未解読の絵が暴く過去と未来、 光と影が紡ぐ絵画ミステリー

まるで美術館の静謐な展示室に、足音を忍ばせて迷い込んだような読後感でした。
濡れた夜の街、スケッチ帳に残された灰色の粉、そして《テンペスタ》の嵐雲……。
その一つひとつが、音もなくページに染み込み、やがて物語を美しい構図に整えていく。

「影は真実を知ってる」──その一言が、あまりに鮮烈で。
ジョルジョーネの絵と、玲奈の兄の死が二重写しになり、過去と未来がすれ違う瞬間に立ち会った気がいたしました。

推理小説としても、美術エッセイとしても愉しいのですが、なにより“人が未解読であること”の余韻が胸を打ちます。

<第1話《テンペスタ》公開時点でのレビューです>