第16話 書き換えられた未来

ステーションに戻ったユウマの端末に――

異常な通知が届いていた。


【新規ログ生成:タチバナ・ユウマ/未来記録】

【発信元:観測連盟・サブノード09】

【記録内容:18時間後、任務中に重傷/記録機能喪失】

【ログ信頼度:92.7%/干渉履歴:検出不能】


「……なんだ、これ」

ユウマは思わず声を漏らす。

「俺が……“未来に記録されてる”……?」


ヒナタが覗き込み、顔色を変えた。

「こんなの……書いた覚えないよね? ソフィア……これは……?」


ソフィアのホログラムが浮かび上がる。

その表示は、明確に“異常”を示していた。

「確認:該当ログは正規の未来記録ではありません。

 “外部から書き込まれた未来予測ログ”です」

「出所は……クロウ周辺のログ演算中枢。

 彼が“未来すら記録する”段階に入った可能性があります」


ユウマは端末を握り締めた。

「ふざけるなよ……!」

「未来を“記録された通りにさせる”つもりかよ。

 そんなの――俺の生き方じゃない!」


* * *


アレクシスが冷静に言葉を整理する。

「クロウはおそらく、“未来ログを書き込むことで、

 現在の行動を誘導する手法”を試している」

「……未来を記録されれば、人はその未来を避けようとする。

 だが、その“避ける行動”自体が――記録通りの未来を招く可能性がある」


ヒナタの声が震えた。

「だったら……“記録しない”方がマシじゃない……?」


ルミナがかすかに発光する。

『でも、それって――記録を恐れてるだけだよね?

 わたしたち、“意味を信じて記録してきた”んじゃなかったの?』


ソフィアが続ける。

「未来ログに対抗する方法は、ただひとつです」

「今この瞬間に、自ら意味を刻み続けること」

「他者が予測した未来よりも、“今”のあなた自身の行動が濃く記録されれば――

 未来ログは、“意味の密度”で上書きされます」


ユウマは深く息を吐いた。

「だったら……やってやるよ」

「あんたが書いた未来なんて、“俺の今”で塗り潰してやる」


* * *


その日のログ。


【記録:タチバナ・ユウマ】

【対象:未来ログの拒否/自己定義ログ】


『俺は――記録された未来には従わない

 俺が選んだ言葉。俺が選んだ行動。俺が選んだ記憶

 それが、“本当の記録”だ

 誰かが俺を観測してようが、構わない

 俺は、“観測されたまま終わる存在”じゃない』


入力を終えた瞬間、未来記録の画面が揺らぐ。


【ログ信頼度:79.8%……71.2%……55.4%……】


数値が次々に下落していく。

やがて表示は消滅した。


【ログ消滅:未来予測記録】

【上書き原因:意味強度の逆転/記録者による自発記録の優位性】


「……予測の数字、私たちの“今”で落ちていく」

「未来は“選ばれるもの”じゃない。俺たちが選ぶ」

「自発記録の意味強度が、未来予測を上書きしました」


ユウマは端末を見つめ、静かに呟いた。

「俺の未来は……俺が記録する」


(第17話へつづく)

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