第1章 灯火は消えて

僕は、まだ子どもだった。

あの夜の光景を思い出すたびに、胸の奥が焼けるように痛む。


両親は「灯火の環」という団体で働いていた。

犯罪者に寄り添い、更生の道を示す――そんな、優しい活動をしていた。

母はいつも笑っていたし、父はどんな相手にも頭を下げていた。

僕は幼いながらに、それを誇らしく思っていた。


けれど。

その優しさを踏みにじったのも、また“人間”だった。


ほんの少しの金と、欲望のために。

保護していた男が、両親を惨殺した。


僕の目の前で。

僕が何もできないまま。


――人は変われる。

両親はそう信じていた。

でも現実は、残酷にその理念を裏切った。


僕の中で、何かが音を立てて崩れた。


「正しい人間が報われる世界じゃなきゃいけない」


あの夜、血の匂いの中でそう誓った。


それは、幼い僕にとって祈りであり、呪いでもあった。

そして、この誓いこそが、のちに“尊厳指数”という考え方へとつながっていく。


――僕の名は照真律央。

正しく生きる者のために、間違った人間を排除する。

そのための制度を、僕は作る。

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