學園に入学した理由
日本国の西側にある陸地、玖州地方の対馬海峡付近の領土はゼノスティールが本土上陸を果たした末に領地を奪われた。
その為、領地奪還の為に発足されたのが軍事基地戦艦「戦機艦學園」であり、組織の軍人は徴兵された満十六歳の少年少女が配備されている。
理由は至極単純、ギガントマキナを操縦するキルギアは、高齢になるにつれて人数が減っている為であり、これは五十年と言う長い年月、ゼノスティールとの戦闘、第一次機械戦争によって多くの兵士が死亡した為である。
これにより、日本政府は徴兵を開始し、十六歳になる齢の子供達を集めてゼノスティールからの侵攻を止める為の防衛組織を作り上げたのだ。
本来ならば、まだ未来ある子供たちよりも、齢を重ねた熟練の大人たちを派遣するのが一番なのだろうが、日本国は愚かにも、第二次世界大戦時の二の舞を繰り広げていた。
それとは別に、数多くの同盟国を持つ日本国は、優秀な人材を海外へ派遣する事で恩義を売り、ゼノスティールとの抗争が終わった後の政策を考えていたのだ。
故に、現在の日本国では、内地に日本政府を守る為の優秀な人材を置き、その他のキルギアは海外へ派遣されている、故に、日本国を守るキルギアが、少年少女しか居なかった。
(全国から志願組と抽選組の二つに分けられていて、一年辺り約三百名の生徒が入学される、これは戦機艦學園の搭乗する事の出来る人数が限られている為、か)
ギン・ガラクは深紅のコートの中に忍ばせた携帯電話が振動した為にポケットから取り出すと、それを耳に当てる。
本来ならば、殆どの若者はコードレスコネクターの副次品として、脳内でインターネットなど使用する事が出来るのだが、ギン・ガラクは旧世代の代物であるAタイプコネクターとして改造されている為、そういった機能は取り付けられていない。
なので、ゼノスティールの機骸から造られた軍事用の携帯電話を使用しており、それを使って通話などを行っていた。
携帯電話を通話ボタンを押すと共に、首筋に挿入されたチューナープラグから、耳元に囁く様に声が聞こえて来る。
チューナープラグによって、携帯電話と接続をしたギン・ガラクは、Bluetoothの様に念話をする事が可能であった。
『こちら、ギン・ガラク』
『ギンくん、聞こえる?』
声の主は、シナノ・シリウスだった。
四年と言う歳月を以てしても、初めて出会った時と何ら変わらない彼女の風貌を、ギン・ガラクは脳裏で思い出していた。
『ああ、聞こえるよ』
『良かった』
『話か?仕事の内容か?』
『ただ、ギンくんの声が聞きたかっただけって言ったら、怒る?』
『あんたが目の前にいたら、そんな余裕を出させない程に滅茶苦茶にしてた』
『ふふ、怖いね……大丈夫、お仕事の内容だから』
『はいよ、で?俺は何をすれば良い?』
『戦機艦學園に派遣したのは、お仕事の内容は三つ、その内の一つを再確認して欲しかったから電話したの』
『ああ……それで?』
『七大同盟国の内の一つ、アヴァロン国から亡命したお姫様の護衛』
アヴァロン国。
旧・北アイルランド連合王国の呼び名である。
ゼノスティールが宇宙から侵略した事により、数多くの国が滅ぼされたのだが、アヴァロン国も数年前にゼノスティールの侵略によって領土を奪われた。
旧制度が残りつつある騎士の国は、数多くのアヴァロン人の王族としての血を遺す為に数多くの国へ亡命させたのだ。
その内の一人である、アヴァロン国の姫君が、日本国との友好を示す為、難民の受け入れを緩和して貰う為に、王族の血を持つ女性が戦機艦學園へ入学した。
アヴァロン国は略奪される前は、有能なGM技師を輩出しており、当時最先端であったGMの設計図を用紙で遺しており、それが今も尚、アヴァロン国に残されている。
そして日本国は、アヴァロン国をゼノスティールの魔の手から脱却した時、技術の恩恵を賜ろうとして、恩義を売る行動に出た。
万が一にでも、王族に怪我をさせてはならない、と言う事。
死んでしまえば、例えアヴァロン国が復興しても、アヴァロン人はそれを出して技術の共有を拒否する可能性がある。
故に、戦機艦學園には、複数の政府直属の生徒を配備し、アヴァロン国の姫君の護衛をする様にしていたのだ。
そして、その任務に白矢が立ったのが、同じ年齢であり、戦機艦學園に入学する権利を持つギン・ガラクである。
『アヴァロン国の騎士王の第三王女、ユートゥピア・ルヴァの護衛が君の仕事だけど……まあ、他にも護衛は要るし、別に執着しなくても良いよ』
『ああ』
『出来れば、逢わない方が良いかもね、君は格好良いし、惚れられちゃったら、外交問題になっちゃうし、逢わない方が良いよ』
『……なんか、嫉妬してるのか?』
『してるよ、って言ったら、今すぐ私の元に戻ってくれる?』
『……シナノ、もしかして、再確認じゃなくて俺と会話したかったのか?』
『重いでしょ?』
そう言っているが口調は軽かった。
他の人間からは、血の繋がらない仲の良い姉弟の様に思われているが、その実、蓋を開けてみればシナノ・シリウスはギン・ガラクに執着していた。
そんな彼女の重い感情も、ギン・ガラクにしか見せないものであったが。
死亡率99%の戦場を終戦に導いた少年兵、次なる舞台はロボットを操る生徒を育成する学園で無双する 三流木青二斎無一門 @itisyou
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