第5話 ツンデレ発動

「何で転校してきたの…?」

 ……なんて言おう。


「先輩不足で死にそうだったので!!」


 なんていえないよ?!

 え、どうしようどうしようっ!

「合わなかったらしいですよ~?学校が」

 春香!!さすがああ!

 春香が割って入ってきた。

「合わなかった…?勉強?」

「…まあ、人間関係からほぼ全部が。つまらなくて」

 一同驚いた顔をする。

「あの難関校。惑星高校にいて!?」

 海が声をあげる。

「そう。勉強は別によかったんだけどさ。なんか…まじめが多くてヤになった……それと」

「…他に何かあるの?」

 先輩の優しい目を見る。

 先輩に会いたくて。なんて言ったらどんな顔をするんだろう。驚くかな?赤くなるのかな?どんな先輩もかわいいし大歓迎だ。

 ……でも気持ち悪がられたら、嫌われたら生きていけない。

「あ~、近かったんで」

 嘘だ。でも、嫌われるよりはいい。絶対。

「ほんと、変わらないね。秋ちゃんは」

 先輩は優しく微笑んだ。

 再び胸が締め付けられいとおしさのあまり目が潤む。声にならない声がのどでつっかかる。

 だが、春香、海、彩の3人は確信していた。

「これは本心ではない、と」

 昼休みに家はどのへんか、と3人とプラスして夕菜の4人で話していた。

 その際秋は


「……ん~、クッソ遠い。一時間かかる。引っ越そうかなぁ。この辺に。」


 と言っていたからである。

「あ、そうそう、これ使ってね。」

 先輩が渡してきたのはもちろん楽器。

 トランペットだ。

「……久しぶりだな。これ」

「じゃ、教室行って吹こっか」

 先輩の提案に不満なんてもちろんないので首を縦に振る。


「……」

 教室に着くと先輩は楽器を置きマウスピースを洗いに行った。ので、偶然3年の教室になったのをいいことに名簿を見る。

 先輩いるじゃん!!

 3年3組8番。百瀬菜月。

 ……なんで?なんで「ももせ」で8番なの?!

 と、心の中で叫びつつ先輩の席を探す。

「あった。これだ」

 きれいに整頓され、光って見えるのはきっと先輩のオーラ(秋にしか見えてない)だろう。

「秋ちゃん~!」

「あっ!ありがとうございます。」

 そういえば、1年生が見当たらない。いないのだろうか。2年生もいなくね?

 え、ええ?

「今日さ~、私しかいないんだよね。1年生の2人……あ。さなちゃんとゆうちゃんは用事あって休み、2年の夕衣ゆいちゃんも学級閉鎖。何やってんだって話。3年も見ての通り私だけ。」

 ……少し喜んでしまった私がいた。先輩と二人きり。しかも先輩の教室。

 望んでた展開では……?

 そんなことはさておき、適当にマウスピースで音を出し始める。

 少し冷たいマウスピースに懐かしさを感じていた。

 昔は話したくても気まずくてあんまり話せなかったっけ。

 先輩から話しかけてくれたときはうれしかったなぁ。

 ……あれ、今無言じゃね?

 幸せすぎて忘れてたわ。

「秋ちゃん」

 先輩が口を開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平和な吹奏楽部に先輩大好きガチオタヤンキーが来た 春木維兎 -haruki-yuito- @KOBAYUI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ