第25話 お金は正義

「き、貴様……何をした?」


 俺と綾部はリーシアとカレンの戦闘を休みながら観戦していた。最初は圧倒的にカレンの方が優勢だった。カレンが触手を切り続け、リーシアに接近して、終わりかと思っていたが……事態は一変した。リーシアを守っている触手から煙の様なものが噴出されてから、カレンの様子がおかしい。身体がフラフラしており、顔も赤くなっている。


「んー?……別になにもしてないよー」


 リーシアは明らかに嘘をついている様な態度をとる。そして自ら、カレンに接近する。


「う、嘘をつくな!」


 カレンの呼吸が荒くなっていってるのがわかる。


「良いねー……強気だねえ」


 リーシアは嗜虐的な笑みを浮かべ、触手をカレンに接近させる。


「くそっ!」


 カレンは残っている力を振り絞り、リーシアの触手を切り続ける。リーシアは舐めているのか知らないが、触手の本数を減らしてカレンと戦っている。


「へえ……私特製のこの媚毒ガスを吸ってまだ戦えるんだ……凄いね」

「このっ!」


 リーシアは感心して、カレンを見つめる。

 確かに……あの辛そうな状態で戦える根性は凄いな……てか、今さっき、リーシアの口から不穏な単語が聞こえた気がする。まあ、気づかなかった事にしよう。

 カレンは一心不乱に刀を振り続ける。だが……ここで限界が訪れる。


「っ!」


 一本の触手がカレンの左手に絡みつく。それがあだとなり、どんどんと四肢に触手が絡みついていく。

 あーなったら、もう終わりだな。


「こ、このっ!……離せっ!」


 四肢に力を入れて抵抗するが……触手の拘束が解ける気配は、まったく無い。


「まだ抵抗するんだー……まあ、私としては、そっちの方が虐めがいがあるし良いけどね」


 リーシアはカレンの目の前まで、接近すると、カレンの獣耳を撫でる。


「ひゃうっ!?」

「おっ?良い反応するじゃーん」


 カレンの口から甘い声が漏れる。それをリーシアは面白がり、獣耳を優しく撫でる。


「んっ……ひゃ、ひゃめろ……」

「ぐへへへ……」


 リーシアの口から涎が垂れ落ちる。

 アイツ……完全に理性を失ってやがる……。


「あ、あの……流石にリーシアさんを止めないと……不味い気がします……」


 そう言いつつも、真っ赤な顔でリーシアとカレンのじゃれ合いを見つめる、綾部であった。

 そんなお年頃なんだろう。興味も出てくるわな。


「確かにそうだな」


 俺は立ち上がり、リーシアに近づくと、カレンが「解放される……やったー!」みたいな表情でこちらを見てくる。


「おい。リーシアそろそろ――」

「あーあ。最近、お兄ちゃん頑張ってるしリリス様に報告してあげようかなー」


 俺の言葉を遮り、リーシアが独り言(?)を呟く。


「もし、報告できたら、お兄ちゃんの給料がアップするかもなー」


 俺は……悪魔の囁きを聞いて、足を止める。

 そう。何故か、リリス様はリーシアに対しては甘い。リーシアのお願いなら、大抵の事は聞き、実行している。なんで俺に対しては甘くないのかは、わからないが……。

 カレンは今の話を聞き、「え……え?」と言う困惑の表情をしている。


「どうしようかなー……この場を見逃してくれるなら……報告してあげても良いんだけどなあ」


 リーシアが人差し指を口に当てて、可愛く考えている。


「ま、待って!これは悪魔の囁き――」

「あららー、カレンさんは少し黙ってようねー」

「んっ!?」


 助けを求めようとしたカレンは無慈悲にもリーシアの触手を口に巻かれ、猿轡さるぐつわをされる。

 俺は溜息をつき、カレンを助けようと足を動かすが……。

 な、何故だ?……俺の足が動かない?……。

 ま、まさか、これは何者かの仕業か!?


「くっ!足が動かない!こ、これではカレンを助けに行けない!……」


 俺は今できる精一杯の演技をし、元の場所に、そそくさと移動する。

 我ながら迫真の演技だ。


「んっ!?んー!」


 カレンが涙目で何かを必死に伝えようとするが、触手の猿轡が邪魔で、何を言っているのかわからない。


「あー……お兄ちゃん、行っちゃったねえ……可哀そうに。でも、大丈夫だよ。私がたあっぷりと……可愛がってあげるからね……」

「んっ!んっー!!」


  

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