第28話 【蘇生】の勇者は油断する





 どうにかヤマダ君を落ち着かせ、空中戦艦を撃墜するようお願いした。


 ヤマダ君は空中戦艦の相手をできることが嬉しかったのか、「ヒャッハァー!!」と奇声を上げながらドワーフを率いて突撃した。


 次の砲撃を受ける前に何とか撃墜してもらわねば塔がもたない。



「っ、空中戦艦の主砲に魔力が集束してますぞ!! また撃ってくるつもりですぞ!!」


「ほう!! 次の攻撃までの時間が短いな!!」


「感心してる場合ですか、ラビュリンさん!! このままじゃ塔が壊されますよ!!」


「どうせ塔の部分はダミーだ!! 多少は問題ない!! とはいえせっかく用意したダンジョンを壊されるのも癪なので――【竜】の勇者、出番が来たのだよ!!」



 ラビュリンさんが通信を繋げた先は【竜】の勇者、ドランさんだった。



『おお!! やっとワタシの出番なのだな!!』


「敵の放った砲弾を撃墜したまえ!! できないとは言わせないよ!!」


『りょーかいなのだ!! ワタシに任せておくのだ!!』



 そして、空中戦艦の主砲が火を吹いた。


 同時にドランさんが咆哮を上げ、全身からエネルギーを迸らせる。


 

『――竜化ああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!』



 ドランさんの小さな身体はみるみるうちに巨大化し、その身体から尻尾や翼、角が生え、肌を赤い鱗が覆った。


 その姿はまさに竜。


 竜と化したドランさんは真っ直ぐ飛来する砲弾に向けて大きく口を開け、炎の球を撃ち出した。



『ドラゴンブレス!!』



 膨大な熱量は砲弾を瞬時に溶解させ、無力化してしまった。


 よし、これなら空中戦艦の砲撃を防げる!!


 俺は一旦胸を撫で下ろし、再びヤマダ君率いる人型機動兵器部隊の様子を窺う。



『あーもう!! パイルバンカーですらダメージが通らない!!』


『装甲が分厚いんじゃ!! しかも副砲と対空砲による弾幕が分厚くて用意には近づけん!!』


『……こうなったら、アレをやるしかないですね』


『っ、ヤマダ!! まさかアレをやるつもりなのか!?』


『空中戦艦を叩き落とすにはアレしかありません!! 皆さんも準備を!!』



 ドランさんが空中戦艦の放った砲弾を撃墜した一方、ヤマダ君たちは何やら違う動きを見せようとしていた。



「ヤマダ君、ヤマダ君!! せめて何をするつもりなのか事前に教えてください!!」


『男のロマンですよ、エルオットさん。男の子は昔から戦隊モノの変形合体するスーパーロボットが大好きなんで』


「へ、変形合体?」


『行きますよ、皆さん!!』



 ヤマダ君が指示を出した瞬間、彼の駆る『レッドライン』のもとへ四機の『ブルーライン』が終結した。


 そして、四機の『ブルーライン』がそれぞれ右手と左手、右足と左足に変形したのだ。

 それらが『レッドライン』の四肢と接続し、機体そのものが一回り大きくなった。


 しかし、それだけでは終わらない。


 『レッドライン』と『ブルーライン』、それぞれの特徴である赤い線と青い線の色が混ざり合い、紫色へと変じた。


 何あれカッコイイ!!



『変形合体機『ヴァイオレットライン』です!!』


「す、凄い!! なんてカッコイイんだ!!」


「カッコイイ、ですかな?」


「男の好みというものは分からんね」



 モニタールームでイムルさんとラビュリンさんが呆れているが、カッコイイものはカッコイイのだ。



『そして、変形合体機に遠距離武器は不要!! この対艦ブレードで叩き斬る!!』


「うおおおおおおおおっ!!!! 行けっ、ヤマダ君!!」



 ヤマダ君が構えたのは『ヴァイオレットライン』よりも大きな剣だった。


 文字通り、船を斬るための剣なのだろう。


 反撃を恐れることもなく、ヤマダ君は空中戦艦に向かって突撃。

 対空砲が何発も当たってしまうが、装甲は貫かれることなく接近することができた。


 そして、対艦ブレードを勢いよく振り下ろす。



『斬っ!!』



 対艦ブレードは空中戦艦を半ばで真っ二つにし、地上へと叩き落とした。


 圧勝である。



「よっしゃあ!! ヤマダ君、助かりました!! 引き続き敵戦闘機の撃墜、また空中戦艦が現れた時の対処は任せます!!」


『はーい!! ヒャッハァー!! 向かってくる連中は血祭りだー!!』


「ど、どう聞いても悪役の台詞ですぞ!!」



 イムルさんのツッコミも間もなく、各戦場から報告が届く。



『ティ、ティアラです!! 敵の戦車、全部踏み潰しました!!』


『お兄さん、リベンジは成功した』


『イルタルや!! こっちも終わったで!!』



 戦況はこちらに傾いていた。


 問題はこの状況を一人でひっくり返す可能性がある仮面の少女だが……。



『こちら、ロコロ。ちょっと致命傷を負ったけど、仮面の少女の無力化に成功した』


「っ、よし、よし!! 皆さん、ロコロさんの救助に向かってください!! 俺も行くので死者は一ヶ所に集めておいてください!!」


『『『おー!!』』』



 勝った。文句無しの勝利である。


 俺はモニタールームから飛び出し、死した仲間たちを生き返らせるために地上へ向かった。


 しかし、油断してはならなかった。


 イクシオン王国を打倒し、仮面の少女をどうにかしたとしても、まだ黒幕がいることを忘れてはならなかった。



「やあやあ!! 君が勇者たちのリーダーだね、初めまして!! 邪神です!!」


「……は?」



 地上に向かった俺を待っていたのは、全滅した勇者たちと、その勇者たちの亡骸の上に立つ美しい女だった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント小話

イクシオンの王女は空中戦艦の生体パーツの一部にされていたが、戦いの後でしっかり回収されてグレイン同様牢屋に入れられている。後で何をされるかはお楽しみ。


王女ざまあ!! と思ったら★★★ください。


「変形合体はロマン!!」「ロコロ勝ったのか」「邪神が邪悪で草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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