【実話】:当たり前だけど当たり前じゃない。
ロリコンメイカー
感謝の言葉と挨拶の本当の意味
あなたは人と違うと思ったことはないだろうか。私もそう思います。だからこそ、学校の先生や両親、友人から「お前、何やってるんだよ」とか「バカじゃないの?」と言われることもよくあります。けれども、他の人と違うからこそ、自分にとっても相手にとっても良いことにつながるのではないかと思うことがあります。
それは、「感謝の言葉を伝える」ということです。一見、誰でも当たり前にやっていることのように思えますが、実は一つだけ気になる点があります。それは、バスに乗ったときや降りたときに、何も言わない人がとても多いということです。
たとえば、友人や先輩に車で送ってもらったときには「お願いします」や「ありがとう」と自然に言うのに、なぜバスでは言わないのでしょうか。もちろん「お願いします」「ありがとうございました」「こんにちは」「おはようございます」などと言う人もいますが、それはごく少数です。
「お金を払ってるんだから、わざわざ言う必要はない」と思っている人もいるかもしれません。私の経験では、小学生くらいの子どもや高齢の方が感謝の言葉を口にしているのを何度か見かけました。逆に、若者や会社員が黙って乗り降りするのを見ると、「これは本当に日本の文化に適しているのだろうか?」と疑問に思います。
私は高校2年生のとき、学校の海外研修でカナダのビクトリア州にホームステイをしました。ビクトリアには電車が走っておらず、移動はほとんどバスです。ホームステイ先から語学学校へも、毎日バスで通いました。
出発前、先生にこう言われました。「カナダでは、バスを降りるときに『Thank you』って言わないと失礼な感じになるよ。現地の人もほとんどみんな言ってるから。」実際に現地でバスに乗ると、降りるときに多くの人が自然に「Thank you」と言っているのを見て驚きました。日本とは全く逆で、カルチャーショックを受けました。
実を言うと、カナダに行く前の私は、バスで何も言わずに乗り降りするときが多かったと思います。しかし、この経験を通して、「感謝の言葉を伝えるって、こういうときにも必要なことなんだ」と気づきました。たとえ日本であっても、バスの運転手さんに「お願いします」や「ありがとうございました」と伝え続けることで、運転手さんの気持ちが少しでも温かくなるのではないかと考えるようになりました。
また、この前の朝礼のときに校長先生から、挨拶についてのお話があり、そのときにもう卒業してしまった、女子高校生を紹介して、その子は毎日駅で駅員さんに「おはようございます。」と挨拶をしていました。その後、その駅員さんに「君のおかげで毎日元気が出るよ。」などと感謝の言葉を伝えたそうです。このように、いつも頑張っている駅員さんや運転士さんに感謝の言葉を伝えることで、自分にもその言葉が返ってくるんだなと思いました。
それ以来、私は友達と一緒にバスに乗るとき、運転手さんに「お願いします」と言い、降りるときには「ありがとうございました」と毎回伝えています。そして今日も、私は感謝の言葉を伝え続けています。たとえ運転手さんに声が届かなかったとしても、たとえ周囲の人から変わった人だと思われたとしても、運転手さんはお客さんの命と安全を背負って、日々真剣に運転しているのですから。
ここからも、本当に実際に起きた、奇跡のお話である。
夏の光が激しく射し込む朝、季節は移ろいゆく日々の中のひとつの刹那を映していた。生きることの確かな重みを感じながら、私はまた小さな日常の扉を開ける。
『いってらっしゃい』
バスは、夏の朝の光を受けながら、駅前へと静かに進んでいた。
低く差し込む陽射しが窓ガラスを透け、座席の布地の模様を金色に浮かび上がらせる。
車体は緩やかに揺れ、座席の下からはかすかな軋みが響き、前方ではウインカーの規則的なカチカチという音が淡々と刻まれていた。
そのすべてが、私の中では当たり前の、何でもない日常の風景だった。
「次は終点、〇〇駅です。」
アナウンスが流れ、私は降車ボタンを押す。赤いランプが点り、小さな電子音が鳴った。
顔を上げ、揺れる車内でバスは駅前に沿って進む。
バスが到着してドアの前に立ち、運転席の方に身体を少し向けて、いつものように口を開いた。
「ありがとうございました。」
それは私の中では習慣に近い儀式だった。
特別な意味を持たせたことはなかった。ただ、感謝を言葉にして降りる。
その日も、そのつもりだった。
だが、次の瞬間。
運転士の声が、私の背中越しにふいに届いた。
「ありがとうございます。いってらっしゃい。」
低く、しかしよく通る声だった。
冷たい車内の空気の中で、その言葉だけがほんのり温度を帯びて、私の心の奥に触れた。
咄嗟に返事をしようとしたが、声が出なかった。
まさか「いってらっしゃい」と言われるとは思っていなかった。
その言葉は、不意打ちのやさしさとして胸に降り注ぎ、思考を一瞬で奪った。
ドアが閉まり、エンジン音が静かに高まる。
バスが発車していくのを見送りながら、私は自分の中に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
それは涙だった。
嬉しさと驚きが入り混じった、心の奥から湧き上がる涙。
「毎回お礼を言ってきたことは、間違いじゃなかったんだ」
そう確信した。
運転士も、特別なつもりで言ったわけではなかったのかもしれない。
けれど、私にはその一言が宝物のように思えた。
声の響きも、抑揚も、まるで心に刻まれた音楽のように何度も思い出せる。
それからも私は、バスを降りるたびに必ず「ありがとうございました」と言う。
そして、心のどこかであの声を探している。
いつかまた、あの日のように「いってらっしゃい」と返してくれる運転士さんに出会えることを信じながら。
季節は巡り、人はそれぞれの道を行く。けれど、小さな言葉の温もりが、どんなに遠くても心の帰る場所を教えてくれるのだと、私は知っている。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。ぜひ良ければ感想をコメント欄でお願いします。
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