第20話 防衛都市の家 9日目

AM 0:00

[カザキリサイド]

 8日目の防衛は成功した。

 一重に今目の前で眠っている彼女のお陰だった。

 無情彩香、いえ厳密にはサイカちゃん。長時間にもおよぶ激闘の末、女王型を撃破してくれた。彼女がいなければ間違いなく防衛は昨日で終わっていただろう。

 しかし彼女も力を女王型に勝つため限界まで力を行使したらしい。

 病院の集中治療室に運んだが今のところ目覚める気配はない。

 何とか明日の防衛までに目覚めてほしい。

 そう思う一方で私は考えなければならなかった、彼女が不在であっても女王型に勝つ方法を。


PM 12:00

[カザキリサイド]

「焼肉パーティーっすか?」

 ここは病院の中庭。普通の一般社会ではありえないが私はここでBBQ焼肉パーティーを慣行することにした。

「そうよ、サイカちゃんがやりたいって言ってたから」

「でもよ何もこんなところでやらなくてもいいんじゃねーか?」

 病院の中庭にダイニングテーブルと焼肉を焼くための鉄板を広げ、肉を焼いている。確かに狂人の沙汰と言えるかもしれない。

「ほら、よく言うでしょ?昏睡状態の人間が好物の匂いを嗅いだら目が覚めるというやつ。あれを狙っているのよ」

「そんなにサイカちゃんの調子は悪いんですか?」

 薄井健太からの質問に私は言葉を返せなかった。

 正直あのサイカちゃんがここまで昏睡するとは思わなかった。

 『うむ、明日は焼肉パーティーがしたいから肉を用意しておけ』

 今思えばあの言葉は完全に死亡フラグじゃな…

「ワシも食べたーーい!!」

 ガシャアアン

 上階のガラスが割れ殺人鬼が降下してくる。

「ちょ、え!サイカちゃん!?」

「焼肉、焼肉、焼肉、焼肉、今鉄板にあるのは全部ワシのモノじゃーー!!クソうめー!」

「は、おま…ふざけんな!俺の肉!」

「あーしそのカルビ食べたかったんすけど!」

「ちょおい…ハラミはダメだろ!」

「少なくなったら足せばヨイ!脇にある肉は全部鉄板へGOじゃ!!」

「それだと火が通りませんよ!」

 …何ということ、フラグブレイカーは私だけで十分じゃない。

「司令官よ!キサマも少しは食え!」

 急に近くに来てそう言うとサイカちゃんは大量の野菜を乗せてくる。

「あなた野菜が嫌いなの?」

「ワシの目的は肉のみじゃー!!」

 そう言うと肉でモグモグしながら去って行った。

 はー…賑やかになったわね。まあこれで一安心ではあるけれど。


PM 6:30

[ケンタサイド]

「さて、時間ね役割分担をしましょう。まずレベル1,2,3,5,7こいつらはサイカちゃん以外レベル4,6,8はサイカちゃんにお願いするわ。特にWAVE4で出てくるであろうレベル8はサイカちゃんが相手にすることは必須条件ね」

「任せておけーい!」

「レベル9は未知数だけれど、いいこれだけは忘れないで、23時まで防衛しきったら私たちの勝ちなのよ必ずしも撃破する必要はないわ」

 僕を含む全員が頷いた。

「質問タイムはスキップしようと思うけど質問したい人はいるかしら?」

 誰からも意見は上がらなかった


PM 6:50

[トモキサイド]

 今更ながら俺はここにいていいんだろうかと思う。

 これまでの全く防衛で活躍しなかったと言えば嘘になる。でも所詮は器用貧乏だった。ここに来てバイクの乗り方も銃の扱いも覚えたけど、率先して誰かの役に立っただろうか?所詮はアライさんの二番煎じ、そしてケンタのおまけだ。

 ケンタは前の滞在での縁もあったのか風切さんとは仲が良かった。そして風切さんが不在の間も代理を努めていた。

 俺は学校の中でも人気があって注目を集めないことは無かった。ケンタと何かする時も常に先頭には俺がいた。俺が企画して俺が行動していた。ケンタがいない間の滞在だってこなしてきた。それがどうしてこうなったんだろうな。 


 ビービー

「WAVE1 4丁目北西にレベル3狼型ヒューマロイドが5体出現。直ちに防衛に向かってください」


「来たわね、薄井健太、佐藤智樹、迎撃に向かいなさい」

 ほらな、『、佐藤智樹』所詮俺はケンタのおまけなのさ。

「はい」「……うっす」


PM 7:40

[トモキサイド]

 ビービー

「WAVE2 4丁目南西にレベル4狩人型ヒューマロイドが7体出現。直ちに防衛に向かってください」

「ワシか?」

「そうね、サイカちゃんお願いするわ、トダユイあなたも久々に出なさい」

「病み上がりの運動じゃ」

「あーしの射撃の腕前久々に見せるっすよ」

 そう言うとサイカちゃんとトダユイは出ていった。

 俺は時計台のある家のリビングで2人が出ていく背中を見ていた。

 サイカちゃん…前回の戦闘ではレベル8の女王型を撃破していた。

 レベル8の存在は風切さんからの伝聞でしか聞いていなかったが圧倒的な戦闘力を持っていたという。これまでの防衛でせいぜいレベル2~3しか相手にしてこなかった俺からはきっと想像もできない強さなんだろうなと思う。

 トダユイは、俺にとってはここに来る前からの憧れの存在だったけど、テレビの中のトダユイとは様子が違って普通だったから、正直ああ彼女も俺と同じ人なんだと思っていた。でも防衛ではしっかり一般人ではなく『女優』として演技力を活かしていていた。かつて演じたカウガールの役を憑依させ精密な射撃を誇り、安心な最終防衛ラインとしてこれまで活躍し、風切さんが重症を負った時も、ナース役で傷の手当てをしていた。

 気づけばレベル4の存在を示す丸印が消えていた。

 やっぱり2人とも化物なんだなって思う。


PM 8:00

[トモキサイド]

 ビービー

「WAVE3 2丁目南東にレベル5熊型ヒューマロイドが2体、レベル6忍型ヒューマロイドが4体出現。直ちに防衛に向かってください」

「そうね、新井健、サイカちゃんお願いするわ。新井健は高出力ブレードを惜しみなく使いなさい」

「おうよ」

「【Lv2】任せい【Lv2】」

 2人が出ていった

 サイカちゃんはどことなく禍々しい雰囲気を纏っていた。まあでもここ最近の防衛ではよく感じることだったけど。

 そして新井さん。新井さんはよくその辺にいる不良のイメージで今もそのイメージは変わっていない。けど、バイクの操縦とか男気のようなものはどこか頼れる印象を抱かせる。5日目で風切さんがピンチの時にもサイカちゃんが倒せなかった熊型をぶっつけ本番で倒していた。本番に強い、そして臆することのない度胸はこの防衛に必要なものを持っているように感じる。この人にバイクの操縦は習ったけれど正直まだまだ追いつけるような気がしない。

 出て行って5分もしないうちにレベル5とレベル6の存在を示す印は消えていた。

 俺は少し外の空気を吸いたくなった。


PM 8:30

[サイカちゃんサイド]

 ビービー

「WAVE4 3丁目南にレベル7騎士型ヒューマロイドが2体、レベル8女王型ヒューマロイドが1体出現。直ちに防衛に向かってください」

「【Lv3】来おったか女王型!【Lv3】」

 ワシを追い詰めた現状の宿敵、再び相まみえるのを楽しみにしておったぞ。

「サイカちゃん私と来なさい。体調は大丈夫かしら?」

「【Lv3】安心せい。バッチリじゃ【Lv3】」

 じゃが全く負ける気も、激闘になる気もしなかった。


  目的地に着くと騎士型と女王型が雁首をそろえておった。

「くらいなさい」

 ヒュー……ボゴオオオン

 司令官がロケランで騎士型の1体を撃破する。

「【Lv3】あとは下がっておれ【Lv3】」

「ええ任せたわ」

 早速女王型の全方位攻撃が来た

 カンカンカンカン

 鎌で攻撃をはじく。司令官は近くの民家から様子を伺っておるようじゃ。

 残った方の騎士型が飛びかかりワシに剣を振るってきた。もう雨を降らせて来る気はないらしい。

「【Lv3】雑魚に用はない【Lv3】」

 剣撃を避け鎌を水平に構える。

「【Lv3】サイカちゃん流奥義 その4

  一刀

   惨殺

 【Lv3】」

 力を込めた鎌の一撃で騎士型が上下に分かれた。

「【Lv3】さて本番はこれからじゃのう。ワシはこの状態で勝たねばならん【Lv3】」

 女王型が5指でレーザーを放ってきた。

 シュン 回避する。

「【Lv3】目が覚めてから禍々しい気が体に満ちているのを感じておった、昨日のワシが激闘の末に残した手にしたモノじゃろうな【Lv3】」

 女王型の剣撃が来たが

 シュン こちらも回避した。

「【Lv3】サイカちゃん流奥義 その29

 災禍『凶』化【Lv3】」

 女王型が10指でレーザーを放ってきた…が

 ビー…斬!

 その手を斬り落とした

「【Lv3凶】悪いがのう、ワシにとってヌシはもう脅威ではない。昨日の負傷から蘇ったことでワシは強くなってしまったようじゃ。さっさと終いにさせてもらうぞ【Lv3凶】」

 女王型は、文字通り打つ手がなく立ち尽くしておった。

 斬!

 女王型の首を跳ね飛ばした。


PM 10:00

[カザキリサイド]

 圧倒的だった。昨日苦戦したあの女王型をサイカちゃんは一瞬で倒してしまった。

 底なしの強さに、勝利への喜びよりも畏怖の念の方が勝ってしまう。

 まあとにかく。これで女王型はもう彼女に任せて安心のようだった。

 

 そこで次のアラートが鳴った

 ビービー

「WAVE5 防衛者の目の前に」

 !

「レベル9 クローン型ヒューマロイドが計6体出現。防衛してください」

 アラートがいつもの感じと違う

「クローン型!?」

 そう思うが早いか、目の前に私と全く同じ姿をしたヒューマロイドが現れた。


[ケンタサイド]

 目の前に僕がいた。

 そう思うが早いか、クローン型はスタンガンを構えていた。

 なるほど、これまでの防衛都市での僕の活躍を元に戦闘スタイルを作っているらしい。

 クローン型のスタンガンを避ける。

でも『僕』が相手でよかった。『僕』は弱いから。これがサイカちゃんとかだったら詰んでいただろう。

「ボクハ、カザキリサンノカワリヲスルンダ」

 ああ、僕のモノマネをしているらしい。

 客観視すると僕はこんなにも滑稽に見えるのか、見苦しいな。

「さようなら、弱い僕。君は脅威でも何でもない」

 背中から銃を出すとクローン型の頭を撃ち抜いた。

 バァン


[トダユイサイド]

「ジョユウシチヘンゲ:『カウガール』チサト・タナカ!」

 クローン型があーしのカウガールをパクってくる。

 バァン

 「うお、あぶねー」

 柱の陰に隠れる

 時計台のある家の隣の民家で戦っていた。

 一瞬前に私がいた場所に的確に銃弾がめり込んでいる。

 精密射撃をコピってるから命中率が半端なかった

「どうすっかなー…そだ」

 クローン型が私の方に近づいてくるので私は民家の2階に逃げた。

「女優七変化:『くのいち』お菊!」

 くのいち特有の隠密行動で2階からベランダをスルスルとおりてクローン型の背後に付いた。

「トダユイちゃん討ち取ったり~!」

 そう言うと私は銃でクローン型の頭を撃ち抜いた。

 バァン

 ま、くのいちに銃なんてありえないんだけどね。


[アライサイド]

 ブゥウウウン

 俺と同じやつとバイクで並走していた。

 運転の粗っぽさが俺に似ている。

 バイクに乗る前は金属バットで殴りあっていた。埒が明かないと判断してバイク戦に切り替えたんだろう。

 何もかもが自分を見ているようで無性に腹が立つ

「クライヤガレ!」

 そう言ってクローン型が高出力ブレードを出そうとしたが…

 馬鹿め、そのバイクの高出力ブレードは『今日の分』使用済みだぜ

「残念だったな!そっちこそ食らいやがれ!」

 そう言うと高出力ブレードを出しクローン型をバラバラにした。

 スババババ

 やっぱり今時不良は頭も使えねえとな。俺のAIなんか凌駕するくらいにはよ。


[カザキリサイド]

 殺人鬼の住む家でのヒューマロイドを見た時点でこの展開は予想しておくべきだった。

「カミモリタンテイドウグ 『ヘアピンナメンナシ』!」

 ああ、やっぱり道具使いなのね。

 ヘアピンを軽々と避ける

「いいこと、予告してあげる。あなたは次の私の1手で終わりよ」

 そう言い放ってもクローン型の様子は変わらない。

 久々に『アレ』の出番ね。そう、私には確信があった。

!」

 久々に坂井真理の声で言うと。

 案の定クローン型は機能停止した。

 最弱の私が相手だから戦闘でも勝てるのだけれど、

 探偵は戦闘じゃなくて推理する存在だから。


[サイカちゃんサイド]

「サイカチャンリュウオウギ ソノサン サイカサンゲキ!」

 ワシもどきが大鎌を振るって来おる。

 サイカによるサンゲキを回避した。

 フラグブレイカーであることは先刻証明したではないか。

「【Lv3凶】キサマ、いつの状態のワシじゃ?【Lv3凶】」

 ワシもどきが大鎌を振るい、そこから激しい激闘になる予感…ということはなくワシはワシもどきの首を跳ね飛ばした。

「【Lv3凶】残念じゃがワシは一瞬前より何倍も強い!キサマがどの時点で有ろうと、今のワシに勝つ道理はない!!【Lv3凶】」


[トモキサイド]

 情けない存在がそこにはいた。

 ああ、俺だよ。スタンガンなんてもってやがる

「アンタニエガオヲモッテキタゼ」

 うるせえよ、そんなこと言ってもカッコよくもなんともないんだよ。

 スタンガンを避けた。

「ヤッタナ、ケンタ」

 俺はケンタのおまけなのか。

「ソコカワレヨケンタ」

 俺はお前がうらやましいのか。

「……ウッス」

 ……俺の個性はどうした、俺の強さはどうした、俺は誰かの二番煎じ、俺は誰かに従うだけ、俺は……俺はいらないだろう。別に俺じゃなくていいだろう!

「うわあああああああーーーー!!」

 バンバンバァン

 俺は俺もどきを撃ち殺した。


PM 10:55

[カザキリサイド]

 最後の佐藤智樹の目の前の丸印も消えた。

 これですべての敵を倒したことになる。


 ピンポンパンポーン

「本日の敵勢力の進行が停止しました。防衛お疲れさまでした」

「ふー疲れたっす」

「やっぱあれだな過去の自分を吹っ飛ばすと気分がいいな」

「【Lv3凶】過去のワシなど所詮雑魚ではあるがな!【Lv3凶】」

「はは…最弱な僕が相手でよかったよ」

 戸田唯、新井健太、サイカちゃん、薄井健太がそれぞれ言った。

 皆自分を相手に打ち勝ち思うところがあるようだった。

「みんな9日目の防衛お疲れ様…」

 と皆をねぎらおうとしたところ。

「佐藤智樹?」

 佐藤智樹がフラフラと時計台の方に歩いて行く。

 カチャ

 佐藤智樹が時計台に銃口を押し当てた。


[トモキサイド]

「佐藤智樹、あなた自分が何をしているか分かっているの?」

 ああ、分かってるよ。もう全部終わりにしよう。

「俺はもう疲れたんですよ」

「【Lv3凶】司令官よコヤツを斬ってよいか?【Lv3凶】」 

「待ちなさい。きっとクローン型との戦いの影響で何らかの精神的ダメージを負ってしまったと考えるわ、それを解消しましょう」

 ダメージ?それなら負っていたさ、最初から蓄積していたんだ。

「風切さん僕に会話をさせてください」

 ケンタ、やっぱりお前が出てくるのか。

「トモキ、どうしたんだ?さっきのクローン戦で精神ダメージを負ったのか?」

「…うるせえよ負ってねえよ疲れたって言ってるだろ」

「そうだよね、疲れるよね」

 いやに物分かりがいいじゃないか。そういうところ実は昔から嫌いだったぜ。

「僕見ていたから」

「…そうだな、出撃の時はほとんど一緒だったもんな」

 『薄井健太と佐藤智樹』『薄井健太と佐藤智樹』何度繰り返されたフェーズだ。

 この際だ、言いたいことを言ってやるか。

「なあケンタ、俺は必要だったのか?いつもお前ので同じようなことやらされて、でもお前は風切さんの代理なんかやってて俺とは違って。俺は別に俺じゃなくてもよかっただろう!」

「そんなことないよトモキだから風切さんは僕と組ませたんだ。なあトモキ折角ここまで来たんだ。その銃口を下ろそうよ。明日を耐えれば滞在はクリアじゃないか」

「俺はもう別に滞在にこだわっていない!ここで終わりにしたいんだよ!」

 そうだもうこれで終わりなんだ。

「…嘘はよくないよトモキ」

「嘘…だと?嘘じゃねえよ!こんなわけわかんねえ戦闘の連続、もう飽き飽きしてたんだよ!さっさと負けて終わらせたかったんだよ!」

 そこでケンタは真っ直ぐにこちらを見てきた。

「トモキさっき言ったよね?僕は見ていたんだよ。誰もやらない事をお前はやっていたじゃないか」

 ケンタお前何を見てたって言うんだ。

「『さっさと負けたかった?』それは違うよ、誰よりも勝ちたかった、だから次の防衛に勝つための準備を毎回していたんじゃないか。!」

 …………

「な!なんだとあれは運営が始末していたんじゃないのか?」

「あーしも運営かシステム的な何かがやってくれてるもんだと思ってたっす」

 外野が声を上げる。

「そんなの出鱈目だろう。俺がやったっていう証拠でもあるのかよ?」

「…いいよ、答え合わせをしよう。今日の質問はまだ使ってなかったからね」

 そう言うとケンタは時計台広場のアナウンス装置に向かっていく。

 やめろよケンタ

「質問⑨:撃破したヒューマロイドを破棄していたのは誰?」

「回答⑨:回答します。防衛開始から今日に至るまで活動停止となったヒューマロイドを破棄していたのは『佐藤智樹』です」

 やめろよ

「やっぱりトモキだった。僕は1回たまたま見たんだよ。使っていない用水にヒューマロイドを破棄しているところを。誰でもできるけど誰もやらなかったことそれをトモキはやっていた」

「……確かに私たちがヒューマロイドと戦ったところにはネジ1つ落ちていなかった。佐藤智樹あなた防衛の成功率を高めるために。その残骸が万一稼働しないために破棄を行っていたのね?」

 流石、風切さんいや探偵KAMI。なんでもすぐに答えに結び付ける。

「もう答えは出たよトモキ。君は誰よりも防衛を成功させたかった。誰よりも万一に気を配っていた。だからそのを下ろしてよ。」

 クソッたれ何もかもお見通しってことじゃねえか。

「……俺は凡人だ。だからヒューマロイドの破棄くらいしかできなかった。途中で何か超人的な力に目覚めるなんていうこともなかった。でもお前らはそうじゃなかった並走していたと思っていたケンタでさえもいつの間にかずっと先を走っていた。だから俺なんていらないって思っていたよ。誰にも必要とされていないってそう思っていたよ」

「馬鹿ね、佐藤智樹。何、人のいいところだけを見ているのよ?薄井健太は積極性に欠けていて、戸田唯は面倒くさがり、新井健は馬鹿で、サイカちゃんなんかはもうコミュニケーションが終わっているじゃない。そして私には腕力がない。あなたはそのどれにも勝っているのよ?結果の派手さばかりをすべてだと思わないで。」

 完敗だった、褒め殺しっていうのはこういうことを言うのだろうか。

「はは、そう言われると何も言い返せないっすね」

 俺は銃口を下ろした。

 全員の顔を見渡したが敵意を抱いている眼はどこにもなかった。

 

 なんだ、最初から俺はここにいてよかったのか。

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