第5話 聖女セラ


「それじゃ、ぼくの言うことを聞いてください」

「はい」


 契約成立。


「ああああああああああっっ!!!!」


 あ、やっぱ白目むいてびくんびくんするんだ。


 エーリィがドン引きしてる。


「私の時もこんな感じでした?」

「はい、こんな感じでした」


 女の子がしちゃいけない顔してるからなぁ・・・


 額にかっこいいアキラマークがでてきて、動きが止まる。


「えーっと、大丈夫?」


 エーリィがセラに声をかける。


「エリねぇ・・・・」


 しばらくして正気に戻ったセラ。


「すごかった・・・」


 すごかったらしい。


 そういえば、スキルはどうなったかな。

 セラのスキルを見てみる。


  回復魔法レベルMAX(隷属の代償)

  浄化魔法レベルMAX(隷属の代償)

  (隷属)


 お、なにか生えてる。

 なにを浄化するんだろうか・・・?


「私、わかりました。生きる意味とか、エリねぇの言ったこと。

 アキラさまについていきる。

 もう離れません!」


 セラがぼくにだきついてきた。

 上目づかいで見られると、ちょっとかわいい。


 でも、ちょっとくさい。

 とりあえず、どっかで体を綺麗にしてあげたい。


 ここはお風呂とかなさそうだしな。

 仕方がない。


 でも、やっぱりくさい。


 そういえば、セラのスキルの浄化魔法って、きれいになるってことだよね。


「とりあえず、その新しい魔法を試してみようか。

 浄化魔法ってわかる?」


 セラはぼくの言葉にこくりと頷く。


「なんかこの辺一帯が汚れてる感じがするから、ちょっときれいになるかどうかやってみよう」


 さすがに本人がくさいから、きれいにしようとは言えなかった。


「やってみます」


 少し考えるように目を閉じてから


「浄化魔法!」


 と、いうと虹色の光があたり一面に広がる。


「うわ! こんなふうになるんだ!」


 周りの人たちが、なにごとかとこっちを見ている。

 こんなに派手だとは思わなかった。


 光が収まると、あたり一帯の汚さが消えている。

 周りの人たちは、なにが起きたのかと騒いでいる。


 セラに近づくと、もうくさくない。

 とりあえず成功だ!

 やりすぎた感があるけど。


「うん、きれいになったよ」


 ぼくがそう言うと、セラは嬉しそうに笑った。


「素晴らしい力だ。

 ありがとうございます」


 奴隷にされてお礼を言われるとは思わなかった。

 もしかして、奴隷にされたことを気づいていない?

 ま、いっか。

 とりあえず、それより優先すべきことがある。


「ところで、なにか食べるものない?」




◆◆◆


【聖女セラといえば、世界でもっとも有名な名前だろう。


 自己犠牲とその献身的な精神で人々を救った。

 そして、その教えは、いまでも我々の精神を救ってくれている。


 純潔の聖女、救世主、神の癒し手。


 彼女こそが神が与えた人類の希望なのだ。】



 -セラ暦 254年著-

 四十五代目教皇の手記より 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る