第1章 王位継承の資格 朝のバス停 2
スクールバスの中はアーサーとリンネに集中して、好奇心の目を向けられていた。リンネは全員の視線が痛いと思う。出来るなら目立ちたくなかったのだ。
アーサーの涼しく気品ある碧い目は真剣だった。爽やかで美しい顔をしている。髪だって金髪で緩やかなウェーブがイケメンに相応しい。正面から見たら思っていた以上にイケメンだとリンネは認めるのだった。
アーサーの目に映るリンネは、プラチナブロンドの髪にグレーの瞳、誰が見ても美人だった。北欧の何処かの国の女王のようだ。探していた愛しい人、この人に間違いないと思うのだが、確信が持てない。
もっと近づいて彼女のことを知りたいと思うのだ。2人の空間は時間が止まったようだった。だが、その空間をぶち壊したのはエマだった。
「やっぱりね。リンネだったら私は諦めがつくわ。さあ、リンネ返事は?」
「え、あ、あの、どうして私なの?」
「好きだから」
「え、待って待って。私のこと何も知らないでしょ。それなのにどうして好きになるの?」
「恋するのに理由がある?ただ好きだと言うだけじゃ駄目なのか」
「衝動的、過ぎない」
「まあまあ、リンネ。それ固過ぎ。もっと楽に考えよ」
「エマは、お気楽過ぎよ」
「そんなこと言ってたら恋人できないよ。隙を見せなさい。隙を」
「もうエマたっら」
「今日の授業が終わったら返事を待っている」
アーサーが笑顔で、そう言うとリンネはドッキとした。これこそイケメンの破壊力だ。思わずハイと言いたくなる。リンネは、もじもじして煮え切らない様子でいた。
いきなりガタっと車体が揺れバスが急発進した。急にスピードが出てブレーキがきかなくなっていた。それと同時に女子達の叫び声が、そこいらじゅうで聞こえた。その声を聞いて運転手は、更に焦って何度もブレーキを踏んだ。
前方を見ると車が少なかったので、蛇行運転してスピートを緩める努力をした。だが、なかなか上手くいかない。そして各自で危険回避ができればと大声を出した。
「皆、頭を抱えて伏せろ!」
学生たちは座ったまま体を低くして頭を両腕で抱えた。
リンネも前の座席に頭をつけて両手を胸に組みお祈りをした。心の中で皆が助かるように神に願った。
すると体が浮いて、天上すれすれに頭が当たり、立ち上がっている姿勢でいた。足は床についていない。体の周りにオーラのように黄色い光を纏っていた。
何が起こっているか分からないが、ただバス止まれと心の中で叫んでいた。
すると不思議なことにバスの速度が落ちてゆっくり止まった。リンネは、ほっとして、ため息のように息を吐いた。
その時、バランスを崩して後ろのリアガラスにリンネの黄色い光が当たると砕けて割れた。リンネが後ろ向きにバスの窓枠から外へ飛び出した。
その様子を一部始終見ていたアーサーが喜びに溢れる笑顔で言う。
「見つけた」
そしてリンネを追いかけ、窓枠に足をかけ蹴って外に出た。操縦不能でふらふらと飛んでいるリンネを捕まえた。空中でお姫様抱っこをしてリンネを優しく見詰めて言う。
「やっと見つけた。私の婚約者殿」
「ええー!」
リンネの驚いた声は響き渡り二人はその場から消えた。
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