ぴよまるくん(2)

 別れを切り出されたのは小6の時期だった。

 どんなタイミングであの話は切り出されただろうか。


「大事な話があるんだ」

 とかの別れ話の定番セリフを事前に言われた気がする。


 続けて

「実は他に付き合いたい人が出来たの」

 だなんて言われた。当時の自分はその事をどう思っただろうか。


 ただ、怒りは湧いてなかったのは確かだ。

 当時小6とはいえ所詮はの関係であることは重々承知していたから。

 だからネットで好きな相手よりもリアルで好きな人ができれば、それを優先するのは何もおかしない話ではない。


 仮に俺がクラスの可愛い子に告白されればどうだろうか?きっと心は揺れる。

 ただ、それでもやっぱり彼女を優先していた気がする―――というのは綺麗事だろうか。


 実際はそんな事が起こらなかった以上、答えは分からない。


 それで、元カノの好きな人については俺も知る人物だった。

 知る人物と言っても、ゲームに関係のある人間ではない。


 互いの日常をシェアする時に元カノがよく話題に出す相手がいて、その人物こそが「好きな人」だったのだ。

 だからこそ、当時の俺は少し困惑もした。


 なにせその相手もまただから。


 その子についてはクラスのよく抱きついてくる子がいると紹介された。

「私に抱きついてると安心できるんだって」

 とか言ってた気もする。


 女の子のスキンシップの事なんて男の自分には分からないし、ただの微笑ましい内容だと思っていた。それが百合に繋がる重要なフラグになっているなんて予想できまいよ。


 そうだ、元カノは女の子が好きだった訳だが別に男が恋愛対象じゃなかった訳でもなくて「バイ」だったんだよな。そう告白された。

 バイ。男も女も恋愛対象。


 そんな元カノは俺を振るのを申し訳なく思って謝ってきた。


 だけど謝罪なんて要らなくて、それどころか「むしろ尊い」

 と俺は返していた。気でも狂っているように思えるが、やっぱり狂っていたのかもしれない。


 ただ、百合は尊いという概念が当時からあったからそう答えられたのだ。

 何処で仕入れた知識かは分からないけれどあったのだ。


 だから、その時は悲しむことはしなかったと思う。告白したのも相手側からだったそうだし、それもまた救いだった気がする。


 ◇


 別れてからだが、俺と彼女とで特に関係が変わることは特になかった。

 話すことが無くなる訳でも、気まずくなることも俺からすれば無かった。

 今となれば彼女がどう思いながら俺と接していたのか、考慮の余地はあるけど。

 少なくとも表立った問題はなかったのだ。


 それこそ、共同で小説を書いてしまうくらいだった。

 きっかけはちょっとした事だった。

 俺が小4の頃からちょっとした小説を書いている事を伝えると実際に書いて欲しいと言われて、書いた。


 書いたのは、病気の女の子と医者の話。

 タイトルは……星のなんちゃら。

 星がついてたのだけは覚えている。

 まぁ色々と覚えてない要素が多い。

 それこそ医者と女の子が出てくる以外何も覚えてないくらいだ。


 ハピエン厨の自分のことだからご都合で病気が治ってハッピーエンドになったような……違うわ。

 タイトルに星がついてるから女の子はきっと亡くなったはずだ。


 小学生の俺のことだ、女の子が最後星になって医者が夜空を見上げる。亡くなった彼女を思い浮かべると何か言って終わるんだ。

 あぁ、確かにそんな内容だった。

 今思うと推〇の子の最初も最初の部分と似たストーリーだと思う。



 この話を見て、彼女は感動したと言ってたはずだ。それで、一緒に小説を一緒に作ってみないかと提案してみたんだ。


 形式はセリフリレー。

 俺が男のセリフを書いた後に、彼女が女のセリフを書く。


 設定は彼女の意見を優先した。

 俺は男のアイドルで、彼女はそんなアイドルと秘密のルームシェアをしている一般女性みたいな感じ。


 アイドル彼氏との同居シーンに始まり、家を出る彼を送り出す。送り出すときにはお決まりの「いってらっしゃいのチュー」があったのではなかろうか。


 ファンとして会場に訪れると特別なファンサをしてもらえてキュンキュン!


 家に帰って

「やっぱりアイドル君が一番カッコいいよ!」

 と女が言うと

「俺にとってはお前が一番のアイドルだぜ」キラッ

 みたいな会話をしたような……流石に盛ってるか?


 悲しいことに俺は二人で作った作品の事はまともに思い出すことは出来ないらしい。

 アイドルの元になった実在する推しの名前は覚えているのに、どうしてだろうか。








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