だいよくじょうからのー、おとこまえなかえしからのー、しゅうしゅう。あるいは しんじゅとにいみ、せくささいずともになる
(やってしまった……)
理性がゆっくりと輪郭を取り戻すにつれて、真珠は自分がしでかしたことの重大さに血の気が引いていくのを感じた。
発情の熱波に浮かされ、衝動のままに彼を襲ってしまった。途中で、引き締まったカリッコリのふくらはぎに発情して舌を這わせているうちに…
(ぎゃ、逆正常位でしちゃったよ。恥ずいぃ!わたしのバカバカ)
貪った記憶が、羞恥と罪悪感となって逆流を始めた。
(ヤバイよ、月曜からどーするよ、わたし…)
掴んだままだった新見の足を、まるで壊れ物に触れるかのようにそっと離す。そのままごまかすように、ゆっくりと身を引いたその時、甘い吐息が思わず唇から漏れる。
「はぅ……っ」
(ぎゃっ、余韻で声が出ちゃった……!)
自分の身体の正直な反応に、真珠の顔がみるみるうちに真っ赤に染まった。
新見を見ると、がっつり目が合った。
次の瞬間、新見がしなやかな動きで上半身を起こした。逃げ場を失った真珠の頬を、少しごつごつした骨張った両手が優しく、しかし有無を言わさぬ力で包み込む。
「筬島、次は俺のターンな」
「へっ……な、なに?」
吐息がかかるほどの距離で囁かれ、頭が真っ白になる。
「お前だけに恥かかせたままじゃ、フェアじゃないだろ」
「い、いきなり何、そのムーブ……」
「姉貴の受け売り。……その話はまた後でな」
悪戯っぽく笑ったかと思うと、新見の唇がそっと重ねられた。最初は触れるだけの優しいキス。しかし、真珠が戸惑いながらもそれを受け入れたのを確かめると、角度を変えて深く、熱を帯びていく。されるがままだった真珠も、やがて彼の逞しい背中にそっと手を回した。
(なに、新見のくせに…キュンとさせないでよ)
思考が蕩けていく中、新見は真珠をゆっくりとベッドに押し倒す。唇は合わせたまま、彼の指がためらいなく肌を滑り、熱の在処を探り当てた。身体がビクンと跳ねる。新見に求められているという喜びが、羞恥心の上書きをしていく。熾火になっていた欲がまた燃え上がりだした。
そして、丁寧に、けれど確かな熱量をもって、新見が深く彼女の中を満たしていった……。
***
どれくらい時間が経っただろうか。絡み合ったまま、お互いの荒い息遣いと心臓の音だけが響く。新見の腕の中で、真珠はようやく落ち着きを取り戻していた。
「新見、準童貞とは思えない器用さだあ」
「あ、イメトレはしょっちゅうしてるからな。意外にうまくいったわ」
「むっつりか!」
「あ、イメトレ大事だぞ」
「うん、そうだね。花丸セックスだったよ」
「おー、褒められてしまた」
「ねぇ新見、さっき言ってたお姉さんの受け売りって、一体何なの?」
彼の胸に顔をうずめたまま、くぐもった声で尋ねる。
「ああ、あれか」
と、新見は真珠の髪を優しく撫でながら言った。
「昔、姉貴に突然言われたんだよ。『もし彼女が欲情してとんでもなくはしたない子になっちゃった時は、その後今度はお前から迫って全部うやむやにしてやれ』みたいな、そんな感じ」
「……お姉さんと、いつもそんな話するの?」
「いや、そん時は姉貴が一方的に言ってただけ。たぶん本人の体験談、からの~じゃね?」
「……うん、ド正解。それに心地よかったし収まりも付いた感じ。お姉さん、ありがと♪」
その言葉に、新見は満足そうに笑った。しばらく心地よい沈黙が流れる。しかし、脳がふやけた幸せな時間はそうは続かない。
「…で、この場は収まったとして、月曜からめちゃくちゃ気まずくないか?どうするよ」
新見の言葉に、真珠の心臓がどきりとする。それ。まさにそれ。でも、新見と肌を合わせた心地よさは極上、さらに性格とか思いやりの噛みあい方が素晴らしく良い。この関係を、一度きりの過ちで終わらせたくない。必死に頭を回転させて、思いつきを口にする。
「そ、それなんだけど……!」
真珠は勢いよく顔を上げた。
「新見が通ってるジム、私も前からすごく興味あったんだ。もしよかったら、わたしにトレーニング、教えてくれないかな……?」
彼の目を見れず、視線をさまよわせながら言う。
「で…そのお礼と言ってはなんだけど……そのあと、二人で、また……しない?……ダメ、かな?」
最後はほとんど消え入りそうな声になった。どうか引かれませんように、と祈るように彼を見上げると、新見は一瞬きょとんとした顔をし、それからたまらなそうにふっと笑った。
「え、セフレ的収拾?」
「てか、セクササイズ友、あははっ」
「わははははっ、筬島って、難しいかと思ってたけど全然違うな!」
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