第15話 貴族の舞踏会と社交界デビュー -2
_______________________________
4. 舞踏会開始、アリスの歌でカオス
_______________________________
王宮の舞踏会会場は、華やかな光と音楽に包まれていた。ドレスアップしたヒロインたちが会場に現れると、一瞬、その美しさに参加者の目が集まる。
だが、その輝きも束の間、アリスが場を盛り上げようと、フィーネの制止を振り切り、歌い始めた。会場の雰囲気が一変し、貴族たちがざわめき始める。
「アリスさん、くれぐれも静かに、会場の雰囲気を壊さないような曲を……お願いですから!」
「分かってるって!」
フィーネの懇願も虚しく、アリスはリュートをかき鳴らし、満面の笑顔で歌い始める。
「〜♪今宵は華麗なる舞踏会〜、だが本当の主役は誰だ〜?そう、あたしたちポンコツ…いや、最強の…!
今夜はあたしに任せな!盛り上げてやるぜー!
さあ、みんな、ノリノリでいこうぜ!」
「アリスさん、歌詞が違うーっ!
余計なことを歌わないでくださいーっ!
私の計画がーっ!」
フィーネの悲鳴が会場に響き渡るが、すでに遅かった。会場の空気が一変し、貴族たちがざわめき始める。一部の貴族は顔を引きつらせ、一部は好奇の目を向けていた。
「な、なんだあの歌声は!
まるでセイレーンに襲われたような気分だわ……!」
「こんな下品な歌、舞踏会で許されるのか!」
「あの娘たち、一体何者だ!?噂の『問題児パーティ』か!?」
イリスはアリスの歌声を聞き、魔力反応を解析し始める。
「ふむ……アリスの歌声は、周囲の魔力粒子に影響を与え、感情を増幅させているわね。特に、貴族たちの秘めたる本能を刺激しているようだわ」
「へえ!」
「これは非常に興味深いデータだわ。まさか、こんな場所で……」
イリスは知的な好奇心に目を輝かせている。
_______________________________
5. リリアの孤立と方向音痴
_______________________________
華やかな舞踏会会場で、リリアはツンデレな態度で貴族たちと接しようとするが、冷たい印象を与えてしまい、誰も近づかない。
やがて彼女は会場で迷子になってしまった。
豪華な会場の通路を、地図を逆さまに持ってうろうろしているその姿は、華やかなドレスとは裏腹に、どこか滑稽だった。
「あら、アークライト家の令嬢ではございませんか。ご挨拶を……」
「フン、どうでもいいわ。あなたたちのような俗物には興味ない」
「ひっ……!」
「私に話しかける暇があるなら、もっと有益なことを考えたらどうかしら?
例えば、この舞踏会の無駄な装飾についてとか」
貴族は悲鳴を上げて逃げるように去っていった。
リリアは一人になり、ため息をつく。
「まったく、これだから貴族の社交は面倒だわ……
どこに行けばフィーネたちに会えるのかしら……?」
「あれ?このホール、さっき通ったかしら……?」
地図を逆さまに持ち、完全に迷子になっているリリア。
「くっ……こんなところで迷子になるなんて……!
誰かに見られたら……! 恥ずかしいじゃない!」
遠くからリリアを見てヒソヒソ話す貴族たちの声が聞こえる。
「あれがアークライト家の落ちこぼれ令嬢か……噂通りの変わり者だわ」
フィーネは遠くからリリアの様子を捉え、頭を抱えていた。
「リリアまで迷子に……!
どうするんですか、これじゃ商談どころか……!」
_______________________________
6. エルミナの「破壊の美学」
_______________________________
舞踏会会場の豪華な飾り付けがされた柱の前で、エルミナは無表情に、装飾品をじっと見つめていた。その瞳には、破壊への純粋な好奇心が宿っている。
「あちらの令嬢は、一体何をなさっているのかしら……?」
別の貴族がヒソヒソと話す。エルミナは装飾品に触れ、破壊魔法で組成を分析しようとするかのように魔力を流し始めた。装飾品がミシミシと音を立て、貴族たちが騒ぎ出す。
「この装飾品、魔力の流れが不均一ですね。
破壊すれば、より美しい残骸になるでしょう……」
「な、何をなさるのですか!
それは代々伝わる我が家の家宝でございますぞ!」
「やめてください!壊さないでください!」
ふとっちょ貴族が悲鳴を上げる。フィーネは、その光景に悲鳴をあげながら駆け寄った。
「エルミナちゃん!何してるんですかーっ!壊さないでくださいーっ!」
「売れなくなっちゃう!弁償代がーっ!私の利益がーっ!」
フィーネの絶叫に、エルミナは一瞥し、魔力を止めた。
「……残念です。もう少しで、破壊の美学を完成させられたのに。
価値がなくなるのは困りますね」
「困りますよ!本当に困りますから!」
フィーネは心底困り果てた顔で、エルミナに詰め寄る。エルミナは、そんなフィーネの焦燥を他所に、どこか満足げな表情を浮かべていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます