第3章 『真実の罪 ー 夜の揺らぎ』


「えぇ!?アタシもお姫様なの!?」


 

驚きのあまり立ち上がった。


 

「あくまでも仮定ですが……」

 

「それに、お前は『混血』だろ?

普通、王族ってのは

ミミみたいな『純血』がなるもんだ」

 

「そっか…」

 

「でも、

その村に行ってみる価値はあるって話だ」


 

そう言ってノクタは机に大きな地図を広げた。


 

「この地図は今オレらがいる地界全土のやつだ」

 

「あ!ここ!ミミの生まれた国!」

 

「へー」

 

「へーってお前」


 

めっちゃミミ、引いてる…


 

「結ノ郷…こっちで言うヴェルナラだよ」

 

「それで、アタシたちがいる国は?」

 

「お前まじか…」


 

ノクタどころかテミもミミもため息ついてる…!


 

「ルナはなにを勉強してたの…?」

 

「えっと…ノクタは知ってるかな?」

 

「……嫌なくらいな」

 

「……いま私達がいる国はここ。

マグナエルドランです。」


 

その国は地図の大半を埋めてた。


 

「めっちゃでか…!」


「そして、

グランヴィレーヌを使うエルフ族がいるのが、

ここ『グラヴィムス』」


 

そこが、わたしの親が産まれた場所。

胸が高鳴るのがわかった。


 

「それで、いつから行く?」


「明日だ」


 

ノクタの顔をアタシとミミが同時に見る。


 

「「明日!?」」


「依頼も受けながら行く予定ですので、

荷物は最小限でお願いしますね」


「あと、手持ちは少なめにして

残りはエアリウムに納めろよな」



(※エアリウム=

魔力に応じて収納量が増える異空間ボックス)


 


――――――



 

「とは言っても、何が必要なの?」


 

ミミが言うには、

旅行に行くような感じって言ってたけど、

そもそも借金があって旅行なんてしたことない。


 

「もう!わからない!!」


 

服も靴も…一体、何が必要なの!?


 

「エアリウムに入らないよ!!

こういう時はミミに電話しよ……」



 

「で、呼ばれて来たけどなにこの荷物?」


「汚れたとき用とか色々…」


「いや、洗濯とかすればいいから!

靴もダメになったら買えばいいし。

そもそも旅なんだからスニーカー一択!」


「でも、ミミ…そのリュックお菓子でしょ?」


「ぎくっ…みんなで食べようと思って」


 

可愛いうさ耳を垂らしながら言うミミに、

準備が終わって家に来たノクタが怒る。


 

「んなの食うのお前とルナぐらいだろ。

せめて半分にしろ」


「そういえば、テミは?」


「ギルドに依頼書取りに行ってる。

それよりルナは早く準備しろ」


「あれ?

でも、なんでミミはリュック背負ってるの?

旅は明日じゃ…」


「言ってなかったっけ?

今日はみんなでルナの家に泊まるって」


「あ、悪ぃ。言うの忘れてたわ」


 

相変わらずノクタは…

私が見ると、すぐ目逸らした。


 


――――――


 


「ついに旅行の日だ!!」



朝日を浴びてテンションMAXのアタシ。

横の二人はだるそう。



「旅行じゃねぇだろ」

 

「それよりルナの家、狭すぎ!」

 

「それに関してはまじでそう!

誰、ここで泊まろうって言ったの!?」

 

「ふふっ。さて、誰でしょうね?」

 



――――――


 


――旅に出る数時間前。




「なんかノクタ、嬉しそうですね」


「そうか?」


 

ルナの記憶が戻ったことで、

いつもと違う雰囲気が漂う。


けれど、どこか寂しげな影もある。


 

「……あいつ、

自分のことを知ったらどうなるかな」


 

私には、ノクタのその気持ちが痛いほどわかる。


 

「これからも

オレたちと共に過ごしてくれるかな」


 

ああ、それだけ彼女は

あの子を『愛してる』のね…


けど、そればかりは――


 

「それは、ルナ本人にしかわかりませんよ…」


 

冷たいかもしれない。

けどそれは事実で、

期待をして苦しい思いをさせるのもいやだった。


 

「ノクタはその

…ルナのことが『好き』なんですよね?」


「さあな?

ただ、オレはあいつのためにやれることやる」


「そうですか。」


 

少し空気が揺れ、羽根でそれを感じる。


ノクタの不器用さに、私の心も泣きそうになる。


 

「…でしたら、

今夜みんなでルナの家に泊まりませんか?」


「は?あんな狭い家で!?」


「お布団はありますし、

出来なくはないと思います。


それに、あのシングルベッドで

ルナと一緒に寝たんですよね?」


 

面白いくらいノクタは動揺していた。


初々しいですね…


 

「もし今後、

ルナが戻って来ないかもってなったら、

あの家に行けるのは

今日で最後になるかもしれませんよ。


それなら泊まる価値はあると思います」


 


――――――



 

「よし。お前ら準備はいいか?」


「鍵かけて…と。おっけぃ!準備バッチリ!」


「いざ、旅に向けて」


「レッツゴー!!」

 

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