかもしれないのに…



涙が止まらないアタシを、

ノクタはそっと抱き締めてくれた。



何度、ノクタに救われたか…


そして、今度もまたノクタの温かさに救われる。



「…ごめん、お母さん。ごめんね、ノクタっ」


「…エルの言葉もう忘れたのか?」



その言葉で、ハッとする。



「ありがとう…っ、お母さんありがとう…」



アタシを産んでくれて。

そして、最期に教えてくれてありがとう。



「ノクタもありがとう…っ」



そんな気持ちと同時に、

こんな目に合わせてくれた父への憎悪が渦巻く。



自分の国を作るために、

アタシとお母さんを犠牲にした?


そして、アタシは儀式の鍵?



そんな利用してまで……

もし本当なら、絶対に許さない。



「……オレ、理由も知らず適当に『ルナ』って」


「ノクタは関係ない!

アタシのおと…とにかく、

あいつが勝手に言ってるだけだから!」



ただ、だからと言って

これからどうするべきなのか。



「…ねぇ、ノクタ。

アタシ、真実を聞きに行こうと思う」



そして、その答え次第ではあいつを――



「また、着いてきてくれる…?」


「…ああ」


 


――カモミールと黒百合の香りが、

アタシたちの決意とともに羽ばたいていく。


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