第25話 まだ早い

~角灯は勝利した~



「やった角灯かくとうさん!!? ゲームの時と違ってかっこよかったですよ!!」

「さすがやな」


「さて……」


 角灯かくとうは残りの方。ネムの方を見た。


「くっ。なんで私のカウンターが効いてない!? あの距離だと絶対に発動したはずだ!!」

「え? 効いてるよ? さっきからすげー気持ちぃぃのがよォ!!」

「な!? こっ、このぉ!!」


 ネムがどうしていいか分からずに接近する。二人が同時に拳を繰り出す。さらにクロスカウンターが決まる。


「ぁがっ……」

(なんで……こいつ……自分のパンチと私のパンチの両方を受けてるようなモノなのに……ッ。しかも男観媛おかきのダメージもあるのに。何故なぜ倒れない。こんな馬鹿な事がっ……)


 角灯かくとうが先ほどの男の勝利に喜びの声をあげる。


「ああ~きもてェーーーィィぃぃぃ!! もっとォッ。もっとだぁぁ!!」

「急に恰好良さがマイナス面に落ちたァァァ!!!」


「まさか。ダメージを喰らう事がマウントの発動条件か!? 実は私の攻撃をギリギリでかわしているんだな!!」

「そうでーす!! うへへへきもトゅぃいぃぃ!! うぇへへ!!!」「絶対嘘だあれ!!」


「ッ……だとしても……だとしてもっ!!? 獣人の私がこっちの人間如きに負ける訳がないんだよォ!! はあああ!!」


 角灯かくとうがネムの渾身の右ストレートを回避する。そして完璧な一撃を顎に叩きこんだ。


「お前の予想通り……俺の左手は。さっきのあの一回が限界さ……もう当分使えねぇよ」

「言ってない、し……がふっ……」「聞いてないですよ!!!」


 ネムはその場に倒れた。ラミは動揺する。


「くっ……そんなネムまでやられるなんて……こいつ等っ今までの警官とは違うッ」

「もう諦めてください!! 貴方たちは完全に包囲されています!!」

「せや」

「追跡のプロからは逃げられねーよ」


 ドラミングをしながら三人はそう言った。きっと敵の心を折ろうとした。


「フ、フフフ。舐められたものだわ。確かに驚いた。けどね、あの男はもう動けない。悪いけど獣人モードレンの眼は弾丸を正確にとらえる……そして私は貴方たちが疲れるまでドラミングが出来る……分かるかしら? 貴方たちに勝機はないのよッ!!? 絶対にねェ!!」


 黒波くろはが携帯を取り出した。ニッコリと笑う。


「は? ちょっとまっ。止めなさい……ッ。正々堂々と戦うって言ったじゃない!!? 貴方もそう思うでしょう?」


 ラミは角灯かくとうの方を見た。敵に同意を求める。


「そうだな……」

「き、決まりねッ……さあっ。そのオーパーツを地面に置くのよ。我々にはまだ早すぎるわ。そして気がすむまで。限界まで戦いましょうかッ!?」


「あ~でも公式チートはオッケーだしなァ!! いいよぉー。そっちも助っ人呼んでぇ~!! お互いオーパーツで語り合おうぜェ。ウホっ! ウホっ!」

「なっ!! それは違う!! それでも貴方武人なの!?」


「武人じゃありませーん。しがないゲーマーでーす!!」「その前に公安ですよ!!」


「……な、なんですって……」


 そこでレンが全員を睨み付ける。


「させない。私がラミを守る!? 瀕死と銃だけの雑魚ならいける……っ」

「レン、貴方……フフ。これからも私と一緒にあばばばばばば!! がっ……」

「ラミ? ラミ!!!? どうしたのっ……」


 ラミは突然倒れた。背後にはショックガンを撃った鳴瀬なるせがいた。


「ふぅ……間に合ったぜ」

「忘れてた!!」「流石鳴瀬なるせ!!」「っんだ鳴瀬なるせか」「鳴瀬なるせかい」

「忘れてませんでしたよ私は!? ってなんでその無駄な爆弾持ってるんです!! 置いて来たらもっと早くこれましたよね!!」


「あ”? なんだァお前等ァ。後で誰が一番活躍したか検討会だなァ」



「クッ……けど、いくら人数を増やしたところで私に弾は当たらない。残念だけどっ」


 角灯かくとうが言う。


「へー。じゃあその倒れた人……庇わないんだー? おいおい随分薄情な仲間だなァおい」

「へっへっへっへ」「ふっふっふっふ」

「ふぇ?」


 黒波くろは鳴瀬なるせ、そしてショックガンを使わなそうな角灯かくとうまでもが倒れたラミに銃口を向ける。


「貴様等!! 悪魔か……ッ!?」

「ゲームオーバーだ」


 同時に発砲するとレンは彼女を庇いビリビリとなって意識を失った。その後、角灯かくとう救急車に運ばれた。


「それにしてもなんであの二人は動けたんでしょう? 味方だからですかね? ずるくないですかあのマウント」


 有栖ありすが言う。


「いや、普通に男だろ。こいつ等」

「ハハハハ。またまた~。こんなに可愛い子が」


 その声に覚醒したラミが辛そうに起き上がる。まだ痺れているらしい。


「違うわ……男の娘よ。ぅっ……バタ」

「え……?」


 そしてラミはそのまま意識を失った。犯人に手錠がかけられた。帰りのワゴン車で凛虎りんこが言う。


「嘘ですよ。あの子たちが!!」

「まだ言ってんのか? 諦めろ」

「それにしても角灯かくとうの奴。また病院送りとは……」

「あいつも懲りんよな」


角灯かくとうさんのマウント未来予知ですよね。もっと簡単に勝てたんじゃ……」


「あの男との勝負は変に拘ったあいつが悪いが。マウント持ちの獣人相手は簡単じゃない」

「そんなに強かったんですね、あの子」


「流石に角灯かくとうもマウントを使ってたからな。だが、どっちにしろ。マウントを使うために、ダメージ受けてチャージしないとだからな」


「あれ本当だったんですかァ!!!? じゃあそれを隠すためにあんな小芝居をっ……やっぱりなんでも課の人は凄いですね」

「いや、あれは素だ。Mだからな。あいつ」「いやドMだろ」


「この先相手のマウントを正確に当てられる気がしないんですけど」

「慣れだ慣れ」


 後に判明した事はドラミングバフの条件は良い音を鳴らせる事と仲間である事と仲間を90%以上信頼している事であった。


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なんでも課の凛虎さんは変幻自在~やっぱり私は普通ですね~ 刀根光太郎 @tone-koutarou89

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