彼女の恋を止める権利がどこにある

斗花

彼女の恋を止める権利がどこにある

その日、結奈ちゃんに言われた言葉。


「彼氏ができた」


その時俺が何て答えたか正直覚えてないし、なんでこんなショックなのかもよく分からなかった。


「角山くん、」


下駄箱に行くと桜先輩と伊達先輩が二人仲良く並んでる。


「あ、桜先輩と伊達先輩!今日もアツアツで-」


言いかけたところで伊達先輩に叩かれた。

痛くなかったしすごい軽くだったけど、なぜか泣きそうになった。


「お前、バカだろ」


冷たく言われて、それでもまだなんで先輩が怒ってるのか分からなかった。 


「……俺は昔っからバカですよ?」


「春日さん、取られたぞ」


取られたって言葉が妙に俺の感情とリンクした。


「……俺には関係ないです」


「関係ない?」


「だって、結奈ちゃんだって関わるなって言ってきて、」



伊達先輩が上げた手を桜先輩は冷静に掴む。



「伊達、」


「……横溝が好きなのは野上だろーが」



その言葉に一瞬、動揺した自分が情けない。



「……何の話ですか?」


「お前は横溝に憧れてるだけだろ。

野上と一緒に明るく笑ってて流星と一緒に部活を頑張ってて山本と楽しそうにしてる横溝に憧れてるだけだろ」



目を伏せた俺を見て桜先輩は伊達先輩を止める。


「……伊達、言い過ぎ」


「お前はな、カク。

春日さんとの気持ちに向き合うのが怖くって横溝に逃げてるだけなんだよ」



止める桜先輩を気にせず伊達先輩は続ける。



「叶わない横溝を好きな方が春日さんとの関係と向き合うよりずっと楽だもんな」


顔を上げない俺の胸倉を掴み伊達先輩は俺と目を合わせる。


「言い返す勇気もねーのか?」


「いい加減にして」


桜先輩はそう怒り伊達先輩の背中を引っ張る。


「後輩イジめてんじゃないわよ」


「……別にそーゆうつもりじゃ、」


「そう見える。伊達が首突っ込むことじゃない」



その強い口調に伊達先輩は口をつぐんだ。


「……角山くん、」


桜先輩に名前を呼ばれゆっくり顔を上げた。


「……ごめんね、」


桜先輩の言葉は優しかったけど口調と視線は冷たかった。


「……え?」



「買い被って、ごめん。

私が思ってたよりも角山くん、ずっと弱かったみたい」



その何とも言えない呆れた様な、冷めた言い方に伊達先輩すら、息を飲んでた。


「ほら、伊達、帰るよ」


「あ、あぁ……」



でもだって、だってどうすれば良いんだ。

俺はただの友達で結奈ちゃんの友達なんだ。



「……関わるなって言われたんだ」



小さく呟いた言葉は白い息に乗って虚しく、消えた。





**


でも伊達先輩に何も言い返せなかったのはきっとそれが限りなく図星だったから。







2011.02.15

【確かに恋だった】サマ彼女の恋を止める権利が誰にある

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