7月7日の貴方はアルタイル。

三日月カノン

短編小説 7月7日の貴方はアルタイル。

徐に星を見つめていたら、

遥か昔のことを思い出した。

あの星はアルタイル。

この星はベガ。

天の川を挟んで離れた場所にいる二人が年に一度、7月7日にだけ会えるという逸話があるそうな。

会いたくても会えない、彼らの思いはなんとも切なく、なんとも辛い。

私は、空の星を逃してしまった。

彼は言った。


「あの星、俺たちみたいだよね。近くて遠い距離、一年に一度しか会うことが出来ない。」


私は笑ってごまかしたけれど、

心の奥ではその言葉がずっと響いていた。

物理的な距離よりも、心の距離のほうが残酷なことを、私たちは知っていたからだ。


「もし、星みたいに永遠に輝きながら、一年に一度しか会えないとしたら…それでも君は俺を選ぶ?」


彼の問いは、単なる比喩ではなかった。

この世界では、感情を抑制するために、人々は「会える回数」が制限されている。

愛は強すぎる衝動として、制御されるべきものとされたからだ。

私は一年間、彼を思い続ける自信があるだろうか。

いや、自信なんていらない。

ただ、この感情を忘れたくない。


「選ぶよ」


その瞬間、空のアルタイルが一段と強く輝いた気がした。


私はその星を見逃さなかった。

見逃さなかったように、彼のことを絶対に逃がしはしない。

たとえ一年に一度しか会えなくとも、私は思い続ける。

心の距離は星の距離よりもぐっと近い。

私はずっと大好きでいる。


7月7日

彼は言った


「…やっと逢えたね。」


流れ星と同時に涙が零れ落ちる。

言葉に表しきれないほど逢いたかった。

私はこの1年間、ずっと彼に会いたかった。


「馬鹿…。私もずっと、ずっと、逢いたかった…。」


暫くの沈黙の間

彼は私を抱きしめる。

これだけは言いたかった。

これをずっと言いたかった。


「大好き。一年に一度しか会えなくとも思い続けるから1年後も、2年後も、その先も、幾億光年先もずーっと大好きでいる。約束して、1年後もまたここで会えるように。私を大好きでいると。」


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「約束。俺はずっと大好きでいるよ。君の全てが好きだよ。1年後も、2年後も、その先も、幾億光年先まで添い遂げる約束をする。俺から1つ約束、俺のことを忘れるな。」


2人は星と共に刹那の一時を過ごした。

私は1年後もこの先もずっとこの人と添い遂げたいと思った。

織姫と彦星は一年に一度繋がれる。

その時心も繋がれる。

その星の名をアルタイルとベガと言う。

何億光年先の未来を紡いでいけると、そう、あの日誓ったのだ。

7月7日のアルタイルは

静かに終わりを告げた。

共にすごした日を忘れずに、


「それじゃあ、また、1年後。」


7月7日のアルタイルで。

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7月7日の貴方はアルタイル。 三日月カノン @Luna_mikazuki_1127

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