第4章 『カモミールの想い ー 黒百合との飛翔』
その後も、何度か夜中に抜け出し
あのお花畑に行っていた――彼に会うために。
彼もまた、私のことを待っていてくれてた。
他愛のない話。
けれど、それが私は楽しかった。
そして、いつしか彼に惹かれるようになった。
そんなある夜、彼から一本の黒百合を渡された。
「これは…?」
「…あなたが好きです」
一面に咲く、カモミールに負けないくらい
黒百合から香りが漂う。
ああ、あなたの匂いはこの花だったのね――
「お願いします」
けれど、私の父がそれを許さなかった。
「そんな訳の分からない男と
付き合おうなんて言語道断!!
それに、抜け出しておっただと!?」
「でも、彼は本当にいい人で…!」
「ふざけるな!!
純血…それも王族でもない男となど
許すわけがないだろ!」
そして、私はそのまま
お城の最上階へ幽閉された。
食事は届いたけれど口にする気になれなかった。
胸の奥がむかむかし、
少しでも動くと倒れそうになる。
それでも、なんとか耐えた。
どんなに辛くても、
彼からもらった黒百合だけは握りしめていた。
――きっと会えると信じていたから。
その思いが届いたのか、
満月の晩あの匂いがふわりと漂ってきた。
あの日と同じように、
月明かりに照らされるピンクの髪が綺麗だった。
「迎えに来ましたよ。お嬢さん」
私は、彼の手を伸ばし抱き着いた。
「私を連れて行ってください」
「喜んで」
そして、私はこの村を捨てた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます