第4話・クットルフな古代世紀支配者をペットにして飼おう♫

 とりあえず、町外れの丘に村人総出で、リンネ住むログハウス風の家が建てられ。

 そこにリンネは住むことになった。

 ログハウスの中を見廻して、リンネが見えない小人に、お礼をしているような口調で言った。

「なかなか、見事なあたしの家……村人さんたち、ありがとう」

 カルマが村の仲間になったリンネに、お祝いの花束を古い花瓶に差して言った。

「で、何をやるのか決まったの?」

「う~ん、まだ決まらない」

「急がなくても、じっくり考えればいいから、スローなライフなんだから」


 その時──家のドアをノックする音が聞こえた。

「誰か村の人が、お祝いに来てくれたかな?」

 リンネが木製のドアを開けると、ベニヤ板の薄い木の板に描いた白馬の絵をくり抜いたモノを抱えた。

 貴族の悪党令息が、立っていた。

 静かにドアを閉めて、何も見なかったコトにするリンネ。


 激しくドアを蹴り叩く音と同時に、悪党令息の声が響く。

「ドアを開けやがれケロ! ここにいるのはわかっているんだケロ! 賽河 カルマ!」

 ドアが開かないとわかると、今度は開いていた窓から部屋に入り込もうとする悪党令息。

 カルマが木製の窓扉を閉めて、家の中に入り込もうとしていた、悪党令息を外に叩き出す。

 外で白馬のくり抜きを家の壁に叩きつけて、怒鳴る悪党令息。

「隠れていないで出てきゃがれケロ! 出てこないと……家ごとケロ」


 悪党令息の言葉が終わる前に、カルマは勢い良くドアを開けて外に出て言った。

「完成したばかりの新居に何をするつもりだって! 家ごとってなんだ! 言ってみろ!」

「いやぁ、カルマが出てくれば家には何もしないケロ……オレは代理ザマァされた恨みを晴らすために来たケロ」


 オーバーオール姿でストローハットをかぶった、カルマが悪党貴族令息の顔をじっと見てから言った。

「思い出した……おまえ、追放されたパーティーのヘタレ勇者に頼まれて、あたしが代理ザマァした雇い主の貴族令息だ」


「そうだケロ、オレは直接的な関係ない、パーティーの雇い主の貴族令息だケロ……なんで直接パーティー方にザマァしないで、オレの方にザマァしたケロ」


 悪党令息の話しだと、なんの前触れもなく身に覚えのないザマァされて一家は離散……令息は信用が無くなった令息は、ほそぼそと若年貴族年金で暮らしてきたらしい。


「チート能力で、貴族らしからぬ言葉遣いにさせられて、おまけに語尾に〝ケロ〟なんて変な語尾をつけられたケロ! どうして、貴族のオレがザマァされなきゃならねえんだケロ」


 カルマが説明する

「だって、パーティーを追放されたヘタレ勇者が泣きついてきて『本当はオレは凄いスキルを秘めているのに追放しやがって……仲間にザマァすると、後々報復ザマァされるのが怖いから……離れた関係者をザマァしてください』って頼まれたんだもん」


「メチャクチャな、飛び火ザマァだケロ……そのヘタレ勇者は、本当に凄いスキルを秘めていたケロ?」

「ぜんぜん、本人の勝手な思い込み……非凡な弱腰勇者」


 カルマからカップに入った井戸水を勧められて喉を潤して落ち着いた、悪党貴族令息がカルマに質問する。

「いったい、どんなチート能力を使ったザマァだケロ……毎日、財産が勝手に無くなっていったケロ」

「このくらいのチート能力なら、教えてやってもいいか……あんたが高額な金銭を徴収した領地の町や村の人に、金銭を還元するチート能力『クレジット』……徴収した分の倍以上の金銭が毎月、町人や村人になんらかの方法で還元される」


「それで、オレは貧乏になったのかケロ! 許さねぇケロ! 賽河 カルマ! チート能力に対抗できるのは邪神か古代世紀の支配者だケロ」


 くり抜いた木製の白馬を貴族令息が、叩き割ると白い煙と共に。

 古代世紀のクットルフな支配者が現れた。

 子犬くらいの大きさがあるオレンジ色をしたモフモフの、古代世紀の支配者がフサフサの尻尾を振る。

 四つの赤い目はあるが、モフモフ、フサフサの姿に恐怖は○○微塵みじんも感じない。

 貴族令息が、カルマを指差して言った。

「行け! 古代世紀の支配者ケロ! 賽河 カルマを邪悪な力で食い殺すケロ!」


 尻尾を振りながらカルマに飛びつく、古代世紀の支配者。

 飛びつかれて床に転ぶカルマ。

 古代世紀の支配者は、カルマに甘える──ほとんど、犬だった。

「よしよしよし、あたしの家に来て家族になるか……よしよしよし、素敵なペットのプレゼントありがとう、次はあたしのターン」

 カルマのオッドアイがチートな輝きを放つと、時間が停止した。


 カルマは、止まった時間の中でも動ける支配者を見る。

「おまえ、時が止まった世界でも普通に動けるのか……気に入った」

 カルマが時間を止めた世界の中で、動けるのはもう一人いた。

「あれ、周囲が止まっている……カルマ、時間止めた?」

 まるで「髪切った?」みたいな軽いノリで訊ねるリンネ。


「うん、止めた……手伝って、このアホ貴族令息……町の広場に運ぶから」


 カルマが横にした貴族令息の頭側を持って、リンネが足側を持ってエッホエッホと町の広場に運んでいくのを、後からモフモフ、フサフサの支配者犬がはしゃいでついて行く。


  ◇◇◇◇◇◇


 令息を運びながらリンネが、カルマに質問する。

「時間を止める能力って最強チートじゃない?」

「そうでも、無いよ……あまり長い間、時間を止めておくと動かした時の反動でフケる……それに、他の時間停止能力者と、能力がかち合う時は……この、チート能力は使えない」

「ふ~ん、チート能力にも、いろいろと制約があるんだ、エッホ、エッホ」


  ◇◇◇◇◇◇


 町の広場に、貴族令息を運んで立たせたカルマとリンネは、貴族令息の衣服を脱がして、素っ裸にしてしまった。

 脱がした衣服は、まだ名前がない古代世紀の支配者が、玩具にしてズタズタに噛み千切ってしまった。


 カルマとリンネは、裸にした令息の体に『わたしはザマァされました』と大きく落書きをして広場から去っていった。

 帰る途中の道でカルマが。

「そろそろ、時間を動かすか……どんな反応をするのか楽しみ」

 そう言って指を鳴らして時間を動かすと、町の方から男の絶叫が聞こえてきた。

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