第1章 王位継承の資格 婚約者の出現 1
回りの景色は四方八方、明るい色彩だ。まるでサラサラ流れる川のせせらぎのように揺れている。こんな状況は初めての体験で、怖くて目を瞑っていた。
その上、アーサーの首に両腕を回して抱きしめている。その腕は力強く離さない。アーサーはリンネをお姫様抱っこしたまま飛んでいた。それから優しい声で言う。
「大丈夫だ。ここは時空間で、私たちの国はもうすぐだ」
「何言ってるか分からない」
泣きそうな声で言った。アーサーはクスクス笑いながら優しい声で答える。
「説明は王国に着いてからだ。怖がらなくていい、私がついている」
そう聞いてもどうしようもない。リンネは目を瞑って今の状況をやり過ごしていた。何故この状況になったか分からないものだから相当混乱している。
するとストンと何処かに降りたような感覚がした。
「さあ、目を開けて」
アーサーの声を聞くと恐る恐る目を開けた。
「わー!」思わず声が出た。
そこには中世ヨーロッパの城の豪華絢爛な部屋があった。その部屋は全体に水色で中央より少し下に1メートル程の帯みたいに上下ゴールドの細い線があり、中にはピンクの薔薇の花が散りばめた壁紙。奥にはピンクの天蓋付きのベッドがある。中にはピンクのシーツに枕が複数置かれていた。
離れた所に白にゴールドの金具のついたチェストがあり、その横に扉が2つあった。何の部屋だろうと好奇心が湧く。
「ここは貴女の部屋です。貴女は王の孫で、この国の王女です」
「それ、どういう状況?」
「詳しいことは後で王から説明があります」
「質問ですが、貴女は私の婚約者と言いましたが、何故?」
「それは貴女と私が、産まれた時から決められた縁です。貴族である限り結婚は、両家の身分と釣り合うよう考えられたお相手です」
「赤ちゃんの時から決められているの?」
「私達はそうです。何か?」
「そこには愛が無い」
「私は貴女が好きですよ。貴女は私のことを知って、ゆっくり愛を育んでください」
リンネは引いた。言葉がすぐに出てこない。それは状況が把握できていないのだからだ。まず何処へ来たか分かっていないのだから当たり前だ。質問の順番を間違えた気がした。気を取りもどして、もう一度アーサーに質問した。
「ここは何処?この国の名は?」
「ここは魔法の国、フラースリア王国です。貴方が先程までいた地球から時空を超えた所にあります。地球に戻りたければ戻れますが、国王は許さないでしょう」
アーサーが言い終わると扉からノックをする音がした。アーサーが入るように声をかけると扉が開いた。そして黒いドレスと白いエプロンをした侍女が入ってきた。アーサーに向かって言った。
「王様の謁見のため、王女様のお召し替えにあがりました」
「頼んだぞ。ではまた迎えに来ます」
アーサーは一礼して部屋から出た。扉を閉めると城の執事が話しかけてきたので、それに答えるために立ち話をしていた。すると部屋の中から悲鳴が聞こえた。
アーサーは慌てて扉を開けようとしたが開かない。体当たりをしながら中にいるリンネに大声で呼びかけた。
「リンネ、どうした?何があった」
「助けて!」
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