第3章 『真実の罪 ー 花の門』
静寂な城の中で、足音が忙しなく響き渡る。
「今、外で王族
――グランヴィレーヌを
使えるという者が現れまして…」
外を眺めていた王が険しい顔で振り返る。
一瞬、緊張が走る。
「そ、その者が
陛下にお会いしたいと申しておりまして…」
地響きが聞こえてきそうな怒りの表情。
「儂に子孫などおらん!!!」
そう。
この村の王族はこの老夫婦だけのはずだった。
「今すぐ帰らせろ!!」
『グランヴィレーヌ』。
それはこの村の王族のみが使える魔法。
一般人が使いたくても使えない魔法。
「ほ、本当に宜しいのでしょ…」
「いいから!早くしろ!!」
死を覚悟する家来。
だが、その声を聞きつけた王妃が現れる。
「王族を名乗る子が来たみたいですね」
「だから、儂には子孫など…!」
「試しに会ってみては如何ですか?
これまでそんな子が
現れたこともないことですし」
――――――
ミミの魔法にかかった門番の代わりに、
綺麗な髪色の男の人が出てきた。
かと思えば、
アタシを舐めるように見て睨んできた。
ちょっと腹立つ。
けど、
エルフの『純血』からしたら嫌なのもわかる。
でもだからって、
そんな舐め回すように見なくても良くない!?
「……えっち」
「は!?
今すぐこの場で
殺してやってもいいんだぞ!!」
「それより、先程の話なのですが…」
「許可は下りた。
ただ、この村は異種族を入れぬ掟だ」
そう言って男はフード付きの服を渡してきた。
「これで耳から羽根まで全て隠せ」
男が言うには、
これを着ると魔力も隠せるらしい。
「それを着て下を向いたまま歩け。
それが条件だ」
門が開くと、みんな綺麗で
髪色もアタシと違い淡くキラキラしてた。
「お前!前を向くな!」
「はーい…」
ああ…
改めてアタシは、
『混血』なんだと思い知らされた。
髪色だけじゃなく、体型もなにもかもが違った。
『純血』なら、
もしかしたらこの村で育ち、
王族になれていたかもしれないのに…
「……悔しいな」
村はそんな広くはなく、お城までは直ぐ着いた。
「中に入るまでフードは絶対外すなよ」
フードの下から、城壁がちらりと見える。
アタシはこれから、
自分の血縁と会うのかと思うと体に力が入った。
正直怖い。
親がアタシを追い出した理由を聞くのが…
そんな心の揺らぎを感じとったのか、
ノクタが手を伸ばしてきた。
「ん。」
「…もう。相変わらず不器用だな」
でも、そんな手に救われている。
孤児院の頃から変わらず。
大きな門が開き前へ進む。
大丈夫。
何があっても、アタシには仲間がいる――
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