ホワイトハウスの穴 ダークサイド・オブ・ザ・ムーン
にのい・しち
第1話 ファック・ミー・イフ・ユー・キャン?
私は大統領補佐官のトッド・ステアーズ。
元アメリカ海軍出身の私は、敬愛する大統領の側で日々、職務に忙殺されている。
海軍士官学校を卒業した後にアメリカ海軍へ入隊。
幾度と海外派兵を経験し実戦で戦術を学んだ。
28歳で海軍特殊部隊に配属され、祖国へ多大な貢献を果たし、参謀本部の司令官に任命される。
その後、海外での功績が称えられると、国内の治安計画の立案を担当し、大統領の警護計画に関わることになる。
今、私は深夜に大統領の緊急要請を受け、ホワイトハウスの長い廊下を早足で歩き、職務室を目指している。
大統領は私にとって敬愛すべき偉大なお方。
現大統領ことレジー・タピア。
彼と私は同じ州の出身。
まぎれもない同郷というわけだ。
レジーは意外な経歴の持ち主だ。
元プロボクサーで世界タイトルを制覇したチャンピオン。
彼が現役だった頃、私はまだ幼い少年だった。
父に連れられボクシングの試合を見に行き、レジーのファイトスタイルに憧れた。
彼はどんな相手でも真っ向から挑み、勝利を手にし、故郷のヒーローとなった。
ボクサーを引退した彼はアメリカ国民の熱烈な指示を受けて政界に進出。
地元の議員から州知事になり下院議員から上院議員。
そしてついに大統領まで上りつめた。
少年時代に憧れたヒーローが大統領に転身。
尊敬を越えて敬愛を抱いた。
そんな私は大統領補佐官に任命されてから2年が経った。
大統領補佐官の任期は短い。
2年でその職務を果たし、次のキャリアへ向けて飛躍せねらばならない。
あぁ……尊敬する大統領のお側にいられるのも、そう長くない。
なのに、ホワイトハウスのスキャンダルを食いぶちにしているパパラッチ達は、私が独身貴族なのをいいことに「ゲイ」だの「フェミニスト」などと好き勝手、記事に書いて弄んでいる。
レジー・タピア大統領が離婚歴のある独身ということもあり、私と大統領の仲を「秘密の花園」と言い表した。
全く馬鹿げている!
知性無き者達の下劣な話題など聞くに耐えんものだ。
心から軽蔑する。
私は敬愛する大統領の側で尽力し、この誇るべきアメリカをより良い未来へ導きたい。
その一心で働いてきたのだ。
私がゲイで大統領と秘め事だと?
そんなこと、断じてありえん。
断じてだ――――――――。
私は大統領の職務室を開けた。
「だ、大統領!?」
大統領はベルトを外しスラックスを下ろして、丸っこい生尻を私へ向けてさらしていた。
なんとあられもない姿をさらしているのだ……。
大統領は懇願する。
「やぁ、補佐官。頼みがあるのだが……」
「は、はい! 何でしょうか?」
「入れてくれないか?」
い、今、なんと言ったんだ?
いや、聞き間違いだ。
「こんなこと、信頼できる君にしか頼めない。入れて欲しいんだ」
ハッキリと『入れて欲しい』と言った。
聞き間違いではない。
いや、
大統領は職務室のデスクに両手をついて、こちらへ背を向けながらズボンを下ろし、尻を突き出している。
どこからどう見てもこれは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます