第3章 『真実の罪 ー きゅるきゅるびぃむ』
温泉でほかほかになった体を休ませながら、
アタシたちは馬車に乗り
バルグリンドを後にした。
また必ず、
おじいちゃんとエルに会うことを誓って――
「テミ〜、ミミお腹空いたー」
「先程、あんなに食べたのに?」
相変わらず、ミミは食いしん坊だな。
その後、途中馬車を乗り換えながら
ミミのお腹も満たした。
疲れてうとうとしてきた頃、
馬車が森の中で止まった。
心地よい風が髪を揺らす。
そこにはエルフの村
…アタシの親の故郷『グラヴィムス』があった。
「すごいね…塀で囲まれてる」
小さなミミがうんと上を見上げる。
森に溶け込むように広がる村の向こう、
お城らしき先っぽがちらりと見えた。
「あれ、お城かな……?」
「おい。あっちに門番がいるから行くぞ」
近づくと、
甲冑で顔まで隠した門番が無言で立っていた。
ノクタよりも大きくて、
手に持ってる槍が刺すように光る。
「なんだお前らは」
声が低く、少し怖い感じがした。
「実はこの村に用がありまして…」
「…ダメだ。この村はエルフ族以外は入れぬ」
なら、アタシだけでも…って前に出たら、
「お前はエルフではないだろう?
耳はエルフでもなんだその髪色は?
それに魔力も違う…まさか『混血』?」
秒でバレるじゃん。
「えー、そこをなんとかー」
「ダメなもんはダメだ!帰れ!」
『混血』を蔑むような目。
久々に感じた、嫌な目。
結局、入れずどうしたもんかと思ってたら
ミミの耳がピョコっと跳ねた。
「いいこと思いついた!
ルナはノクタと一緒にあっちにいて!」
――――――
「なんだ?また来たのか」
「実はミミね、
ヴェルナラってとこのお姫様なんだ」
遠くから甘い香りが鼻に触れる。
ノクタもそれに気づいたのか手で鼻を覆う。
「私はその『監視役』として護衛しております」
「だから、どう…した…」
門番の動きが徐々に鈍くなり、
目の奥がうっとりし始めたのがわかった。
「このキャンディー、
『ろりろり・ちゅちゅちゅっ』をあげるから
王様に会わせて欲しいな!」
ミミの独自の魔法――糖質変異性物質拡散呪式、
通称『ロリポップメイク』の技のひとつ。
甘い匂いで相手を魅了する魔法らしい。
「さっきルナのことは見破れたけど、
ミミの魔法にはわからなかったみたいだね」
「霊力も使っているので、
わかりにくいのかもしれませんね。
……それでお願いなんですけど」
「はい…なんなりと……」
テミの美しさとミミの可愛さに、
心を奪われているようだった。
「やばい…アタシもかかりそう」
「バカ!お前も鼻塞げ!」
ミミの魔法の匂いが好きで忘れてた。
「王に伝えて欲しいんです。
ルナ、彼女が王族の血筋
――グランヴィレーヌを使えることを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます