現地調査記録――地域住民への取材
2025年8月27日
白井誠 現地調査記録――地域住民への取材
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午後4時18分、雷電社跡地から集落へ戻る。
集会施設近辺にて、地元住民数名と接触を図った。挨拶ののち、社跡調査への協力を求めたが、多くは目を伏せ、用件を告げる段階で足早に立ち去る。
少数、応対に応じた高齢者(仮にA氏・男性、B氏・女性とする)との会話記録を以下に抜粋する。
A氏(70代・男性/元農協職員)
「若いころは祭りもやったんだがねえ。あそこのお社は、もう長いこと誰も近づかんよ。うちのばあさんも“石を触るとな、あまりよくない”って言っててね。理由は知らんが、あの周りだけは雑草も生えんのも、神様の祟りかもしれんな」
「工場ができてから急に話題にならなくなって、おれも詳しいことはもう覚えちゃいない」
B氏(80代・女性/地元生まれ)
「祠が残ってるでしょう? あれ、子どものころは確か中にちいさな石があったのよ。誰かが持って帰ったら急に熱出すって話も聞いたね。お祭りも、昔は賑やかだったけど、ある年に嵐が来てからは、みんな口にしなくなったみたい」
記録用レコーダーの作動中、会話の一部が途切れ途切れに記録されていた。B氏が「社のことを話すと気分が重くなる」と談じた箇所ではノイズ混じり音声が混入、音量が不自然に低下。
また、取材の最中、背後で小学生と思しき子らが私語を交わすも、私が近づくと急に黙り、退避した。
また、通りすがりに出会った人物(40代・男性、工場退職者・C氏)との対話も記録。
C氏
「会社では詳しいことは言えないんです。あの原料を扱う現場は体調崩す人が出る。配属が決まると“あそこはやばい”ってみんな警戒するけど、理由がはっきりしないんです。異動願い出して無事辞めた人もいるけど、自分はずっと現場から距離を取るようにしていました」
「祠や社のことは、工場の連中でも近づきたがらないですね。ただ、何度か夜に近くへ行くと、空気が変わって、普通じゃ感じられない重さがある。説明できないものですよ」
現地取材は、全般的に「社跡の話題は避けたい」「表立って語りたくない」「どこか重苦しい雰囲気」に終始した。
皆ともに「理由は説明しにくい」と言い添え、記憶は断片的に途切れる。
また、社跡・工場・祠の話題が出ると、周囲の空気がわずかに冷える(総じて体感的であり記録数値は微弱)。
取材メモ:
・住民の大半が社跡への接近・言及を避ける
・石や祠、昔の祭りにまつわる体験談はほぼ断片に留まる
・工場関係者からは「原因不明の体調不良」「原料への本能的警戒」等が語られる
・取材音声記録は局所的に不明なノイズ(原因未検証)
以上、現地住民・通報者との邂逅、直接取材結果を記録する。
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