原因をさがせ!


「ほお〜……オバケが撮った映像、か……」


 文化祭準備での物置にされている部室にて、メイド服姿の風雅がそうこぼす。雷花はスマホに映していた動画を引っ込めつつ頷いた。

 オバケが撮った映像。一年生の彼らは、撮った覚えも映った覚えもない映像をそう評した。この映像は一見すると、ただの文化祭によくありそうな自主制作の動画である。撮った覚えがないというのは相当無理があるが、演技をしている素振りはなかったしそうなのだろう。これでもしクラスぐるみで嘘をついていたのだとしたら、この映像での大根役者っぷりを逆に疑いたくなるほどだった。

 眼前、興味深そうに言う風雅はまだメイド服を着ている。雷花は目の遣り所に困りながら、心底不思議そうに言った。


「ところで君、いつまでそれ着てるんです? というかなんで着てるんです?」


「あー、うちのクラスの出し物、男女逆転喫茶でよ……無理やり着せられて出てきたはいいけど、着替え置いてきちまったんだ」


「つまりその下には何も着込んでいないと? 破廉恥ですね」


「そうは言ってねえだろ! 勝手に変態野郎にすんな!!」


「わたしはいいと思うよ、フカフカちゃん!」


「人の名前を柔らかそうにすんな!!」


 ギャンギャンと叫ぶ風雅から目線を外し、雷花は再び動画に目を落とす。そのマイペースさに何を思ったのか、風雅は頭を掻きながら大きくため息を吐いた。

 このクラスの出し物は、恐らくこの映画。文化祭まであと二週間もない現状で、何も撮影していないというのは流石に考えられない。これは準備された出し物の一つと考えるのが正しい。だが、彼らは撮影した覚えがないと言った。それはなぜか。本当にオバケが撮ったとでも言うのか。


「は〜……にしても、こんなこと本当にあるのか? 撮った覚えのない映像が三十分もあるなんて」


「う〜ん、あまりないと思うけど……なんか、変な魔法でも使ったのかな?」


「ええ。忘約者が関わっているのは確実でしょう」


 メガネを抑え、雷花は考える。

 あの時、教室に入った時。確かにあの場所には、白色の魔力が充満していた。満ちすぎていて出所までは分からなかったが、確実に忘約者がいるはずだ。忘約者がいるということは、想魔がいるということ。想魔がいるということは、想い出研究同好会の出番だということで。


「ではまず、聞き込みに行きましょう。他に何かおかしなことはなかったか、先ほどのクラスの人たちに聞きます」


「えい、えい、おー!」


「……おい」


 意気揚々と立ち上がる雷花と、元気に拳を突き上げる梅。そんな二人を見上げ、メイド服の風雅はぐったりした顔で、


「その前に着替えさせてくれ」

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