第4章 『カモミールの想い ー 黒百合との飛翔』


その後も、何度か夜中に抜け出し

あのお花畑に行っていた――彼に会うために。


 

彼もまた、私のことを待っていてくれてた。


他愛のない話。

けれど、それが私は楽しかった。



そして、いつしか彼に惹かれるようになった。




そんなある夜、彼から一本の黒百合を渡された。



「これは…?」


「…あなたが好きです」



一面に咲く、カモミールに負けないくらい

黒百合から香りが漂う。



ああ、あなたの匂いはこの花だったのね――


 

「お願いします」




けれど、私の父がそれを許さなかった。



「そんな訳の分からない男と

付き合おうなんて言語道断!!

それに、抜け出しておっただと!?」


「でも、彼は本当にいい人で…!」


「ふざけるな!!

純血…それも王族でもない男となど

許すわけがないだろ!」



そして、私はそのまま

お城の最上階へ幽閉された。



食事は届いたけれど口にする気になれなかった。


胸の奥がむかむかし、

少しでも動くと倒れそうになる。


それでも、なんとか耐えた。



どんなに辛くても、

彼からもらった黒百合だけは握りしめていた。



――きっと会えると信じていたから。



その思いが届いたのか、

満月の晩あの匂いがふわりと漂ってきた。


あの日と同じように、

月明かりに照らされるピンクの髪が綺麗だった。



「迎えに来ましたよ。お嬢さん」



私は、彼の手を伸ばし抱き着いた。



「私を連れて行ってください」


「喜んで」




そして、私はこの村を捨てた――

 

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