現地調査記録――工場関係者への直接取材
2025年8月27日
白井誠 現地調査記録――工場関係者への直接取材
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午後7時過ぎ、C氏の紹介により工場退職者(仮名:D氏)並びに現職作業員(仮名:E氏)との面談を実施。
場所は集落外れの居酒屋にて。非公式のため録音はせず、手帳によるメモ記録を主とした。
D氏(50代・男性・元検査担当)
「俺がいたのは、例の雷電社から原料が来るラインだった。配属の時点で“あそこだけは変だ”って言われるんだ。工場の空気が妙に湿っぽくて、仕事中に急に頭痛とか耳鳴りとか……。最初は気のせいかと思ったよ。けど、一緒に働いてた奴も『夜になると手が勝手に震える』とか『記憶が飛ぶ時がある』って言うようになって。記録台帳も何度も飛んだ。普通ならありえない。正直、現場では誰も理由を言えなかったな。」
「一度だけ、遅番の時に祠に入ったって若い子の話を聞いた。翌日高熱が出て、そのまま休職。原因は何もわからずじまい。現場の連中は“石を持ち帰ると良くない”って冗談混じりに話してたけどな。」
E氏(30代・男性・現職オペレーター)
「最近は管理も厳しくなってて、現場の情報はいっさい口外禁止、ってなってます。部品の不調は日常茶飯事で、その原因が雷電社周辺の原料に紐づいてることはみんな薄々感じてます。夜勤明けに検査すると、必ずエラーが増える。機械のモニターが急に暗転、再起動してもデータログが消えてたり。」
「特に夜中のラインで変な音……ピィーって高い電子音が流れると、その晩は絶対に何か起こる。手元の部品が割れたり、誰かが作業中に意識朦朧で止まってしまうことも何度か見てます。正直、回避できるなら近づきたくない。現場で祠の話をするだけでだれも口をつぐむようになる。」
二名とも、「現場にいると普通では表現できない何か」に触れる体験を強く示唆。
件の原料を扱った直後に記憶の空白や高熱、手指の震え、音響異常などを複数回経験。
特定の夜間現象・エラー発生の後、休職・異動を申し出る従業員が出ており、工場内でも不文律の警戒感が根強いことを確認。
また、祠との関連については「迷信と思いたいが、現場で実際に何かが起きると無視できない」といった言葉が複数回出た。
記録:
・現場の異常は体験談が裏付け多数。理屈を超えた誤作動や体調不良が日常的に報告される
・祠にまつわる事象は現場で忌避感が強い
・情報管理の厳格化と不安の拡大が観察された
以上、工場関係者からの直接聴取による記録とする。
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