第4話:不器用
トレーニーとして活動して1ヶ月が経過した。活動と言っても、ひたすら銃剣とライフルの訓練、あとは川辺さんから声をかけられて、格闘技を教わっている程度のものだけれども。
そこに姉ちゃんのスパーリング付きだ。
最近の嬉しいことは、マジエンスの常環
が効果を発揮しているのか、身体の調子が良いことだ。
効果は脳にも機能してるようで、
授業の内容とか部活の練習がしっかりと頭で理解できてる気がする。
ただ唯一の不満は。
最近、スパーリングで姉ちゃんの当たりが強いことである。
理不尽に怒ってくるわけではないのだが、訓練で少しミスをすると
「その程度でテストに合格できると思ってんの?」とか、
「スレイヤーはあんたに合わないから
今すぐやめな。」
と大袈裟にキレてくる。
こっちに非があるので逆ギレする権利はないけど、そろそろ我慢の限界だ。
モヤモヤはするけど、俺と同じく
メンバーとなった笹倉さんが顔を突き合わせるたびに明るい笑顔を向けてくれるのが
モチベーションアップの秘訣だ。
天国と地獄を同時に体感してるので
プラマイゼロと言ったところか。
姉にはどうやって言い返してやろうか、
笹倉さんにはこれ以上どうやって仲良くなるかを考えながら、
今日も学校終わりに訓練を受けに行くため、足を運ぶ。
ジャージに着替え終わった後
トレーニングルームに向かった。
部屋に入り、準備体操や飲み物を用意して
トレーニングの準備を調える。
「非日常を感じたいからスレイヤー始めたけど。
やっぱり笹倉さんとか
友達がいるのがデカいな・・・」
「それがアンタの動機なの?」
声に驚いて即座に後ろを振り返る。
すると、姉ちゃんがドアに背中を預け
腕を組みながらもたれかかっているのが見えた。
「いつからいたんだよ?」
「今し方。入ろうとしたらアンタが
呟いてるのが聞こえてさ。」
「あっそ・・・。」
姉ちゃんは一息ついてからまた言葉を紡いだ。
「今更だけどさ、なんでアンタ
スレイヤーとして活動することオッケーしたわけ?話聞いてなかったわけじゃないけど一応改めて聞いときたいと思って。」
「それは・・・。スリリングな経験したいのもあるけど、家族とか学校の友達とか、身近な人を守るためだよ。」
「は?」
低い声と、見開いた目が俺を捉える。
やばい、姉ちゃんガチでキレてる。
「ふざけんな。アンタそんなちゃっちい志でスレイヤーやってんの?」
「そうだよ。問題か?」
「スレイヤーやめな。」
「なんで?」
「学校はどうするの?」
「そっちだって学校あるくせに。」
「大学生は自由なんだよ!
悔しかったら早くなってみな。」
「俺はもう高校生だ。
いつまでもガキ扱いすんな。」
「高校生はガキだっつーの。」
「今更家族ヅラすんな!
中学入ってからずっと避けてたくせに。」
姉は無言だった。
だったらこのまま言いたいことを言ってやる。
「とにかく、余計なお世話だ。
俺はやめない。
要は魔物とバトって死なずに勝てばいいんだろ?
それに、スレイヤーとしての才能は
そっちより俺の方があるし。」
すると姉がこっちを魔物でも相手してるかのように睨んだ。
唐突に腹に衝撃が来る。
「ごはっ?!」
位置的には・・・ここはみぞおちか?
痛さと衝撃に耐えきれず、俺は思わず腹を押さえて床に倒れ込んだ。
「ぐうぅうう・・・!」
床がマットでできていることに今日ほど感謝した日はない。
痛さと苛立ちをマットにぶつけて気が紛れるまで転がった。
思わず姉を見上げる。姉は右手を握りしめていたから腹を殴って来たんだと瞬時に理解する。
「おい、テメェ。
もっかい言ってみ?
お前が私にどうやって勝つって?」
ちょうど子供の頃、今じゃわかることが
わからずにモタモタしていた俺を揶揄う目つきをしている。
そして、低い声でやや早口で返され、反論の言葉を探す。
その間にも姉は言葉を紡いだ。
「なら、この際全部言ってやるよ。
アンタはこの業界の才能無いし、
動機もダサい。
身体だけデカくなった気のおこちゃまにもわかりやすいように言うとさ、そんな気持ちでいられてもこっちが迷惑だからスレイヤーやめろって言ってんの。
ここに2年いる私が言うんだから間違いない。アンタはすぐ死ぬ。」
姉は早足でその場を出て行った。
「チッ・・・なんだよ。あの・・・!」
クソ野郎め!と喉まで出かけたことにすんでのところで気づき、必死に飲み込む。
「クリスティーヌさんにチクってやる。」
鳩尾を押さえつつ俺は立ち上がって医務室に向かった。
医務室に向かい、即座にクリスティーヌさんと、不本意ながらまさか家族の事情を
聞かせるとは思わなかった笹倉さんにも
事の経緯を話した。
話終わると、2人とも目を丸くして驚きの声をあげていた。
「拓真くんのお姉さん、そんな事する人に全然見えないのに・・・」
「小学生の時はしょっちゅう取っ組み合いの喧嘩してたしあんなもんだよ。」
「そう・・・」
笹倉さんが眉間に皺を寄せ、
クリスティーヌさんは俺に湿布を貼ると、手を顎に添えてしばらく考え込んだ。
「まあ、姉ちゃんが俺にあたる理由はなんとなくこれだろうなと思いますけどね。」
「どういう意味?」
と笹倉さんが尋ねてきた。
話そうにも、ドロドロしてるので躊躇ったけど、当の本人はこの場にいないし、このまま黙るのはキリが無いと思い、えーいままよと腹を括った。
「実は姉ちゃん、今の俺と同じくらいの時に勉強も部活もうまくいかなかったみたいで。そのせいで器用な俺が羨ましく思ってあたっちゃったらしいって両親から聞かされたことがあるんだ。」
「そうなんだ・・・。」
目を丸くする笹倉さんとは対照的に、
クリスティーヌさんがおずおずと口を開いた。
「拓真くん。
実は私、お姉さんが悩んでることは知ってたの」
「マジっすか?」
「私と美月ちゃんは2年前にここの組織に入ったの。
彼女が悩みを話していたのは別の子だったけど、
その悩みを偶然聞いて気づいちゃったんだ・・・。」
「そうだったんですね・・・」
「美月ちゃんはあなたにしてしまった事をとても後悔しているの。
けど、お姉さんを許すかどうかはあなた次第になるわ。」
「そうっすよね・・・」
「だから今一度あなたのスタンスをしっかりする必要があるわね。
お姉さんと本当に仲直りしたいのかを。
私は2年間美月ちゃんと一緒にいたから
やっぱり美月ちゃんの気持ちの方に傾いちゃうかも。
だから私から言えるのはこれくらいかしらね。」
「わかりました。
姉ちゃんどこに行ったかわかりますか?」
「たぶん自分の部屋にいるんじゃないかな。準ナイト以上の階級だったら自分の部屋を持てるの。」
そう言うと、クリスティーヌさんは
姉ちゃんの部屋の場所を教えてくれた。
「わかりました。
あとで行ってみます。」
「なら、私が先に美月さんのところに言ってきます。美月さん、拓真くんの前だと遠慮して本音を喋らないと思うので。」
笹倉さんがクリスティーヌさんと俺に会釈を交わして医務室を後にした。
とは言え、家族の問題の解決を善意とは言え、他人に任せては置けない。
行こうとすると、
「気持ちはわかるけど、少し休んで。」
とクリスティーヌさんに嗜められた。
気持ちがスッキリしたためか、殴られたところがまた痛んできたのでとりあえず指示に従うことにした。
「わかりました。ベッド借りますね?」
俺は医務室のベッドに横になった。
マジエンスに出会わなかったら
私は今も精神年齢クソガキのままだったと思う。
だから川辺師匠には非常に感謝している。
出会った日のことは昨日のように思い出せる。
出会ったのは3年前。
高校に痴漢や不審者の防犯対策のレクチャーをしに
Knight's Taleの職員さんと一緒に川辺さんが来た。
うちは女子校だからそう言ったレクチャーを受けるのは何度かあったけど、
聞いた中で川辺さんの説明が1番わかりやすかった。
なので質問タイムの時には何度も手を挙げて質問してしまった。
川辺さんは苦笑いしつつも何度も答えてくれた。
ただ気になったのは、私を見た瞬間、
怪訝な顔をしたことだ。
レクチャーが終わり、自由解散となった。
ほとんどのクラスメイトが講堂から教室に戻る中、質問したくて残ってる子たちと一緒に私も川辺さんの元に残る。
すると、川辺さんの方から声をかけてきてくれた。
「今日は授業が終わった後、部活とか予定ある?」
「ありません。」
「なら、君と個人的にお話ししたいから
ちょっといいかな?」
「・・・?わかりました。なら、空手部の部室でいいですか?」
何だろうと思ったけどなんかちょっと特別な感じでワクワクした。
「いいよ。待ってるね。」
と川辺さんはニッコリ笑って返してくれた。
帰りのホームルームが終わるや否、
私は部室にすっ飛んで行った。
部室に入ると、川辺さんが待っていた。
「いやー、悪いね。早く帰りたかっただろうに。」
「いいんです。今日は何も無いし、なんかちょっと特別な感じで。」
「そっか・・・。
単刀直入に、さっそく君を呼んだ理由を話そう。
君の空手の力に私は興味を持ったんだよね」
川辺さんの言葉に目を丸くした。
確かに私は空手部に所属してる。
間違ってないけど、さっきの質問タイムの時には言わなかったはずなのになんでこの人知ってるんだ?先生から聞いたのかな?
「なんで知ってるんですか?
先生から聞きました?」
「それもあるね。
あとはそうだな。身体の使い方を見て
実践的だと思ったし、噂を聞いたんだ。」
「噂?」
「この高校の通勤電車には痴漢から女の子を助けてくれる女の子がいる、ってね。
ここの制服を着た、ボーイッシュで身長は平均的な女の子。
これ、君のことでしょ?」
再び会うこの数十分でそこまで調べ上げていたことに改めて驚いた。
情報収集が早いのはさすが探偵と言ったところだろうか。
「目の前で痴漢を見かけてる度に助けてるのは事実です。でも、ヒーロー扱いされてたいからやってるわけじゃありません。
好きでもない人から良いようにされる女の子たちが可哀想だと思いまして・・・」
「そうなの?まあ、良い心がけだと思うよ。世のため人のために力を使うのは
素晴らしいことだ。」
「ありがとうございます。」
「ぜひとも、この価値観のまま大人になってほしいな。でも・・・」
「でも?」
「でも、このままだと・・・。
君、一生強くなれないよ?」
「はい?」
今まで褒めてくれたのに頭から水をかけられたような気分になった。
「どうしてそう思うんですか?」
「練習が身についてないからだよ。
この状況をなんとかしないと
君がこれから先強くなることは一生無いかもね。」
なんかだんだんと腹が立ってきた。
「あなた私と今日初めて出会いましたよね?
なんでそう断言できるんですか!」
「見えるんだよ。
君の力が燻ってるのがね。
君は努力ができてない。」
「はぁ?!」
「勘違いしないでほしい。
君は努力してないって言いたいわけじゃないよ。その、浮き出た拳骨に、
常にすり足気味の歩き方。
部活の努力は相当頑張ってるだろうね。
でも君は、努力の仕方が間違ってるの。
君は身体に合ってない練習をずっとしてる。
身体に合ってない練習をするからいつまでも身につかない。
その悪循環の輪の中にいるの。」
「黙って聞いてれば言いたいことをベラベラと・・・。言われたくないです・・・。
いつもどれだけ練習に打ち込んでるか知らないくせに、偉そうに言わないでくださいよ!部活の関係者じゃないくせに!」
「いや。私はここの卒業生だよ?
なんなら君と同じく空手部だ。
写真見る?」
そう言って川辺さんはスマホを指差した。
言われたとおり見てみると、確かに
うちの学校の名前が刻まれた道着を着て
笑顔で写真に写っている川辺さんがいた。
「本当だ・・・。今から7年前か。」
「君と在学期間が被ってたら私の学生生活はもっと楽しかったかもね。
ま、それは置いといて。
君の力を私に見せてほしいわけ。
体操着を持ってくるように言ったのはそれが理由だよ。」
「わかりました。受けて立ちます。」
練習の成果を見せて、自身満々なこの人の自信を折ってやろう。
川辺さんをどう倒すか考えながら体操服に着替えた。赤い拳サポーターをつけると、
川辺さんが青い拳サポーターをつけて待っていた。
「さあ、いつでも来ていいよ。」
「行きます。」
地面を踏み締め、ワンツーを放つ。
しかし、ひょいっと避けられてしまった。
「パワーもスピードも申し分ないね。
でも、わかりやすすぎ。
強張るまで力を入れすぎてる癖があるね。
もっと感情を身体をコントロールする訓練を受ける必要があるね。」
「くっ・・・・・・!」
わかってることを言われるとこんなにも歯がゆいのか。
ムカつく。今日初めて会ったくせに。
「とりゃっ!!」
一歩引いて上段回し蹴りを当てに行く。
川辺さんは一瞬こっちが間合いを取るために一歩引いたのを見て少しニヤニヤしていたが、こっちが上段回し蹴りをしようとしてることに気づいてギリギリで避けた。
「面白い。
力量の差を認識してもなお私を恐れないか!」
川辺さんはそう叫んでニヤニヤしながらも
防戦一方に出るようだった。
なら・・・。攻められるだけ攻めてやる!
「うあああああ!!」
ワンツー、前蹴り、回し蹴り。
できるものは全てぶつける。
受け流し、捌かれてる感覚がする。
でも、いい。連続ならいつか当たる。
「はあっ、はあっ・・・」
体力が切れてきたので攻撃の手を止めて相手の様子を見てみる。
「もう終わり?」
服が擦れてること以外何の傷も負ってない川辺さんを見て冷や汗が走った。
「認めたくないのはわかるけど、
自分の短所を受け入れなきゃどうしようもないよ」
「ぐはっ?!」
川辺さんが言い終わるや否、鳩尾に衝撃が入る。
鳩尾に正拳突きを1発入れたんだろうとは言え、早すぎる。
「ぐっ・・・・!!」
思わず立ってられなくて、地面に這いつくばって床に爪を立てた。
「無理しないで。身体によくない。」
「うるさい・・・。
まだ、行けます・・・」
痛みの波が引いてきたので落ち着いて呼吸する。
頭が冷えてくると、自分が汗をびっちょりかいていることに気づいた。
そこでなんか急激に戦意が萎えてしまった。
もうこれ以上痛い思いはしたくない。
どうせこの人には敵わないんだから。
やっぱり生まれが影響してるんだろうな。
でも、こうして個別に呼び出すってことはこの人なら受け止めてくれるかもしれない。
「わかりました。もう、やめます・・・」
降参の意思を示すと、川辺さんは構えを解いた。
スポーツドリンクを飲んで落ち着いた後に
川辺さんに向かって声をかけた。
「さっきは、すみませんでした・・・」
「落ち着いたなら何よりだよ。」
「むしゃくしゃしてたんです。
最近、勉強も部活も上手くいかなくて。
色々理由はあるんでしょうけど、
心当たりはあります。」
「そうなの?まあ、私も君を見て何となく察しはついたよ。」
「たぶん私は・・・。」
「阿久津 美月ちゃん。君は・・・。」
「「発達障害の疑いがある。」」
事実を当てられて、またびっくりして心臓が跳ね上がった。見てわかったとは言ってたけど、どうして・・・?
「確かに私はASDとADHDのグレーゾーンです。でも、なんでわかったんですか?」
「手合わせをした際に、君の力の流れの違和感が明確になったわけ。あとはそうだね。周りを気にしないでズバズバ質問できる強さとヒーローって呼ばれるくらいの正義感の強さで納得した。」
「なるほど・・・。でも、確かにあなたの言うとおりです。
私は生まれた時、体重が1000も無かったみたいで。」
「そうだったんだね・・・」
「川辺さん・・・」
「なぁに?」
「教えてください。
私はこれからどうすればいいんですか?
頑張ってるのに努力が反映されない。
そんな事私がいちばんよくわかってる!
勉強も部活もうまくいかない。
どうすれば改善されるか、
それがわかんないから最近ずっとこんなにむしゃくしゃしてるんでしょうが!!」
涙が流れる。
泣くな。やめろ。
この人にあたるな。
でも、もう我慢できない。
楽になりたいよ。
「くっ・・・
ううっ・・・・」
自分の状況にやるせなくて
自分が情けなさすぎて涙が溢れてくる。
抑えよう抑えようと思ってももう限界だ。
「うぁああああ・・・!!」
とりあえずこの心のモヤモヤが晴れてほしくてずっと泣き続けた。
川辺さんがその場に座り込んだみたいだった。
香水か柔軟剤、どちらの匂いかわからないけど、良い匂いがする。
「だから私は君を選ぼうと思うんだ。」
「え?」
「私の持つ力を君に与えれば、君のその特性は大幅に改善されるだろうね。
普段から他人を助けて生きてる君は
そろそろ報われてもいいと思うんだ。
必ず成果が出るように君のことを鍛えてあげる。」
「ありがとうございます・・・。
ありがとうございます!」
嬉しくてまた涙が出てきた。
それに自分で苦笑いしてしまい、川辺さんも笑った。
そこからしばらくは川辺さんが持っている最新式のAIデバイスの分析のもと、私のフィジカルに合ったトレーニングをこなすことになった。
そのおかげで私の空手の腕は少しずつ伸び、試合は型も組み手も2回戦までくらいなら数回上がることができた。
川辺さんからトレーニングを受けて3ヶ月くらい経った頃、練習終わりに川辺さんから声をかけられた。
「美月ちゃん、ちょっと話したいことあるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「単純に、もっと強くなりたいと思う?」
「もちろんです!」
「そっか。なら。君がもっと強くなる力をあげるよ。」
「それって何ですか?」
「魔法だよ。」
「魔法・・・。
それってファンタジーとかにある魔法ですか。」
「そう、その魔法。」
「そんなのフィクションの話じゃないですか。川辺さん魔法使えるんですか?」
「使えるよ。ほら。」
そう言うと川辺さんは少し目を細めた。
すると、川辺さんがワイヤーで釣られてるわけでも無いのにその場で1mくらい宙に浮いた。
「すごい!ピーター・パンみたい!」
「でしょう?全ての人間には身体の中に魔力がある。魔力を全身に流してコントロールできるようになれば、魔法が使えるようになるよ。」
「魔力をコントロールできれば私も空飛べるようになりますか?」
「できるよ。魔力を全身に流せるようになると、魔法が使えるようになるだけじゃない。脳と身体全身に大きな影響を及ぼすんだ。
これで君の発達障害の特性もいくらか緩和されるだろうね。」
「あとはそうだね。身長が伸びる。
私、魔法覚えたのは半年前だけどさ、
この前健康診断行ったらなんか0.5ミリ伸びてたんだよね。魔法使える知り合いに話を聞いたらその子も2cmくらい伸びたみたい。
あとは女ならホラ、月のものが来るじゃない?それの痛みとか和らぐらしいよ。私はもともと軽い方だったけどさ・・・」
「川辺さん!私に魔法を教えてください!!」
「めっちゃ食いつくじゃん。
まあ、そんなに受ける気があるならいいよ・・・。」
川辺さんは苦笑いしつつ私に魔法というか、私の身体の中にある魔力探しを手伝ってくれた。今思い返すと、あれはマジエンス常巡を教わったんだろうな。
常巡を覚えた後は、家に帰ってから寝るまで意識し続けた。
そうしたら翌朝、熱が出た。
40度以上の高熱だったから母さんがびっくりしていた。そこから学校を3日ほど休んだ。ずっとこのままなのかなと思うくらい辛かったけど、
強くなるため、これから自分が良くなるかもしれないと思うなら、がんばって耐えられた。
熱が引いた翌朝、起きようとしていつも通り、ベッドのヘッドボードに置いたメガネをかける。視界がぼやけている。
寝起きだし当然か。そこから数分待ってみてもまだ視界はぼやけたままだった。
怪訝になって眼鏡を外す。
いつも通りしっかり見える。
体調も熱が完全に引いたからいつも通りの寝起きの様子だ。
改めて眼鏡をかけ直す。
そこで自分の視界がぼやけているのは眼鏡をかけているからだということに気づいた。恐る恐るメガネを外して周りを見る。
私は眼鏡をしなくてもはっきり見える視界を手に入れた!
「お母さーん!!」
嬉しくなって眼鏡をベッドボードに軽く放り投げるように起きながら母を呼んで部屋を飛び出して行った。
そこからは人生がバラ色になった。
授業がスラスラついていけたし、
友達の冗談とか、感情を正確に読み取りやすくなった。
部活では型の試合は最低でも2回戦、
最大で3回戦ほどまで進めて、組み手の試合で敢闘賞を取れた。
そこから約半年後、練習終わりにまた川辺さんが声をかけてきた。
「美月ちゃん。帰る前に話したいことがあるんだけどいいかな?」
「何ですか?」
「単刀直入に言うと、もう君に訓練教えるのやめようか迷ってるんだよね。」
「どうしてですか?私何か悪いことしましたか?」
「違う。君は良い子だよ。
悪いのは私だ。」
「どう言う意味ですか?」
「君に魔法を授けたことが問題視されたんだ。私が無事になるためには
君が組織に入ることが条件になった。」
「そんな・・・・」
「巻き込んじゃってごめんね。
正直、君に打ち明けようか迷ったけど
君の心を信じさせてもらったよ。
この事情を知ってる人に近々会ってもらいたいんだけどいいかな?
その人ならきっとこの状況をなんとかしてくれるよ。」
「わかりました。」
そこから次の週の土曜日、私は川辺さんに連れられて病院に行った。
そこで脳や体の機能を検査してしばらく病室のベッドで待機させられた。
しばらくすると、病室にスーツを着た茶髪で黄色い目の男の人が入ってきた。
デカい。背が高いし体格も良い。
顔立ちは欧米系だ。日本語喋れるのかな?
ぱっと見はスーツを着たアスリートのように見える体つきだ。
その人は私と目線を合わせると、胸に手を置き、流暢な日本語で穏やかに笑って話しかけてきた。
「阿久津 美月さんだね?
私はジャック・クラウス。
川辺の知り合いだ。
詳しくはこれを見るといい。」
そうやって着衣越しでもガタイの良さがわかるその人は優雅に一礼して私に名刺を渡してきた。
動きが丁寧で綺麗な人だ。
イケおじってこんな人のことを言うんだろうな。
「こんにちは・・・。
とりあえず名刺ありがとうございます。」
両手で名刺を受け取って見てみる。
名刺には株式会社Knight's TaleのCEOと書かれていた。
「すみません、CEOって何ですか?」
「いわばトップだよ。私の一言で会社の方針が決まるんだ。
今回は君の力を見るために来た。」
ジャックさんは笑顔を浮かべつつも真剣にこちらを見つめてきた。
「これから君に一つ質問を行う。
それで君が魔法を得るに相応しいか見させてもらうよ。
もしよければこのことを録画してもいいかな?
アーカイブとして保存するだけで
どこかに流出はさせないよ。」
「それくらいならいいですよ。」
「ありがとう」
ジャックさんはにっこり笑うと、監視カメラに向かって手を挙げた。
ここの病院はジャックさんと繋がりがあるのか。
「すごい・・・」
思わず目をぱちくりしていると、ジャックさんは目を細めてこっちの動きを見守っていた。なんか恥ずかしくなり、これから質問されるんだと改めて認識して姿勢を正した。
私が聞く姿勢になったのを確認すると、ジャックさんが口を開いた。
「私たちの組織は色々ルールはあるけれども、魔法を使うことができるんだ。
君はもし魔法を使えたら1番最初に何をしたい?」
「ピーター・パンみたいに、羽根もプロペラも無しに飛びたいです!」
「ほう・・・。今まで面接した中で初めてだよ。大体の人は強力な力とか巨額の富を願うんだがね。君も願えばお金持ちになったり、素敵な男の子と付き合うことがすぐに叶うだろうに。すぐに空を飛びたいと答えた理由は何かな?」
「お金持ちとか、良い男の子と付き合うのは、魔法が無くてもできるじゃないですか。それに私は別に恋愛はともかく、
お金を稼ぐのは自分の力で頑張ろうと思うんです。
でも、羽根もプロペラもないのに自由に空を飛ぶのは魔法でしかできないと思うから!だから、そう答えました!」
それを聞いたジャックさんは目を丸くした。
そしてしばらくした後にくくくっと声をあげ、やがて大きな声で笑い始めた。
「はっはっはっ!初めて会ったよ。君みたいな心を持つ人には!
君のような志の職員は何人いるかね・・・」
どう反応すればいいかわからなくて今度はこっちが見守っていると、ジャックさんがまたこっちの目を見つめてきた。
今度は優しい光が宿っている。
「君のような無垢な願いを持つものこそ、
魔法を得るに相応しい人間だ。
合格だよ。誰が何と言おうと、私が組織に入るのを許可する。」
「ありがとうございます!!」
「さて、いつから組織に入れるか話し合おうか。」
「それなんですけど。
高校を卒業してからでも良いですか?
入ってすぐ現場に行くわけじゃないと思うんですけど、高校生活を楽しみたいんです。あとは、大学にも行きたいので・・・。」
「ふむ・・・。
なら、丁度いいことに。
君と同い年の男の子がいるんだ。
彼も大学受験を終えてから組織に入るつもりだよ。その際に君も引き入れるとしよう。」
「わかりました。それでお願いします。」
ジャックさんとの約束はそれで決まった。
ジャックさんとの話が終わった後、川辺さんが受け入れてくれたお礼として家にあげてくれた。
そこでお茶と、美味しいプリンをご馳走になった。
心とお腹が満たされたあとで、私は改めて決意表明をした。
「川辺さん。私、組織に入ります。」
「その心は?」
「あなたが私に魔法を授けてくれたから
今の私がいます。
一生かけても返しきれないんじゃないかってくらいの恩を感じたので・・・。」
「美月ちゃん・・・。」
川辺さんが不意に席を立った。
そして、私のところまで歩いて跪いて
手を取った。
「私の首を繋いでくれて本当にありがとう。約束するよ。
君が大人になるまで私が君を守る。」
そこから記憶が飛んで拓真が入隊したばかりの時を思い出した。
個室のある居酒屋に川辺さんと共に晩御飯を食べた。
私は話したいことを話すために酒を飲んだ。
「それで3杯目だよね?
1時間以内でそれは急ピッチすぎるよ」
「ら・・・。
大丈夫です。」
「ほら、一瞬呂律が怪しくなった。
水飲みな。」
師匠はそう言いながら水の入ったグラスを渡してくる。
相変わらず決めたら有無を言わさない人だ。根負けして一口飲んだ。
「師匠、折り入って相談があります。」
川辺さんは自分の言いたいことをわかっていそうだったけど敢えて質問した。
「なんだい?」
私は座ったまま川辺さんに向かって頭を下げた。
「私の比護を解除して、拓真の・・・。
弟を守ってください。」
川辺さんは予測していたようで、
言葉どころか驚くリアクションもなく黙ったままだった。
全部聞いてくれるならばこの際言いたいことを全部言ってしまおうと続ける。
「組織で最強と言われているあなたなら安心して弟のことを任せられます。」
師匠はクスクス笑いながらも答えた。
「私が最強かどうかはわからないよ。
まあ、やるからには常にてっぺん目指してるけどね」
「あなたと出会う前、私がスランプから抜けきれてない時に当たっちゃったから仲はギクシャクしてるけど、大事な弟なんです。」
「素直にそれを言えばいいのに」
「だって、それは・・・。
今更姉貴ヅラしたいって思うかもしれないじゃないですか!
それに、私はもう20歳になりましたし、今年であなたの保護は切れるはずです。
私はもう子供じゃない。」
「"もう子供じゃない"って言葉が出る時点で君は"まだ子供"だよ?」
師匠はまるで年下の恋人にでも言うかのように妙に色っぽく言った。
妙な説得力と正論に何も言えなくなる。
川辺さんはそのまま続けた。
「そりゃあもちろん、許すかどうかは拓真くん次第だよ?でもさ、100%の真意を曝け出して向き合うのか、自分に都合よく真意を調整して向き合わせるのかで結果はだいぶ違うんじゃないかな?
それに、今更だと思うけど。
私、君のこと言うてそんなに多く守ってないじゃん。
君は十分一人で立つ力がある。
どの道を進むかは君次第だよ。
まあ、君はもう答えを持ってるだろうね。
それを晒すのが怖いだけ。」
「師匠・・・」
本当、この人は私のことならなんでもお見通しだ。でも、師匠が思ったよりも対等に見てくれて心が洗われた気がした。
この人に答えなきゃ。
「とりあえず、拓真くんのことは守ることにするよ。頭下げて頼まれたし、
普通に興味ある新入りだからね。」
「ありがとうございます!」
川辺さんはにっこり笑い返した。
「とりあえず、私としても・・・。
近いうちに拓真と向き合います。
ですが、今日は飲まずにはいられないので飲めるだけ飲みます」
川辺さんは苦笑いした。
「わかった。なら、付き合うよ。」
結局、合計6杯飲んだ。
当たり前だが二日酔いになった。
不意に、部屋にノックの音が響いた。
「んん・・・」
呻いて目を擦る。生理的な涙が流れてきたので拭う。
物思いに耽っていたら
いつの間にか眠っていたようだ。
川辺さんと初めて会った時のことを今更思い出すなんてね・・・。
「美月さん、いますか?」
扉ごしに笹倉ちゃんの声が聞こえる。
そうだ・・・。
彼女のことを聞いて、こうして部屋に籠るに至った経緯をどんどん思い出してくる。
そろそろ潮時だろうな。
向き合わなきゃ。この気持ちに。
「ちょっと待ってね、笹倉ちゃん!」
ドアの向こうに返事を返し、爆速で最低限部屋を整える。
これなら他人をあげても問題ない感じになったので、扉越しの笹倉ちゃんに声をかけた。
「お待たせ。入っていいよ。」
「失礼します。」
笹倉ちゃんはぺこりと一礼して部屋にあがってきた。マナーがしっかりしてる良い子だな。こんな子が拓真の身近にいるなんて、アイツは幸せ者だろうに。
「狭いけど楽にして」
と椅子を勧めると、笹倉ちゃんはおずおずと座った。
「美月さん、その・・・。」
「拓真から話聞いたってこと?」
「はい・・・・。」
「そっか。巻き込んじゃってごめんね。」
「いえ・・・。」
「単刀直入に言うと、私、弟とギクシャクしてるんだ。中3くらいからスランプに入って、それが抜けなくて・・・。
それで、器用で勉強も部活もこなす弟が羨ましく見えて当たってしまった。
あいつ、ただ一緒にゲームして遊びたいって誘っただけなのに酷いこと言っちゃったんだ・・・。
あの時のあいつさ、一緒にゲームしよう!って声かけてきたんだ。
でも、その時笑ってたのが妙に腹が立って拒否った。そしたらアイツがまた遊ぼうって声かけてきて。
そこからフラストレーションが溜まってさ・・・。
『うっさいな!
遊びたくないって言ってんだろ!!
ゲームでボコボコにして楽しむ気でしょ?
うんざりなんだよ!
リアルでもゲームでも私を貶す気?
こんな事なら、一人っ子の方がよかった!』」」
「今更だけどさ、改めて取り返しのつかないことを言ってしまったと思うよ。」
「美月さん・・・。」
「スレイヤーとしては新たな戦力が増えるのは賛成だし、アイツがいてもいいと思う。
ただ・・・。」
「ただ、何ですか?」
「例えるのは失礼かもだけどさ。
戦時中に兵士を見送る家族ってこんな気持ちだったのかな?と思うんだよね。
家族に早めに死んで欲しいわけないじゃん。しかも、年下だよ?」
笹倉ちゃんは目を丸くしつつも黙って話を聞く姿勢のままだった。そのまま続ける。
「正直、スレイヤーとしての才能は
アイツの方があると思ってるよ。
私をどんどん追い越して行って構わない。
でも、正直言ってあの子に才能があるかどうかはどうでもいい。
ただ私はあの子が危険な目に遭うのは許せないだけ。」
「美月さん・・・」
「アイツが辞めるなら別に嫌われてもいいと思ってる。
とは言え組織に入ったのはショックだったから・・・。お酒飲んで川辺さんに愚痴ったんだ。それがこの前笹倉ちゃん助けた時に二日酔い抜けてなかったけど・・・」
「それがこの前の任務だったんですね」
「本当、あの子の言うとおりだよ。
アイツには別に姉貴ヅラしたいわけじゃない。
けど、スレイヤーなんて明らかに危険なことからは遠ざけたいよ。
でもあの子が自分で選んだ道だから止められないし、上の決定には逆らえない。
それに、どうせ私の言葉はあの子には届かない。」
笹倉ちゃんは何も言えないようだった。
それはそうだ。この子もまだ16歳。
本来なら子供をこうして相談相手にするべきじゃないのに。
でも、ごめん。今は話を全部聞いて欲しかった。
ここの空気を重くしたのは自分だけど、
息が詰まりそうでリフレッシュで息を吐く。すると、私の誕生石のペンダントから声が聞こえた。
「魔物の出現を確認。
スレイヤーはただちに急行せよ」
「わかりました、すぐ向かいます。」
笹倉ちゃんも声をかけてきた。
「私も行きます。」
少しうとうとしていたら
誕生石のブレスレットから
魔物出現のアナウンスと姉ちゃんの声が聞こえた。
「わかりました、すぐ向かいます。」
姉ちゃんの声で意識が完全に目覚めた。
「行くのね。なら、魔法をかけるわ。」
クリスティーヌさんが殴られたところに
魔法をかけた。
湿布で痛みはそこそこ取れていたけど、
おかげさまでいつも通りの感覚に戻った。
「いってきます」
拓真と美月はエントランスで落ち合った。
美月はどんな顔をして声をかければいいかわからなかったので車に向かいながら「行くよ」とだけ告げた。
運転席には裏方であるメンターが座っており、
拓真と美月、笹倉が後部座席に乗り込むと、車を発進させた。
美月は誕生石のペンダントに話しかけた。
「誰が現場にいますか?」
「俺や。最上と」
「分状だよ、美月ちゃん!」
2人の男性の声が返ってきた。
「わかりました」
「今そっちがいる位置からやともうちょいで会えるな」
と最上の声が聞こえた。
程なくして走っていた車が止まった。
美月は笹倉に「笹倉ちゃんは中にいて」
と声をかけつつためらいなく降りた。
拓真もそれに続いて降りる。
程なくして2人の前を風が突っ切った。
美月は思わずサーベルに手をかけるがサーベルに手をかけたままそれを目で追うことしかできなかった。
拓真も拳をにぎって身構え、風が吹き抜いていくことを見守ることしかできなかったが、風の様子を目で追えた。
突風を纏った白いチーターが美月の動体視力では追えないほどの速さで駆け抜けていったのだ。
その後から男性が2人走ってきた。
1人は槍を持った30代半ばの男性だ。
もう1人は腰に日本刀を差した20代半ばの男性だ。
「最上さん、分状さん!」
と美月はそれぞれ槍を持った男と日本刀を差した男に声をかけた。
「おう・・・。
勘弁してくれや、あいつ・・・。
肺が悲鳴あげてんねん」
槍を持った男が肩で息をしながらうめき声混じりに関西弁の訛りで愚痴った。
誕生石から聞こえた声的にこの男が最上だと拓真は結びつけた。
だとしたら日本刀の男が分状か。と拓真は分状と姉のやり取りを見守った。
分状も呼吸を整えながら失態を詫びた。
「さ、さっき駆け抜けて行った風が白いチーターの魔物だよ。ほんとごめん・・・。取り逃した」
美月はショックを受けた後に
2人に対して声を荒げた。
「しっかりしてくださいよ!
2人共、5年以上この業界で生きてるから任せたのに!」
呼吸の落ち着いてきた最上が言い返した。
「うっさいわ!めっちゃ速くて目で追えんかったんや!」
分状も最上に続いて口を開いた。
「確かに見失ったけど、とりあえずの策はあるんだよ!近くの空き家に追い込むつもりだ。」
「なるほど・・・。
なら、そうしましょう!」
拓真と美月、姉弟と最上と分状の4名でチーターの後を追いかけた。
笹倉の乗った自動車も後ろを追うように発進した。
追いかけながら、拓真は最上に話しかけた。
「姉の方が最上さんより階級上なんですか?」
最上は穏やかに口角を上げて返した。
「イーブンてとこやな。
俺の階級、ナイトは必ず弟子育てなあかんけど
お姉ちゃんの階級の準ナイトは弟子育てなくてええねん。その代わりこうして魔物出たらソロプレイせな
あかんけどな。」
「そうだったんですね・・・」
分状が割って入った。
「俺は君より1個上のアプリンティスって言うんだ。
こうしてナイトとかマスターの下で力がつくまで学ぶってわけ」
「なるほど・・・。
教えてくれてありがとうございます」
拓真は走りながら会釈をした。
最上と分状ははにかんで笑った。
「礼儀正しい子やな」
と最上が満足気に言った。
美月が走りながら3人に「いつまで話しているんですか?」
と声をかけた。
最上が「ボーイズトークや。もうちょいで終わるて」
と返した。
分状が声を潜めながら半分怪訝に呟いた。
「美月ちゃん、今日は珍しく怒ってるな。
分状はイライラしてる姿なんて見せないのに」
その理由は今目の前にいる自分が一因だとは口が裂けても言えなかった。
空き家の中にチーターが入って行った。
美月は立ち止まり、「またかけ忘れないようにしなきゃ」
と呟きつつカーテンの魔法の呪文を唱えた。
「俺らも便乗するで」
と最上さん、分状さんが後に続いた。
拓真も大人たちを見習い、便乗した。
『彼のものから我と汝を覆い守り、
秘め事を包み隠したまえ』
透明な膜が空き家を覆った。
美月はそれを見届けると、サーベルに利き手を置きながら最上と分状に声をかけた。
「ここからは私と・・・。
拓真で行きます。
何かあったら連絡するのでお2人はここで待機お願いしてもいいですか?」
「トレーニー連れてくんか?」
と最上が反論したが
美月は「弟なので」
と淡々と返した。
最上は言葉の割には簡単に切り捨てられない感情を察して渋々承知した。
「い、一応私も行きます・・・!」
笹倉が手を挙げた。
「わかった。回復を頼んだよ」
と美月は笹倉に対して穏やかに笑いかけた。
美月はペンダントを押して戦闘服に変身した。
拓真もそれにあやかり、初めての変身を試みる。
やっと届いた自分のためにカスタムされた服だ。
「変身!」
シンプルイズベストな合言葉を唱えて
ブレスレットの誕生石を押す。
黒を基調とした大きなポケットのついた戦闘服に、
青いネックウォーマー、そして腰にはシルバーのバレットポーチが付いていた。
「すごい」
と笹倉が同級生を見て改めて声を上げた。
美月も弟の姿を一瞥した後に
「割と似合ってるじゃん」
とだけ声をかけた。
準備を終えたことを確認すると、
改めて美月、拓真、笹倉の3人で空き家の敷地内の庭に入っていった。
中腹まで歩くと、美月は一歩引いてサーベルを構えた。
「いるね」
拓真も魔法で銃剣を手の中に出現させて頷いた。
空き家の中から黒い双眸がこちらの様子を伺っている。
互いにどちらが先手を切るか見切ろうとしている。
双眸がまずは美月を捉える。美月は睨み返した。
そして、拓真。
拓真は銃剣の先を構えて睨み返した。
その時、チーターが先手を取った。
拓真は動きを見切って銃剣で応戦しようとした。
チーターの突進が見える。
しかし、
「わっ?!」
急に首の後ろが締まる感覚がして世界が
横に一回転した。
びっくりしたものの、美月の服の匂いがしたから、姉が俺の首根っこを掴んで横に回したのだと推測した。
さっきまでいたところを風が根こそぎえぐる音がする。
もし間に合わなかったらあの突風が直撃してただろう。全身が怖気立った。
「風とチーターか・・・。
最悪の組み合わせなんだけど。
私が見てきたヤツの中で一番速いね。」
と美月はぼやきつつもサーベルを抜いて応戦した。
サーベルとチーターの鉤爪がぶつかり、片方は爪の癖に金属同士が擦れ合って拮抗する音がした。
「うーん・・・。
コイツの魔物のレベルは・・・。
この前の犬が4だったし、コイツは5ってとこかな?」
美月は体勢を整えながら呟いた。
「強さはこの前の犬と変わんないの?」
と拓真は聞き返した。
「体感としてはね。
ただ・・・めちゃ速い」
と悔しそうに美月は答えた。
「だろうね」
と拓真は呟いた。そこからの勝負は拮抗した。
美月はチーターにはやや優勢に立ち回るものの、
チーターが決め手や致命傷を避けて避けまくるので
当たれば強いと言った形だった。
対する拓真はバスケで培った動体視力でチーターの動きは終えているものの、狙撃は避けられるわ、
銃剣は押し返されるわと経験値の浅さが課題だった。
少し息の切れた拓真の隙をつき、チーターが突風を纏って突進してきた。
「バカ!危ない!」
姉ちゃんがこっちに怒鳴ったかと思うと、俺は勢いよく突き飛ばされた。
その瞬間、強い風が吹いて姉ちゃんが吹っ飛ばされる。
「わああああっ?!」
姉の驚愕した悲鳴が徐々に遠ざかって聞こえる。
美月は吹っ飛び、空き家の奥まで貫通した。
その衝撃で空き家が崩れていく。
「姉ちゃん!!」
瓦礫の崩落が止んだ後、美月は声を絞り出した。
「なっ・・・なんとか無事・・・
けど・・・出れない。
くそっ、足が挟まった!」
拓真は咄嗟に駆け寄り、動かせそうな瓦礫をどかし始めた。
瓦礫をどかしていくと、改めて美月の状態の詳細が顕になった。
服は瓦礫の破片と埃で汚れており、出血はしてないものの、足が挟まっていた。
そして頭から血を流して半分虚な瞳をしている。
利き手の近くにはサーベルがころりと転がっていた。
「過ちに気づいてから、
あの日のことを後悔しない日は無かった。
いつだってお前との日々は思い出してた。」
美月は力なく過去の過ちを悔いる言葉を口にした。
「ごめんね、どうしようもない姉で・・・。
でも、まあ・・・。
どうしようもない奴がどうなっても
どうでもいいよね・・・。」
その言葉を言い終わるか終わらないか辺りで
美月の頭上目掛けて瓦礫が降ってきた。
美月は早く終われと言わんばかりに無抵抗で目を閉じて受け入れようとしている様子だった。
「やばっ!」
拓真は銃剣を構えて受け流そうとした。
その途端、
「プロテクト!!」
拓真でも美月でもない声が響いた。
美月の頭上に落ちようとした瓦礫が
ゆるゆると弾かれかけていた。
「これは・・・。
中度の防御魔法・・・!」
美月が目を丸くした。
拓真は笹倉の声がした方を見た。
美月の頭上に降り掛からんとする瓦礫に向かって手を伸ばしている笹倉が見えた。
「死なせませんよ、美月さん!」
「笹倉ちゃん・・・!?」
「そんなに自分を卑下しないでください。
拓真くんと向き合おうとしてるんでしょ?
ごめんなさいって言うの、怖いかもしれないけど
このまま死んだら一生言えなくなりますよ!」
笹倉が檄を飛ばす。
美月は「このまま死んだら・・・」
と笹倉の言葉を反芻していた。
「そう、だね・・・。
ごめんなさい。この6文字、言えばいいだけだもんね・・・!!」
美月は両腕に力を込めて自分でも抜け出そうと両の掌で地面を押して這い出ようとした。
笹倉も両手を前に突き出して防御の魔法で瓦礫を押し流そうとする。
「どかすのは今しかないか・・・!」
拓真はそう判断し、銃剣を瓦礫に突き刺して
押し返した。
瓦礫が魔法と腕力により、美月の頭上よりも斜め左後方に押し返された。
拓真は銃剣を引き抜こうとしたが、思った以上に深く突き刺してしまったようでなかなか引き抜けなかった。仕方ないので拓真は笹倉と協力し、素手で美月を
瓦礫の下から引き上げた。
美月は足に意識を集中させた。
足に魔力が集まり、傷跡が綺麗になっていく。
「再生魔法・・・。
治療なら私も手伝います!」
笹倉が姉に駆け寄ったのを見た拓真は安心した。
それと同時にチーターが降り立ってこちらにジリジリ歩み寄ってくるのが見えた。
「確かにこの中で一番強いのは姉だろうな・・・。
でも、今は休憩中だ。それまで前座で相手してやるよ。」
拓真は両の拳を顔の前で構えた。
チーターが飛びかかってくる。拓真はその場でギリギリチーターの動きを引きつけた後に横跳びで避けた。
「よっ・・・!」
そこから更に右足を踏み込んで切り返し、地面を踏んで飛び込んだ。
あんまり手は使いたくないけど、状況が状況なので贅沢は言ってられない。
ジャンプの勢いを活かしてそのまま踏み込んでストレートパンチを放った。
「何、今の独特な動き?!」
「川辺さんが取り入れてくれたんだ。
『君、スタイル良いしジャンプ力あるからね』って。
空手ベースの格闘技に、ジャンプを混ぜた
俺オリジナルのものだよ。
とりあえず名付けるなら・・・。
飛空拳。」
そこから拓真はチーターと互角の勝負を繰り広げた。
鉤爪をギリギリまで引きつけてチーターとは反対側にスピンして避け、突進は上空へのジャンプや横跳びで回避して距離を取った。
チーターも拓真もスタミナの消費がこたえているのか、息を整えた拮抗状態が始まった。
美月の足は再生魔法と笹倉の回復魔法で完治しており、美月は立ち上がって転がったサーベルについた瓦礫の破片を拭って納刀した。
笹倉も美月のそばにいて拓真の勝負を見守った。
拓真は息を整えながら川辺から受けたスパーリングの内容を思い出していた。
パンチとキック、一通りの基礎の動きを教えた後、
川辺はしばらく考え込みつつ声をかけた。
「決め手になる技を決めようか。
怪我を極力避けたいなら、体勢が斜めかつちゃんと腰が入れば威力の違い回し蹴り系のものにしよう。
そうだな。深掘りしたいからしばらくサンドバッグ相手にスパーリングしてくれる?」
「わかりました」
拓真は言われた通りサンドバッグにパンチとキックを放っていた。
しばらくして川辺が閃いたのか、ぱあっと表情が明るくなった。
「君の決め手にはこれが合うんじゃないかなと思ったよ」
過去を思い出しながらも拓真はコンディションとボルテージが爆発的に上がった。
もういける。そう判断してチーター目掛けて駆け出した。
また川辺の言葉が脳裏に思い浮かんできた。
「空手の技じゃないんだけどね、回転を生かした蹴り技がある」
そこからは川辺がお手本として見せてくれた技を思い出した。
もちろんそれからある程度の形になるまで練習はしたが、川辺のように滑らかかつパワフルに。
記憶の中の川辺のフォームと、自分がこれから放つフォームを一体化させる。
「改めて、君に授けたい蹴り技は・・・ローリングソバットだ。」
拓真のローリングソバットがチーターの腹に突き刺さった。
チーターは悲鳴をあげて後ずさった。
だが、前足で地面を叩いた後に拓真に向き直り、
牙を剥き出しにして威嚇した。
その途端、
『バレット・ギロチン!』
美月の技名を叫ぶ声と共に、チーターの首が斜めに切断された。
チーターは何が起きたのかわからないと
言ったように首が落ちた後もしばらく鮮血を撒き散らしながら4本足で立っていたものの、やがて、地面に横薙ぎに倒れた。
「よっしゃ、倒した・・・!」
拓真は技を成功させた安堵から緊張の糸が切れて倒れた。
拓真はほんのりと夢を見た。
チーターを倒す際に現場に向かって走っていた時、
フードトラックが目に入った。
焼きたてのソーセージがパンに挟まり、
出来立てのホットドッグが客に渡されるのを見て
無性に心底羨ましいと思った。
気がついたら目の前をホットドッグが埋め尽くしていた。目の前だけじゃない。足下にもホットドッグが転がっていた。
「ホットドッグありすぎ・・・」
気がついたらそんな言葉を口にしていた。
いや、そんなどころじゃない。
チーターは?!
慌てて目を開けて起きた。
気がついたら組織の病室のベッドに寝かされていたみたいだった。
改めて自身の様子を確認する。
怪我はない。
そこからありありと任務の記憶を思い出してきた。
空き家に着く前に見かけたフードトラック。
チーターに吹っ飛ばされた姉。
ローリングソバットを決めるためにチーターに突っ込んでいった自分。
「拓真くん・・・!」
女性の嬉々とした声が自分を呼んだので拓真は振り返った。
「よかった、目覚めて!」
笹倉が拓真に駆け寄り、回復を喜んだ。
「改めて、痛いところはない?」
「大丈夫だよ」
「すぐに気絶しちゃったからびっくりしたんだよ?」
「ごめん、心配かけて。
たぶんあの時は感情が渋滞してたんだと思う。」
「そっか・・・。
拓真くん、起きましたよ美月さん?」
そう言って笹倉は病室の出入り口に声をかけた。
美月がおずおずと顔の左半分をドアから出した。
手には細長い包みを2つ持っている。
包みからは焼けた肉の肉汁と香ばしい匂い、そしてほんのりとパンに練り込まれたバターの香りがした。
まさか・・・。
「ホットドッグ?」
美月ははにかみながら答えた。
「空き家に入る前に羨ましそうに見てたからね・・・。
買ってきたよ。」
「ども」
手を伸ばして1つ受け取る。
「一緒に食べていい?」
美月は初対面の他人に会ったようにおずおずと声をかけた。
「うん」
美月は拓真の足に当たらない位置に腰掛けてホットドッグを食べ始めた。
拓真も姉に倣い包みを解いて食べ始めた。
パンのバターの香りとほのかにこんがりと焼けた小麦の香りが香った。
それがソーセージの肉汁の混ざった香りに加えてソースであるケチャップのトマトの甘みとマスタードのツンとした辛さが鼻を突いた。
唾を飲み込み、一口食べた。
ソースの量とパンの柔らかさ、ソーセージの焼き加減がどれもバランスが良かった。
拓真は全部食べ切ることに集中した。
美月は食べながら「意外と美味しいな、これ」と呟いた。
その後は食べ終わるまで姉弟は無言だった。
食べ終わった後、美月の方からポツリと口を開いた。
「瓦礫から引っ張り出してくれた時、父さんみたいな力強さを感じたよ・・・。
大きくなったね」
「もう高校生だよ。」
「そうだよね・・・」
美月は俯きつつも次にどんな言葉を紡ごうかしばらく黙っていた。
拓真はゴミを捨てたり、ベッドで緩い体勢を取りつつも耳だけは傾けていた。
そして、美月がとうとう口を開いた。
「拓真。改めて・・・。
5年前は本当にごめんなさい。
謝っても許されることじゃないのは分かってるけど、もうあんな同じことは二度としないと誓うよ。」
拓真は姉の言葉を最後まで聞いた後に今までの思い出に想いを馳せていた。
姉と一緒に遊んだこと。
同じ通学先の小学校に行きと帰りは常に一瞬だったこと。
5年前のあの日、拒絶されて思考が停止したこと。
「・・・わかったよ。」
とりあえず受容の言葉を拓真は返した。
「わかったけど、昔のように戻れるとは思わない。
だから、これからまた1から始めていくしかないんじゃない?」
それを聞いた美月は憑き物が落ちた顔をした。直後に無罪を勝ち取った被告人のような安らかな表情を浮かべながらも
目尻に歓喜の涙を浮かべた。
「ありがとう・・・。
本当にありがとう!!」
拓真は美月が涙を浮かべるのは妥当だとは思ってるものの、思ったよりも涙を流すので
「そこまで泣くかよ・・・」
と妙に気恥ずかしくなって返した。
姉弟の様子を笹倉は隅で見守っていた。
「雨降って地固まったかな・・・。
よかったね、拓真くん。」
笹倉は二人に伝える気はないが、
確かな家族の和解の祝福を一人ごちった。
十分に歓喜の涙を流し終えた美月は
今度は大きめのタブレットを持って
弟の元に再び足を運んだ。
「それで何すんの?」
「アンタの今回の活躍を褒めたい人がいるみたいで。」
「誰?川辺さん?」
「川辺さんはこんなの使わないで
普通に褒めるじゃん。」
「確かに・・・」
「この組織のトップだよ。」
そう言って美月はタブレットの電源を入れた。
画面に革のオフィスチェアに腰掛けた
茶髪に琥珀色の目をした壮年の男性が映る。
ぱっと見は歳の頃は40代半ばの欧米系の白人男性だ。
その人は表情を崩すと、俳優みたいに
低いものの、滑舌の良い通る声で流暢な日本語で話し始めた。
「美月の姿が見えないけれど、たぶん、私が見えるようにタブレットを持ってくれてるのかな?」
「はい。お久しぶりです、長官。」
「ありがとう。久しぶりだね。
元気そうならよかった。」
長官と呼ばれたその人は緩やかに口角を上げた後、拓真に向き直った。
「置いてきぼりにしてすまないね。
まずはこちらの自己紹介といこう。
私はジャック・クラウス。
スレイヤー組織の表の顔である株式会社k Knight's TaleのCEOで、裏のこのスレイヤー組織では総司令官だ。
要は、裏でも表でも君のトップの上司と思ってくれ。
総司令官だと長いからね、長官と呼んで構わないよ。」
「わかりました。」
長官は一息ついた後に少し茶目っけある笑みを浮かべて話し始めた。
「さて、阿久津拓真トレーニー。
君の活躍は個人的に注目させてもらってるよ。
初陣での討伐補佐、そして今回の討伐補佐。現場での実力は申し分無いと思うんだ。」
美月はまさかと思い、息を飲んだ。
「そこでだ。拓真くん、君が良ければ
もうトレーニーを卒業してもいいと思うんだ。
君の力は既にアプリンティス相当としてトレーニーの卒業試験は免除ということでね。」
「本気ですか、長官?!」
美月が思わず声をあげた。
ジャックは続けた。
「魔物が出ない時は訓練の日々なんだ。
トレーニー期間と変わるまい。
それに、君一人で出ろってわけじゃないよ。君の姉さんは準ナイトだから一人で出撃するがね、アプリンティスはチームで動くんだ。ひとりじゃないよ。」
カリスマ性がある人とはこんな人なのかなと拓真は妙に納得した。
トップなのに腰が低くて、でも言うことに説得力があって。この人と関われるとなんか安心して。
とは言え普段の生活が心配なので拓真は質問した。
「魔物が出ない時は学校のことをがんばりますが、それでもいいですか?」
「もちろんだとも。魔物が出ていない時は青春を謳歌すると良い。
ちゃんと卒業できるように勉学にも励みたまえ。」
「なら、卒業試験はパスしてもらえるみたいですし、お願いします。」
「1ヶ月と1週間。
君は組織で2番目に早いトレーニー卒業生だな。」
「組織最速は誰なんですか?」
「今はマスターの宍戸一くんだ。」
「マジですか・・・」
ジャックは拓真の言葉がそれ以上紡がれないとわかると、改めて向き直り、口を開いた。
「本日、5月28日から1週間後の
6月7日に阿久津 拓真をアプリンティスに任命する。
ああ、あとは追伸として。
近々私の息子が来日して顔を出す。
仲良くしてやってくれ。」
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