第3章 『真実の罪 ー 師の花』
「そういえばこの先、温泉があるらしいよ!」
「ミミは好きだねー。
毎回、討伐の後温泉あると入ってたもんね」
「だって、気持ちいいじゃん」
「そうですね…
ただ、その前に
依頼をひとつこなしてからにしましょ」
アタシたちは温泉で有名なドワーフの町、
バルグリンドに着いた。
刀鍛冶でも有名らしい。
「そういえば、ノクタ。
あの『師匠』も確かドワーフだったよね?」
「……ああ」
「おじいさん元気にしてる?」
夏も近いというのに、冷たい風が肌を撫でた。
「町長に挨拶が終わったら
ルナ、お前に案内したいとこがある」
「案内……?」
アタシたちは手短に挨拶を済ませ、
それぞれ自由行動を始めた。
「ノクタ、案内したいとこって?」
ノクタに導かれ、
森の奥の綺麗なお花畑で足が止まった。
そんな中にぽつんとお墓があることに気づいた。
「これって…?」
「…オレの師匠。エイドラスの墓だ」
一瞬理解ができなかった。
――おじいちゃんのお墓?
――なんで?
――亡くなった?
胸が苦しい。息もうまくできない。
「…もしかして、
アタシが記憶なくしている間に……?」
「……そうだ」
アタシは膝から崩れ落ちた。
「ごめん…おじいちゃん…ごめん……っ」
お礼も言えず、顔も出せず……
そして、
すべてをノクタひとりに背負わせてしまった。
「アタシ…なんて酷いことを…
…本当にごめんなさい…」
「ルナが思い出した時にって、
ジジイから遺言もらってる」
『ルナちゃん、元気にしておるか?
ワシはもう長くは生きられぬ。
願うことなら最期にきみの顔も見たかった。
じゃが、ルナちゃんは今
必死に前を向いて進もうとしておる。
ワシはそんなルナちゃんの邪魔をしたくない。
ルナちゃんは強く生きられると信じておる。
きみはワシにとっても大事な宝じゃ。
ルナちゃんに出会えて楽しかった
――ありがとう』
ノクタが見せてくれた
おじいちゃんの最期は、光と共に消えた。
「ノクタが一時期いなかったのって…」
「ジジイを看取ってた」
「ごめん。アタシ気づかなくて…
ひとりで背負わせて」
「…仕方ねぇよ。記憶なくしてたし。
それにジジイも知ってて、
こうやってお前に遺言を遺した」
悔しさや悲しみ、自分への憎しみ
――色んな気持ちが混ざって胸に棘が刺さる。
「この花さ、覚えてるか?
ルナが初めて、
ジジイにプレゼントした花と一緒なんだぜ」
――――――
「目が見えなくなってきておるのに、
ルナちゃんは花を摘んでくれた……
慣れない家事もしながら、ワシに気を遣って
……その優しさが、
どれほど嬉しかったか……ゴホッ。
ああ、なんでこんないい子が、
あんな惨いことを……」
「もういい、ジジイ。喋るな……!」
「なあ…ノクタ…
…ルナちゃんを守るんじゃよ……
なにがあっても絶対にじゃ…
ワシとの約束だぞ……」
「ああ。約束する……絶対に…」
――――――
「オレさ、
絶対墓の周りを
この花で埋めつくしてやろうって思った。
ルナが思い出すように
…とジジイが笑えるようにって」
花の香りが風と共に上に舞う。
「今年やっと全部咲いたんだよな。
良かったなジジイ。
そして、おかえり…ルナ」
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