第45話【わたし視点】ぴりぴりスープ、おかわり!
ごちゃごちゃした街に着くと、なんだか、いつもと様子が違う。
わいわいしていたはずの街が、しーんとしてて、変な感じ。
それに、あちこちで、ひとが倒れてる!
みんな、ぜえぜえ苦そうな音を出してて、顔や手には、灰色でカサカサした模様が浮き出ていた。
そこから、ぴりぴりして、すごく美味しそうな匂いがする!
そう! わたしが窓から嗅いだ匂いは、これだ!
ごくり。
こんなにご馳走がたくさん転がってるなんて、夢みたい!
わたしは、まず一番近くで倒れてるおじさんの、灰色の模様を、ぺろり!
んー! からくておいしい! この前食べた、からい箱の味に似てる!
わたしが模様を全部舐め取ってあげると、おじさんの苦しそうな音が、すーすーっていう穏やかな音に変わった。
やった! 元気になったみたい!
わたしは嬉しくなって、倒れてるひとたちを見つけるたびに、ぴょんぴょん飛び乗って、灰色のもようをぜーんぶ、ぺろぺろ舐めてあげた!
みんな、むくって体を起こして、自分の体が綺麗になってるのを見て、すごくびっくりしてる。
よし、これで全部かな?
くんくん。
あれ? まだだ! もっと濃くて、もっと美味しそうな匂いがする!
あっちだ! みんながいつもお水を汲んでいる、大きな井戸!
井戸の中を覗き込むと、お水がいつもと違う!。
うわあ! すごくからそうだ!
この前の黒いモヤモヤよりも、もっと濃くて、ぴりぴりしてて、舌が痺れそうな刺激的な匂い!
こんなご馳走、独り占めしちゃっていいのかな!?
わたしは、嬉しくなって、井戸の中に、思いっきり、ぽちゃーん!とダイブした!
うわあああああっ!
からい! からい! でも、おいしいいいいいいっ!
この前食べた、からい箱の味に似 てる! でも、もっと新鮮で、ぴちぴちしてる感じ!
わたしは夢中で、そのぴりぴりスープを、体中で、ごくごくごくーっ!と飲み干していった。
わたしが飲むたびに、灰色だったお水は、きらきらの水になっていく。
ぷはーっ!
ああ、美味しかった!
わたしが、井戸の縁にぷるんと乗って、満足げにしていると、周りに、いつの間にか、たくさんのひとが集まっていた。
さっきまで倒れていたひとたちも、何が起きたのかわからなくて、口をぽかんと開けて、わたしと、綺麗になった井戸を、交互に見ている。
前みたいに、怖がった顔はしていない。ただ、すごく、すごく、びっくりしているみたいだ。
すると、一人の男のひとが、おそるおそる井戸に近づいてきて、桶で水を汲んだ。
そして、その水を、ごくり、と飲んだんだ。
男のひとは、目をまんまるくして、叫んだ。
それを聞いて、周りのひとたちも、わーっ!と井戸に駆け寄ってきた。
みんな、水を飲んだり、顔を洗ったりして、すごく喜んでいる。
子供たちも、おうちから出てきて、わたしのところに駆け寄ってきた。
すごく嬉しそうな音が、たくさん聞こえてきた。
みんな、わたしのこと、もう嫌いじゃなくなったんだ!
わたしは、嬉しくて、嬉しくて、体をいーっぱい、ぷるぷるぷるーっ!て震わせた。
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