第34話

ついに、最後の試験の日がやってきた。


長い沈黙の時間の後、アコウのチームはもはや傍観者でいられなくなった。彼らは立ち上がり、戦わなければならない。自分たちが選ばれるかどうかさえわからない中で、この最後の戦いに命を賭けるしかなかった。


準備を整えた後、アコウはルーカスから受け取ったカードをフェリックス・ウェーバーに手渡した。彼は落ち着いた声で言った。


「これを持って、安全な場所に逃げろ。これから先、もう二度と会うことはない。」


フェリックスは戸惑いながらもカードを受け取り、すぐに口を開いた。


「いいんですか?これは皆が命を懸けて手に入れたものですよ…こんな形で私に渡すなんて…」


その瞬間、後ろからブラウンがフェリックスの背中を強く叩き、片方の口元に笑みを浮かべた。衝撃でフェリックスははっと体を揺らし、前かがみになった。


「受け取れ。どうせ、お前は俺たちの中で一番脱落率が高いんだからな。」


フェリックスは立ち止まり、目に涙をにじませながらカードを握りしめ、声を震わせないように必死で言った。


「皆と長く一緒にいられなかったけれど…この時間は本当に、意味のある時間でした。皆に会えて本当に幸運だった。」


その声はかすかに詰まり、頭を下げて溢れる感情を隠そうとした。しかし、まるで何年も抑え続けてきた水門が一気に壊れたかのように、フェリックスはゆっくりと、震える声で語り始めた。まるで痛みを伴う記憶の断片を一つずつ呼び覚ますかのように。


彼は自らの歩んできた道を語った。軽蔑と孤立の中で過ごした長い日々を。冷たい視線に刺されるような毎日、囁かれる嘲笑、そして誰も手を差し伸べることなく崩れ落ちた大広間での数々の経験。そこでは「仲間」という言葉さえ贅沢で、「友達」は遠い夢のようだった。フェリックスは影のように存在していた――静かに、孤独に、そして見えないままに。


毎朝目覚めるたび、彼は自問した。「自分は何のために生きているのか?」

そして毎晩、目を閉じる前に、次の日が最後の日であってほしいとひそかに願った。これ以上耐えなくて済むように。


その時、彼らが現れた。


咎める言葉もなく、探る視線もなく、哀れむ眼差しもなかった。アコウ、ブラウン、ゾア…それぞれが自然にフェリックスに近づき、まるで彼が元からそこに属していたかのようだった。誰も「お前はふさわしいか」とは尋ねない。ただ静かに受け入れ、手を差し伸べ――焚き火のそばに、地図のそばに、会話のそばに――一つの空席を残してくれた。


フェリックスにとって、それは単なる救いではなかった。それは人生で初めて、自分が認められたという感覚だった。初めて、自分が「人間である」と感じたのだ。暗く冷たい世界よりもはるかに大きく、温かい何かの一部であることを。


共に過ごした時間は短かったが、一瞬一瞬が心に刻まれた。ブラウンが肩を叩き笑った笑顔。アコウの厳しくも優しい視線。フェリックスが黙り込むたびにゾアが放つ馬鹿げた質問。そして深夜に響く笑い声――本でしか聞いたことがない音色だった。


彼は知っていた。この試験は残酷であり、誰もゴールまで手を取り合うことはできないだろう。しかし、それでも、彼らが共にした時間の価値は決して損なわれない。


フェリックスは深く息を吸い込み、赤く潤んだ目を震えるように輝かせながらも、笑みを浮かべた。


「もしかしたら…もう会えないかもしれない。でも、来世で、あるいは人混みの中の偶然の一瞬でも…また皆に会えたらいいな。遠くからでも、それだけで十分だ。これまでのことが、本物だったとわかるから。」


皆が立ち去ろうとした時、フェリックスはためらい、顔を上げ、かすれた声で言った。


「本当に…二度と会えないのですか?」


皆は立ち止まり、フェリックスの方を振り向いた。ゾアは優しく微笑んだ。


「そうかもしれない。でも、私はこの出会いが運命だと信じている。また会う日があれば、強い男になっていてほしい、フェリックス。」


フェリックスは頷き、嗚咽を抑えた。涙を拭い、背を向けて森の奥へ走り去った。アコウが描いた地図を携え、信じる人々のために生きる決意を胸に。


ゾアの方は、数日間意識を失っていたが、ついに目を覚ました。記憶に残っているのは、最後の一撃と息を詰めるほどの重圧感だけだった。なぜそうなったのかはわからない。ただ、自分が敗れたことだけは確かだ。そして次に会うときは、決して負けないと心に誓った。


記憶はまだ封印されている。しかし、完璧な回復能力は失われていない。現在、ゾアはそれを唯一使用できる存在――誰も予想できない利点を持っているのだ。


アコウは最後の会議で皆に告げた。戦術は一切決めない。これからは、審査員の目を引くため、文字通り天地を揺るがす戦いを繰り広げるしかない。残る五枚のカードの位置――それは未だ最大の謎である。


森の中にある古びた小屋で、端正なスーツに身を包んだ男性が本を読んでいた。向かいには、長らくチームが探し求めていた少女、アユミが座っている。外の混乱など意に介さず、マスクをつけたままだ。


「同級生を探しに行かなくて、大丈夫なのか?」――男性は本のページをめくりながら尋ねた。


アユミは跳ね起き、マスクが落ちる。伸びをしながら疲れた声で答えた。


「彼らの実力なら大丈夫よ。で、あなたは、カードを手に入れてから一週間も本ばかり読んで…飽きないの?」


男性は分厚い本を閉じ、丸テーブルの方へ視線を向けた。小さなティーカップの下には、五枚のカードが重なっている。


「目的は達した。それ以上戦う必要はない。ましてや、外の者が皆、我々より弱いとは限らないのだから。」

戦場に戻る。


ゾアは一人で森を駆け抜け、教会へと一直線に向かっていた――前回自分を打ち負かしたミレイユ・ブランシュフルールが待っていると信じている場所だ。今度こそ、絶対に負けはしない。


突然、上空から隕石のように風を裂いて降ってくる影が現れた。紅く燃え盛る凶気が炸裂し、強烈な一撃が地面を打ちつけ、土煙が空中に舞い上がる。そのもやの向こうに、見慣れた顔と怒りに満ちた目を持つ、大柄な人影が浮かんだ。


ゾアは咄嗟に後ろに跳び退き、攻撃をかわした。冷や汗が額を伝う。苦笑を浮かべ、目には抗えない無力感が宿る。


「まさか…最後の相手がこいつだったとは…」


別の場所では、ルーカスも状況は同じだった。彼が動き出す前に、敵が現れた。目の前に立つのは、ミレイユ・ブランシュフルール。


「おや、まさか最後の戦いで君に会うとはね。」――視線がルーカスに触れ、ミレイユが声を上げる。


ブラウンの前もまた同じ状況で、目の前には真のSランク――ジファが立ちはだかっていた。


そして、最後の光景が現れる。


廃墟となったホテルの大広間で、アコウは戦闘装備を身につけ立っていた。目の前にはクレイス――白騎士の霊とともに。


「ついに君と対峙できるな、学園で最も頭脳明晰な男――アコウ。」


アコウは驚きもせず、ただ口元をわずかに上げる。


「ネイサンネル・クロウリーが私を狩りに来ると思っていたのに、まさか君か。」


クレイスもためらわず口を開く。最初から、アコウが弱者であるはずがないと思っていたのだ。戦場で顔を出すことはほとんどないが、彼の鋭い分析力、イチカワへの指示、次の一手を先読みする能力…すべてが、アコウが実戦を経験していることを示していた。これほどの即応力と推論能力を持つには、過酷な状況で鍛えられたか、少なくとも幾度となく命を賭けた戦闘を経験しているに違いない。戦力値はさておき、戦闘技術に関して言えば、アコウはこれまで自分が対峙した誰よりも優れていると、クレイスは断言できた。


それを聞いても、アコウは答えず、静かに立ち続け、まるで何かに備えているかのように鋭く目を見開いた。


突如――アコウの背後から、白騎士の霊が天界から降り立つ幻影のように現れた。身体は純白で、手に光を放つ大鎌を握り、中世の偉大な騎士の威厳を漂わせる。一瞬の間に、空間全体がその圧倒的な存在感で息を詰まらせる。


予告もなく、光の大鎌が振り下ろされ、銀の弧を描く――嵐の重みを帯びた一撃。


しかしアコウは微動だにしない。袖口から鋭い長刀を滑らせ、正確に迎え撃つ。衝突の衝撃で土煙が大広間に吹き上がり、周囲の柱がひび割れる。


黒い電流――かつてイチカワの戦闘に現れたものが、突然アコウを取り巻く。稲妻のように弧を描き、破片の火蛇が飛び散り、かすめるたびにクレイスが本能で身震いする。冷や汗がこめかみに伝い、瞳が驚きで見開かれる。


「どうやら君の読みは正しかったようだ。」アコウは静寂を裂く冷たい声で言った。「私は君が知る誰よりも戦技に優れている。」


クレイスが応答する間もなく、アコウは猛スピードで突進。完璧な踏み込みで横蹴りをクレイスの胸に叩き込む。クレイスは無意識に手を上げるのみ。蹴りの衝撃は数百戦の経験を凝縮したかのようで、クレイスの体は袋のように飛ばされ、背後の石壁に激突。壁の一部が割れ、破片が雪のように降り注ぐ。


均衡を取り戻す暇も与えず、アコウはさらに接近。手の刀が閃光のごとく、倒れたクレイスめがけて突き刺さる。しかしクレイスは即座に白騎士の霊を指示し、霊は光を放ちながら螺旋状に旋回する。天から死神の刃の如く振り下ろされる。


アコウは目を細め、刃先の方向を変え、霊の腹部に正確に突き刺す。光の体が震え、金属が裂けるような呻き声を上げて数歩後退した。


クレイスは歯を食いしばり、片手で胸を押さえ、口元から血を流す。「白騎士の霊に影響を与えるとは…君のエネルギー値は少なくとも私と互角だ。」


「それは幸運だったな。」アコウは落ち着いた声で、まるで天気を話すかのように言う。「そうでなければ、この霊を倒すより先に君を狙う時間を費やす羽目になった。」


その言葉の直後、アコウは体を回転させ、蹴りで白い霊を遠くへ飛ばし、地面に転がした後、もぞもぞと立ち上がらせる。クレイスは怒声を上げ、背後の大剣を引き抜く――だが反撃する前に、アコウは再び接近。刀を振り下ろし、クレイスが剣を抜こうとした瞬間、腰に切り込みを入れ、痛みにより彼を止めた。


その隙に、アコウは連続斬撃を叩き込み、刀の閃光がクレイスの体に深い裂傷を次々に描く。血が暗闇に火花のように散り、空気を赤く染める。


クレイスは後方に吹き飛ばされ、息を切らし、片腕を負傷。叫び声とともに白騎士を召喚し防御に回す。霊は即座に剣に変形し、両腕を振り下ろし、天から地へと縦の一撃を描き空間を裂く。


アコウはこの一撃を正面から受け止められないと判断。即座に後方へ回転し、剣が地面に突き刺さる衝撃で爆音が響く。剣が触れた土地は真っ二つに裂け、砂利が四方へ飛び散る。


チャンスを逃さず、アコウは突き刺さった剣に踏み込み、自身の力で跳躍し、白騎士の頭部に強烈な蹴りを叩き込む。霊はよろめき、方向感覚を失う。アコウは相手が立て直す暇を与えず、胸部に致命の一撃を突き刺す。赤黒い電撃が花火のように炸裂し、空気を引き裂く。白騎士の霊は呻き声を上げ、光となって消滅した。


クレイスは冷や汗を流し、霊を回収して顔色を失う。ため息をつき、嗚咽交じりに声を上げた。


「さて…目の前の化け物にどう立ち向かえばいいのか…」

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