屑みたいな恋をする

ゆずリンゴ

ぴよまるくん(1)

 俺という人間はとても「出来ていない」 人間だ。

 普通の人生を送ってきたはずなのに、普通未満の出来損ないとなった。


 それは頭脳だとか容姿の話ではなくて、人間性―――要は性格が終わっているという話だ。

 たとえくずだと罵られたとして反論なんて出来ない。

 自分が屑だと自覚しているなら、それでまともな気もしたが、自覚した上で「屑な行動」というのを辞められなかったのだからやはり救いようも無い屑だ。


 それでも最近では少しばかり反省して「屑な行動」は控えている。……出来なくなったというのが正解なのかもしれないけど。


 なにせもう3年近く恋人がいないから。

 最後に別れたのは中学を卒業する少し前だったか。高校に上がってからは恋愛とは無縁だった。


 だから「」なんて行為はもうしていないんだ。

 正直に、なんであんなことをしていたのか自分でも不思議な行為。

 大学生になった今だからこそ言える。

 それは「屑の恋」だ。


 俺は昔の記憶を遡るが好きで、昔にした恋愛なんてものは何度も、何度も思い返している。

 だからこそ最近はよく思う。初めてした恋愛というのはなんて純粋なものだったかと。


 ◇


 俺に初めて恋人が出来たのは中学1年生の頃だったと思う。確証は無い。

 中1だなんてもう7年も前の事で、記憶は朧気なのだ。


 初めてできた彼女はネット上の、オンラインゲームで知り合った相手だった。

 いつ知り合ったのかも、話すようになったキッカケも覚えてないけど。


 肝心のゲームの内容はよくあるもので、「人間陣営」が「鬼陣営」から逃走すると言ったものだ。だから、勝ち試合をキッカケにフレンド申請をのだろう。

 話すほどの関係になった理由は予想もつかない。


 ただそこまで難しいものでも無いと思う。当時は純粋な中学生。


 フレンドになった際に

「(プレイヤー名)です!これから仲良くしましょう」

 という文言がデフォルトで送られるからそれに

「よろしく」

 なんて返して、そこから質問タイムでも始まったんじゃないか?


「俺、中1なんだけど君は何歳?」

 とかをあの頃なら平気で聞きそうだ。


 そして相手、あの子の名前は「ぴよまるくん」だったかな。それも分からない。

 どこかでそう改名をしたようにも思うし、フレンドになった当初からそうだったかもしれない。


 ぴよまるくんの中の人だが、中学三年生の女子だったはずだ。俺よりも歳が2つ上だった、それだけは間違いないし忘れない。


 そんな彼女と親睦を深めて、いつからだったか俺は特別な感情を抱いていた。

 恋愛感情かと聞かれれば分からない。けれど、友達に抱くのとはまた少し違うものだ。


 これは持論になるのだが「ネット恋愛」と「現実の恋愛」における〃好き〃という概念は少し違う気がするのだ。

 好きを構成する割合、その純粋な理由、不純な理由。それらが関係してるのか。

 ただの気のせいかもしれない。



 それで、告白した時の事だ。

 あの日もいつも通り、互いの学校であったエピソードを語っていた。その中で急に伝えた気がする。

「好き」という文字の入った文言を。

 どんなセリフかなんて分からない、どういう思考回路で告白したくなったのかなんてのも分からない。


 覚えてるのは告白した事と

「本当に言ってる?」「すごい嬉しい、私も前から好きだった」

 という2つの返事。


 そうして現実で告白する勇気を持てないでいた子供は少しばかりの勇気で初めて結ばれた。


 ただ、付き合ったと言っても限りなく友達に近かった。だってそのオンラインゲームで行える交流はチャット上での会話と、録音できる短い声を送る程度だ。そのたった2つの交流法じゃ現実のカップルのような事は難しい。


 それでも、付き合った時には「好きだよ」という言葉を声で送られては互いにどちらが好きか対抗するように何度も繰り返していた。


 付き合ってからは、そうだな。

 普段は友達のような関係で普通の会話をしているた。けれど間を開け、不意打ちのように「好き」と伝えられては顔を赤くしていた気がする。


 本当に、愛おしい記憶。


 あれ、そういえば彼女と俺と同い年のフレンドとで3人チームを組んで遊んだことがあったな。


 そのフレンドは当時小6だったはずだ。

 ということは付き合ったタイミングを1年勘違いしていたらしい。

 相対的に彼女も中学2年生になる


 それと同時に思い出したことがあった。

 俺が彼女と別れたのは小6の時であったと。





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