現地調査記録――雷電社跡地

2025年8月27日

白井誠 現地調査記録――雷電社跡地


***


午後2時10分、村外れの荒道を歩き切り、雷電社跡に到着。

地元役場の古地図とGPS履歴の照合に思った以上の時間を要した。

周囲は広く草一本生えない裸地。細かな砂埃が風で舞い、靴底を滑らせる。

石が無秩序に転がり、踏むたびに異様な硬質音が響く。散らばる石の表面には刻まれた古い印のような欠けや自然の裂け目とは見えない痕跡も散見された。


跡地中央には、木製の骨組みだけが残された社殿の残骸。

柱の枠材は灰褐色に風化し、手で触れると粉がこぼれる。

社殿のさらに奥、土の窪みに幅一メートルほどの祠らしき形状が2つ。

ひとつは朽ち果て、ゴミ置き場のような惨状。

もうひとつは祠としての屋根のある箱型を留めている──戸口は小さく、板は叩けば乾いた音。


記録用カメラを回す。

まず地表の様子を撮影。色味が不自然にくすみ、昼間の光にかかわらずどこか青白さが混じる。撮影の最中、数秒間画面が明滅、映像ノイズ発生。

祠の前に立ち、耳を澄ますと、遠くで風音とは異なる「ゴロゴロ」と鈍い地響き。

社の骨組みの一角が突然きしみ、乾いた木のきしみとともに細い埃が舞い上がる。


現場で温度計を使用。

周囲の空気温が急に3度低下。体感的にも深い冷気が漂う。呼吸が少し浅くなり、首筋にひりつくような寒気。

祠の扉を静かに押すと、僅かだが自然には開かず何かが内側で抵抗している。板の隙間から懐中電灯を差し入れ、撮影したが内部はほぼ暗闇。時折光が反射、金属片らしききらめきのみが観測された。

取材用のレコーダーで現場音を記録。再生時、祠の周囲だけ極端にノイズレベルが上昇し、微かな電子音混じりの雑音が帯状に走る。


周辺を歩くと、足下で石が細かく転がる。踏んだ瞬間、他の石がわずかに震えるようにズレたのを確認。

骨組みの社殿の影が午後の太陽で大きく伸び、時折風で“動いているような”錯覚。

跡地から西へ歩くと、土と石の配列が不規則に屈曲し、地面に小さな螺旋の模様。人の手が加わった痕跡とも自然地形ともつかぬ、どこか雷を思わせるような複雑なパターン。


現場滞在中、スマートフォンのGPSが一時誤作動。端末が再起動し、位置情報が数百メートル離れた空白地を示した。

レコーダーも三度停止し、バッテリーレベルが急低下するトラブル。

自身の体調は問題なかったが、ごく短い間、耳鳴り・軽い頭痛が生じ、社殿から離れると自然回復。


以上、雷電社跡地における現地調査の一次記録と印象。

現場は「ただの荒地・廃墟」と形容するにはあまりにも異様な沈黙と冷気、電子機器への干渉が存在しており、たしかに怪談めいた噂が流れるのも納得の状態であった。

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