第26話 【蘇生】の勇者は過去を知る
「はい、じゃあお風呂から上がったことですし、会議を始めます。今回は異世界からやってきた皆さんも一緒です」
「「「あーい」」」
勇者たちは相変わらず気の抜けた返事をした。
「今回の議題は――仮面の少女の倒し方です」
「ボスボス!!」
「はい、ハチさん」
「お腹空いた!!」
「食堂でご飯貰ってきていいですよ」
「あい!!」
開幕から躓いたが、お腹が空いてしまったなら仕方ない。
会議室から出ていくハチさんを見送り、残った勇者たちで話し合いを始める。
「ゾナさん、まずは敵について知っている限り教えてください。ゾナさん一人でどうにもならない以上、全員でかかるべきです」
「……はっ、承知しました」
ゾナさんは仮面の少女に負けて捕まっていたことが余程ショックだったらしい。
天使として有り得ない失態とか何とか。
さっきまで部屋の隅で三角座りしていたが、ようやく説得して洗いざらい吐いてくれる気になったらしい。
「あの仮面の少女の正体は――女神様の敵対者、邪神の眷属です」
女神様の敵対者、邪神の眷属。
思ったよりも壮大な言葉が出てきて、勇者たちはざわめいた。
「邪神?」
「神様ってことか?」
「そもそも女神様以外に神っていたのか」
「そういえば、ロコロが仮面の少女から『悪逆の竜』と似たような気配がすると言っていたな」
「もしかして『悪逆の竜』も邪神の眷属?」
その時、ある勇者が手を挙げてゾナさんに質問を投げかけた。
「質問。女神様と敵対してる邪神がいるのは分かったけど、なら女神様は何してんだ?」
「そ、それは……」
「そもそも女神様って実在するのか? オレ、一回も見たことないけど」
言われてみれば、俺も女神様を見たことも存在を感じたことも一度もない。
四千年前に地上から天界に帰ったと言われてはいるが……。
実際、女神様は存在するのだろうか。
「女神様は存在します。いえ、存在したと表現するのが正しいでしょうか」
「存在した? それって……」
「女神様は四千年前、お隠れになられました。邪神との戦いで負った怪我が原因です」
ゾナさんはとても言いにくそうに神代の真実を語りました。
その昔、地上では女神様と邪神が覇権を巡って争っていたそうです。
女神様は天使たちを、邪神は『悪逆の竜』を始めとした強大な眷属たちを率いて戦ったとか。
その結果、天使はほぼ全滅。
引き換えに邪神の眷属の大半を討ち滅ぼすも『悪逆の竜』だけ倒し切れず、邪神との戦いで致命傷を負った女神様が封印したとのこと。
ちなみに『悪逆の竜』は邪神の眷属の中でも中の下くらいの強さらしい。
勇者総出でようやく倒せた『悪逆の竜』が実はそこそこの強さの眷属とか信じられない。
それから女神様は邪神との戦いで負った傷が悪化して、そのまま亡くなったそうだ。
「ちょ、ちょっと待ってください。勇者は女神様から祝福を受けた存在です。その勇者が生まれてくる以上、女神様は今もどこかで生きているのでは?」
「勇者が生まれるのは女神様がお作りになった世界の機能の一つです。一度作った以上、余程のことがない限りその機能が消失することはありません」
……ふむ。
銃を作ったドワーフが亡くなっても作られた銃は存在し続ける、ということだろうか。
そうか、女神様はもう存在しないのか。
「……女神様ですら倒せなかった邪神が暗躍してるとか、何気にまずいのでは?」
「邪神はあまり自分が世界に干渉することをよしとしていません。ただ人類が戦い、滅び、再生し、また戦う光景を眺めるのが趣味のイカレ野郎です」
「たしかに、性格が悪いですね」
「仮面の少女を使って王の妨害をしているのも、戦いを長引かせるためやも知れません」
ゾナさんは続けて言った。
「元よりあの国は邪神の息がかかっていたのかも知れません」
「というと?」
「思想パンデミック女と王都に潜入していた際、人間たちから邪神の気配がしました。大昔に邪神と交わった者がいるのでしょう。それ故にアイラの【愛】が効きにくかったのかと」
そう言えば、アイラさんが「思うように愛の素晴らしさを広められなかった」とか何とか嘆いていたな。
と、その時だった。
バタンと勢いよく会議室の扉が開かれ、アイラさんが突入してきたのだ。
「いいえ!! あれは私の愛が足りなかったの!! でも次こそはあの国の人々に愛の素晴らしさを教えて――」
「おい、誰か口を塞げ!!」
「縄持ってこい!!」
「誰だよアイラを部屋の外に解き放った奴!!」
勇者たちが被害が出る前に一斉にアイラさんを取り押さえにかかる。
もう慣れた様子だ。
「あぁ、皆さんからの愛を感じます!! やはり愛は素晴らしい!! この素晴らしさを世界中の人々に知ってもらわねば……」
縛り上げられてもなおそこに愛を感じるのは、アイラさんの凄いところだと思う。
ゾナさんが咳払いして、話を続けた。
「と、とにかく。仮面の少女に対抗するには圧倒的に戦力が足りません」
「なら結局、やることは今までと同じですね。奈落の魔物を倒して『成長』しつつ、俺の【蘇生】で勇者たちを生き返らせ、協力を仰ぎましょう。……ゾナさん、もう一つだけいいですか?」
「なんでしょう、我が王」
「奈落に転がってる勇者の亡骸、やたら多いですよね?」
「それは……」
俺の投げかけた質問に、ゾナさんは言葉を詰まらせた。
「女神様はお亡くなりになる四千年前からずっと、勇者たちに邪神を倒してもらおうと画策していたのかも知れません」
「……ふむ?」
「この奈落は、無数に広がる並行世界と繋がっているのです」
「並行、世界?」
俺にはイマイチ理解できなかったが、ヤマダ君を始めとした異世界人組はすぐに分かったらしい。
「なるほどー!! 無数にある並行世界の『大穴』が全てこの世界に繋がっていて、そこに落とされた勇者たちが集まってるってことですね!!」
「戦力を一ヶ所に集めたかった、ということかしら」
「んー、あーし難しいこと分かんない」
「えっと、どういうこと?」
いや、理解しているのはヤマダ君とシズクイシさんの二人だけらしい。
タカナシさんとオトギリさんは首を傾げている。
「沢山の世界から奈落に勇者たちを集めた、という認識でいいんでしょうか?」
「概ねは。そして、王こそが邪神を討つ手がかりなのかと」
「……分かりました。どのみちヤマダ君を確保した以上、イクシオン王国には銃や戦車以上に強力な武器を作ることはできないでしょうし、仮面の少女やその影にいる邪神を倒すためにも皆で『成長』しましょう!!」
「「「おー!!」」」
勇者たちが疎らに返事をする。
まだまだ勇者たちはこの奈落に沢山眠っているのだ。
じっくり時間をかけて、戦力を整えていけば仮面の少女も邪神も恐れるに足らず。
……そう思った矢先。
「あっ。そのことですけど、イクシオン王国は普通に新兵器とか作ってくると思いますよ」
会議の場でそう発言したのは、先日までイクシオン王国で兵器開発に携わっていたヤマダ君だ。
え、どういうこと?
「王国にヤマダ君がいない以上、今より強力か兵器は作れないのでは……?」
「いやー、実は気の合う人が一人いたんですよ。その人にありったけの知識を話しちゃったもんで。アイツめちゃくちゃ頭がよくて、僕の作りたいものとかをすぐ設計図に書き起こしたりしちゃうんです」
「……」
「天才っていうんですかね? この前もジナンさんたちの魔導具製作技術を模倣してましたし。まあ、人型機動兵器は必要ないとか言われて喧嘩別れしちゃったんですけど」
「ま、まさか……」
「はい、あいつは普通にイクシオン王国人なので兵器開発に今も携わっているかと」
勇者たちが一斉に叫ぶ。
「「「「「もっと早く言えっ!!!!」」」」」
「てへぺろ」
三ヶ月後。
打倒仮面の少女を掲げて奈落の魔物を倒し、勇者たちの『成長』を図っていたところ、イクシオン王国軍が襲来した。
空を覆うような戦闘機や大地を埋め尽くすような戦車と共に。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイント小話
一方その頃、ハチは皆の分もご飯を持っていこうとして【料理】の勇者に心配されていた。
ハチがいい子!! と思ったら★★★ください。
「悪逆の竜が中の下なの怖すぎる」「女神死んでたんか!?」「やっぱり山田が戦犯」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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