第26話 キャラ崩壊

「なんで……カレンさんの事、助けなかったんですか?」


 俺は元の場所へ戻ると、綾部がジト目で俺の事を睨んできた。先程まで顔が赤かったのだが……もう慣れたのか知らないが元に戻っている。ちなみにリーシアとカレンはお楽しみタイム中だ。

 まあ……一方的にリーシアが楽しんでるだけなんだが……。


「……妹にも花を持たせてやりたくてな」

「なんですか、それ……理由にもなっていないような気がしますが……」


 俺が今思いついた適当な嘘を言うと、綾部に見抜かれてしまう。


「やっぱり……お金が大事なんですか?」

「しょうがないだろ。結局、お金が無いと生きていけないんだからな」


 まだ高校生の綾部に俺が大人の事情を語る。


「もう良いです。私が助けに行きます」

「え?……ま、待て」


 綾部はステッキを持つと、変身し、カレンの事を助けようとする。

 流石にそれは不味いと思い、俺は綾部の肩をガッシリ掴む。


「今更、なんですか?」


 不機嫌そうに綾部が言う。


「綾部……よーく見てみろ。お前もあんな感じになりたいのか?」


 俺は悟るように綾部に話しかける。綾部は少し冷静になり、リーシアとカレンの状況をジッと見つめる。


「…………」


 リーシアは……まあ、詳しくは言えないが、この前の綾部と戦った時よりも暴走しており、カレンが酷い状況になっている。時折、カレンの甘い声がこちらに聞こえてくる。

 綾部の顔が再度、急激に赤くなる。

 なんだ。慣れてなかったのか。


「ア、アレー。アシガウゴカナイナー」


 誰にでもわかるような棒読みなセリフを吐いて、俺の方に戻ってくる。


「……今は、リーシアの暴走が収まるまで、待とう」

「……そ、そうですね」


 結局、俺達はカレンの救助には行かず、眺めてるだけであった。

 待ってる間、綾部は恥ずかしそうにうつむいていたが、お年頃の好奇心が勝り、リーシアとカレンをチラチラ見ていた。

 え?俺?……もちろん、ガン見してたよ。男は欲望を抑えきれない……そーゆー生き物なのさ。


 *


 あれから数十分後……リーシアは満足したのか、触手から、カレンを解放した。


「ふうー……満足!」


 何故か、リーシアの肌はツヤツヤになっており、非常に満足そうな表情をしている。

 それに比べて……カレンは……。


「もう……無理……お嫁にいけない……」

 

 カレンはローブ姿に戻り、うずくまっている。

 キャラと精神が崩壊しており、立ち直りが難しそうな状況にあった。先程までの威風堂々とした、カレンはどこにいったのやら……。


「あー……ご、ごめんね。ついついやりすぎちゃって……あはは……」


 流石のリーシアもやり過ぎたと思い、カレンに軽く謝罪をする。別にリーシアはひどい奴じゃない。根は優しいんだ。今回みたいに、たまーに暴走してしまう時があるが……。


「……触手……コワイ……」


 最後の方は片言になっており、完全に触手がトラウマになっている。


「う、うーん……そこまでするつもりは無かったんだけどなあ……」

「そりゃあ……あんな事されたら、誰でもトラウマになるだろ」


 俺と綾部はリーシアに近づく。


「いやー……やりすぎちゃった。てへぺろ」


 リーシアが可愛く、てへぺろをする。無論、そのような雰囲気では無い。


「ま、まあ、後の事はお兄ちゃんに任せるとしよう」

「は?」


 コイツ……逃げる気だな?

 リーシアは綾部の腕を掴む。


「そろそろ、夕方だし、私は綾部ちゃんと一緒に帰るから!後はヨロシク!」

「へ?」


 綾部の腕を掴んだリーシアは、そのまま猛ダッシュで綾部を引きずり、去っていった。


「ま、まっ!?あ、あの!アレスさん、頑張ってくださいー!……」


 綾部の去り際にそんな声が聞こえる。

 はあ……めんどくさいけど、送っていくか。


「と、とりあえず……帰ろうか」

「…………うん」


 覇気の無い声を出し、うずくまっていたカレンはフラフラと立ち上がる。


「肩……貸した方が良いか?」

「いや……大丈夫だ」

「そうか」


 元気が無さそうなカレンはノロノロと歩いていく。


「心配だし、送っていくよ」

「す、すまないな……」


 俺とカレンは一緒に歩き出した。

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