第16話 貴族の舞踏会と社交界デビュー -3
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7. イリスのうんちく講義
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舞踏会会場の片隅で、イリスは数人の貴族を捕まえ、舞踏会の歴史や裏側について、うんちくを語りまくっていた。彼女のローブからは、隠し持った分厚い古文書がはみ出している。その言葉は、まるで学術論文の発表のようだ。
「この舞踏会が開催されているこの広間は、元々は古代文明時代の魔力循環装置の一部でね」
「まあ!」
「その魔力の流れを解析すると、当時の貴族たちの生活様式や、王家の隠された財政状況までが……」
「(ヒソヒソ声で、顔を引きつらせながら)あの令嬢、何を仰っているのかしら……まるで狂人のようね……」
貴族の奥方がこっそり呟く。
「完全に浮いていらっしゃるわね……王家の秘密まで暴露しそうな勢いだわ……誰か止めて差し上げて……」
その横で別の貴族が顔を青くしている。
イリスは、そんな周囲の反応には全く気づいていない。
「……さらに、この広間の床に敷き詰められた石材は、古代文明の時代にはトイレの床材として使用されていた可能性があり……」
「イリス様!そんなこと話さないでくださいーっ!」
「私たちが危ないでしょう!ギルドの信用もーっ!私の商談が台無しにーっ!」
フィーネが遠くから、顔を青ざめながら絶叫する。彼女の胃は、すでに悲鳴を上げていた。
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8. ルナのパニックとアキナの暴走
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舞踏会会場では、ルナが貴族たちの会話や感情の波に圧倒され、コミュ障と心配性がMAXになり、フリーズ寸前になっていた。その様子を見たアキナが、ルナを助けようと無鉄砲な行動に出る。
「ひっ……たくさんの……感情……会話……情報過多……!
もう……だめ……フリーズ……しそう……」
「ルナ!大丈夫か!?」
ルナの隣で、アキナが声を上げた。
「おい、みんな、ルナをいじめるな!
俺が守ってやる! 正義の味方は必ず駆けつけるぜ!」
アキナはそう叫ぶと、ルナを抱きかかえ、そのまま貴族の群衆に突進した。人々をなぎ倒しながら進むアキナに、悲鳴が上がる。
「きゃあああ!何事だ!?暴漢だーっ!衛兵を呼べ!」
「私のドレスが!私の足がーっ!」
「アキナちゃん!もっと混乱させないでくださいーっ!
営業妨害ですよーっ!私の商談がーっ!」
フィーネの悲鳴が会場に響き渡る。その混乱は、もはや収拾がつかない状態だった。
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9. 無自覚な騒動の「連携」
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アリスの歌、リリアの迷子、エルミナの破壊寸前の行動、イリスのうんちく、アキナの突進、ルナのフリーズ……全てのポンコツ行動が複雑に絡み合い、舞踏会は完全にカオスと化した。
貴族たちはパニックになり、互いの秘密をうっかり口にする者まで現れる。会場は怒号と悲鳴、そしてアリスの歌声が入り混じる。
「〜♪乱れるリズム!高鳴るハート!この混乱こそが芸術さ〜!さあ、みんな、もっと本音を見せてくれよな〜♪隠し事なんて、つまんないぜ〜!」
「もう、めちゃくちゃです!商談どころじゃありません!私、もう泣きそうです!誰か、助けてー!」
フィーネは頭を抱えながら、絶望的な顔で叫んだ。
「私の利益がーっ!」
その混乱の中で、青年貴族が焦って友人に耳打ちするが、声が大きい。
「まさか、あのカイル侯爵家の不正がこんな形で露見するとは……!
あの書類、早く隠蔽しなくては……!誰にも聞かれてないわよね……!?」
その会話を、フリーズ寸前のルナが拾い、イリスに伝える。
「イリス……お師匠様……あの……貴族……不正……隠蔽……の……記憶……」
「なるほど。王家の秘密に繋がる情報が、偶然にも手に入ったようね」
「これは論文のネタになるわ。詳細を解析しなければ」
「大きな収穫だわ!
ルナ、もっと詳しく情報を集めなさい」
イリスは知的な好奇心に目を輝かせた。エルザは遠くからこの状況を見て、呆れた顔で紅茶を飲み干す。
「ふふ……まあ、そうなるでしょうね。期待を裏切らないわ、本当に。これだから、彼女たちは面白い」
エルザの言葉は、まるで全てを予見していたかのようだった。
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10. ルチアナ姫の思惑と解決の糸口
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舞踏会の騒動の中、第三王女ルチアナ姫が冷静な顔でヒロインたちを観察していた。彼女は騒動を「チャンス」と捉え、騒動によって露呈した貴族たちの不正に気づく。彼女の瞳は、好奇心と計算で輝いていた。
「ふむ……あの娘たちの騒動は、予想以上ね。
しかし、これならあの堅苦しい貴族たちの本性も炙り出せるかしら」
「ちょうどいい機会だわ。隠れた不正も暴ける……これは面白いことになってきたわ」
ルチアナ姫は独り言を呟き、微かに口角を上げる。そして、フィーネに近づき、優しい笑顔で話しかけた。
「フィーネ様。この混乱、貴女ならどうにかできるのでは?」
「もしこの騒動を収めてくださるなら、わたくしから特別な依頼を差し上げましょう。もちろん、報酬は破格で」
「そして、この混乱で露呈した貴族たちの不正の調査も、お願いしたいのですが?」
ルチアナ姫の言葉に、フィーネの目が輝く。絶望の淵から、一転して商機が舞い込んできたのだ。
「特別な依頼……!?報酬は破格で!?そして不正の調査まで!」
「やります!やらせてください!姫様!すぐにこの混乱を収めてみせます!」
フィーネは興奮して、力強く頷いた。
「ええ、期待していますわ。貴女たちの……いえ、貴女たちのパーティの、その『特別な能力』に。そして、その『ポンコツ』なやり方にね」
ルチアナ姫は意味深な笑みを浮かべた。フィーネは、そんな姫の真意に気づかぬまま、希望に満ちた顔で騒動の収束に取り掛かる。
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