送り盆特別投稿「幻のオーディション」

クライングフリーマン

声優オーディション

 ===== この物語はあくまでもノンフィクションです =========

 浅はかだった。

 キッカケは、YouTubeを観ていた時だった。

 広告が出ていた。「声優、即戦力求む」


 私は、応募書類を送ってしまった。

 まだ、未練があったのか、と呆れながら。

 約半世紀前。私は、声優で有名な劇団の養成所にいた。

 同期生の者は、殆ど声優に焦がれて集まって、「芝居」には経験も無ければ知識も無かった。

 だが、私は本格的に芝居の勉強をしたかった。

 演劇青年の夢は、たった1年で瓦解した。

 声優には、中学の時から憧れはあった。

 だから選んだ劇団だった。


 時は流れた。

 当時、同じような広告がYouTubeに出ていた。

 需要が高いのなら。

 もう、普通に歩けない体になっていたのに未練があったのか?

 Zoomを利用したオンライン面接の通知が来た。


 試験は、朗読とフリートークだった。どちらも自信があった。

 合格通知と共に来たのは、入学案内だった。

 授業料払って、一から勉強して、鈴木副君を目指そう・・・?


 即戦力じゃ無かったのかよ。

 もう歩けないから、電車乗って、劇団の通所すらままならない。

 ひょっとしたら、「声優採用通知」だけが欲しかったのかも知れない。


 もう欲しがりません、ジジイだから。

 どんなに黒歴史でも、どんなにつまらないネタでも、文字を連ねれば文章になる。


「敗戦の日の『談話』」は流れたらしい。

 まずは祝おう。

 ミネラルウォーター飲んで、赤飯食べて、自虐ネタ披露して。

 明日は、明日の「熱い」風が吹く。

 鈴木副君、目指さなくても、充分「俳優」したよ。

 いい声生かして「スーパーの店内アナウンス」したよ。


 さ、「幸田」でも書くか。「中津」がいいな。

 うどんで乾杯だな。


 ―完―

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送り盆特別投稿「幻のオーディション」 クライングフリーマン @dansan01

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