第27話 【蘇生】の勇者はブチギレる
「……来ましたね」
空を埋め尽くすほどの戦闘機、大地を覆うほどの戦車……。
それら全てにイクシオン王国の国章が刻まれている。
その光景をモニタールームから見ていたラビュリンさんはニヤニヤと不敵に笑った。
「ふーはっはっはっ!! なーに、予想はしていたことさ!!」
「大丈夫でしょうか?」
「問題ない!! ヤマダ君とドワーフたちの協力を得て完成させた対空砲をハリネズミの如く塔に設置したのだからね!!」
そう。
この一ヶ月、イクシオン王国の攻撃を予測して俺たちも準備をしていた。
その準備というのが無数の対空砲だ。
空から敵が近づいてくると自動で照準を合わせ、砲弾を発射するとのこと。
そして、それらはラビュリンさんのダンジョンの一部なのだ。
要はトラップ扱いである。
即ちイクシオン王国の兵器では破壊ができない、勝利は揺るがない。そう思っていたが……。
「……王よ、そう簡単には行かないようです」
「どういうことです?」
「連中の兵器から、邪神の気配を感じます」
「ええと、つまり?」
「女神様の加護によって不壊のはずのこの塔にも、あれら兵器の攻撃は通用するかと」
俺はラビュリンさんの方を見た。
「……とのことですけど、大丈夫でしょうか?」
「ふ、ふーはっはっはっはっ!! 何事も楽には行かないということだね!! ――全対空砲発射!! 戦える勇者は地上の戦車を蹴散らせ!!」
マイクを通して勇者たちに伝令が下る。
塔の各所から空に向けて一斉に弾丸が放たれ、迫る戦闘機を迎え撃つ。
幸いというべきか、邪神の気配をまとっている戦闘機にもこちらの対空砲は十分な効果を発揮し、撃墜した。
「ん?」
「どうしたのだね、エルオット君?」
「いえ、今、戦闘機そのものから血のような赤いものが……」
「操縦していたパイロットの血ではないのかね?」
「っ、そういうことですか」
何かに気付いた様子のゾナさんが、不愉快そうに顔をしかめた。
「王よ、あれらは全て人です。おそらくは地上を駆ける戦車も」
「ん? そりゃあ、戦闘機も戦車も人が乗って操縦するものですし……」
「そうではありません。戦闘機も戦車も、材料に人間が使われています」
一瞬、脳が理解することを拒否した。
戦闘機や戦車そのものの材料に人間が使われている? パイロットではなく?
「おそらくは邪神のイクシオン王国の住人を使って製造したのでしょう。道理で全ての兵器から邪神の気配を感じるわけです」
「それは、そんなことができるのか? というか、そんなことをしたらイクシオン王国も国として成り立たないのでは?」
「邪神が干渉したのでしょう。奴は快楽主義者です。その時に面白いと思ったことを実行します」
「……イクシオン王国とその民に恨みはありますが、人間すらやめさせられるのは可哀想ですね」
本当に気の毒だ。
彼らもまた邪神にいいように使われている道具だと思うと、同情してしまう。
それを鼻で笑ったのはラビュリンさんだ。
「はっ、同情など必要ないと思うがね!! むしろ君の復讐が叶うじゃないか!! 要はあれら兵器を全て撃ち落としてしまえば王国民を皆殺しにしたことになるのだからね!!」
「同感です、王よ。これはイクシオン王国との総力戦、最後の戦いです」
……それもそうだな。
「イムルさん、地上の方はどうですか?」
「勇者たちが善戦してますぞ!! 特にシレスタ氏が以前の恨みを晴らすように戦車を蹴散らしておりますな!!」
地上を映したモニターを見ると、そこには戦車を切り刻むシレスタの姿があった。
この一ヶ月、シレスタは見ているこっちが心配になるほどほぼ飲まず食わずで魔物狩りに集中していた。
その甲斐もあってか、今や彼女の【斬撃】は威力が上がり、効果範囲も広くなっている。
戦車の砲弾が直撃しても少し唸る程度で、大したダメージにはなっていない。
あれなら地上は大丈夫だろう。
『ヤマダ、レッドライン!! 行きまーす!!』
その直後、モニタールームのスピーカーからヤマダ君の声が響いてきた。
どうやら勝手に出撃したらしい。
「ヤマダ君の兵器は、何というか凄いですね。量産もしたみたいですし」
「奈落は鉱石資源が豊富だったようですからな。ドワーフたちがノリノリで作った自分たち用の人型機動兵器で出撃してますぞ」
「勝手に戦いに出撃されるのは困るんですけど」
ヤマダ君の出撃を機に、次々と人型の巨大兵器が飛び出していく。
ドワーフたちが作り、ドワーフたちが駆るヤマダ君の人型機動兵器『レッドライン』の廉価版『ブルーライン』である。
白い装甲に青い線が走っているデザインは、何というか、とにかくカッコイイ。
武装は右手にガトリングガン、左手にパイルバンカーなるものを装備し、背中から伸びるもう二本の腕に盾を構えている。
両足にはロックオンした敵を自動で追尾するミサイルまで備えているらしい。
ブースターによる瞬間的な飛行も可能なようで、対空砲による迎撃が届かない場所に赴いて敵戦闘機を撃墜していた。
この調子で全ての戦闘機を撃墜、戦車を破壊すれば勝てるはず。
と、その時だった。
『こちら、ロコロ!! 戦車を破壊して回ってたら仮面の少女と遭遇した!!』
ロコロさんからモニタールームに連絡が入る。
俺は通信用のマイクを手に取り、ロコロさんに声をかける。
「っ、ロコロさん!! 無理に相手はしないで退却してください!!」
『いいや、ここで奴を仕留める!! 下手に放置したら防衛網を崩されるかもしれない!!』
「一人では無茶です!!」
『大丈夫だよ、そのために今日まで魔物を倒して強くなったんだから』
ブツッ、とロコロさんとの通信が切れた。
援軍を向かわせようにも、下手な勇者を向かわせてはロコロさんの足を引っ張るだけだろう。
ここはロコロさんを信じるしかない。
「んおっ!? エルオット氏、なんかやばいのが来ましたぞ!!」
「ん? な、なんじゃありゃ!?」
ふとイムルさんが指差したモニターを見ると、そこには信じられないものが映っていた。
それは、宙に浮いた船だ。
戦闘機よりも遥かに大きく、戦車の砲よりも数倍は大きな砲を、無数に搭載していた。
あ、あれは……。
「あ、あれは、ヤマダ氏が友人に話したという空中戦艦ですぞ!!」
「ヤマダ君、君という奴は!! どうしてあんなものをペラペラ喋るかなあ!! それを作る王国も王国だけどさあ!!」
「ヤマダ氏に文句を言ってる場合じゃないですぞ!! 敵の主砲、塔に向いてますぞ!!」
イムルさんが報告したのも束の間、空中戦艦の主砲が火を吹く。
空中戦艦から放たれた砲弾は、遅れてやってきた轟音と共に塔に風穴を空けた。
「まずい!! ヤマダ君!! ヤマダ君聞こえますか!!」
『ヒャッハァー!! 敵を蹂躙するのキモティイイイイイッ!!!!』
「おいこらヤマダァ!! 通信聞けやヤマダァ!! 一回ぶち殺すぞ!!」
「ふ、普段何があっても滅多に怒らないエルオット氏がブチギレですぞ!!」
っと、いかんいかん。
今は非常事態。俺が冷静さを欠いてどうするというのか。
「ヤマダ君!! 戦闘機と戦車の相手は他の勇者に任せてドワーフの皆さんと空中戦艦を撃墜してください!!」
『ヒャッハァー!!』
「話を聞けぇ!!」
最後の戦いは、まだ少し続く。
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あとがき
ワンポイント小話
ブルーライン
ドワーフたちが自分たち用に作った『レッドライン』の廉価版。メイン武装はガトリングガンとパイルバンカーで、背中に取り付けた二つの副腕に好みの武器や盾を装備できる。『レッドライン』よりも更にカスタマイズ性が高く、逆脚型やタンク型、四脚型、プロペラントタンク&ブースター型が存在する。実は最初に作った『ブルーライン』四機と『レッドライン』には隠された機能があり……。
ブチギレるってヤマダにかよ!! と思ったら★★★ください。
「量産機ってロマンあるよね」「山田ァ!!」「隠された機能が気になって夜しか眠れない」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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