第4話 セラという少女


「町に知り合いがいるので、そこへ行きましょう」


 町の中心あたりは石作りのきちんとした建物だったけど、壁の周りは木と草を組み上げた建物が並んでいた。


 建物というか、小屋って感じだな。

 どっちかというと、人間の巣?

 そんな感じを受ける粗末な建物だ。


 人も結構いる。

 昨夜は全然見かけなかったけど、日がでると巣からでてくるみたいだ。


「中心には、国の王がいて、その周りは兵たちとその家族が住んでいるの。

 周辺は、王と兵たちを頼ってきた人たちが集まって暮らしているのよ」


 エーリィが国の成り立ちを説明してくれる。

 ぼくは町だと思っていたけど、この町全体でひとつの国だったみたいだ。

 都市国家なのかな?


 王が人をまとめて、国を作って、戦争をして、他の国を飲み込んでだんだん大きくしていく。

 でも、まとめきれなくて分裂して小さな国に分かれて。

 ここではそんなことがずっと繰り返されているらしい。 


「この町は王が倒れたから、しばらくすれば別の王に支配されることになるでしょう」


「王が倒れて国が弱くなったから、ぼくたちが召喚されたの?」


 エーリィの言葉に、ぼくは疑問に思ったことを聞いた。


「え!?」


 すると、エーリィが驚いた表情でぼくを見た。


「え!?」


 あれ? なにか間違えた?


「あ、いえ。そうよね、わからないわよね。

 昨日、斬ったのが王だったの。

 王は戦争をして国を大きくするためにアキラさまたちを召喚しました」


 そうだったのか。


 たぶん、あの偉そうなおっさんがそれっぽい。

 王よ、ごめん。


「アキラさまは王になりたいですか?」


 うーん、ぼくには向いてない気がする。

 戦争して国を大きくとか、あんまり興味がない。


「アキラさまの力なら、不死の王の国よりも大きい国が作れそうですけどね」


 なにそのヤバそうなやつの国。

 いまはない世界を支配した伝説の国らしい。


「ぼくは戦争とか怖いから嫌かな」


 ぼくは異世界転生はスローライフ派だ。



 しばらく歩いて、巣の前でエーリィが立ち止まった。


 巣の前に草を敷いて、そこに座っていた小汚い女の子がいた。


 日本基準なら、完全に乞食の人だけど、周りもみんなそんな感じだ。

 これが普通なのか?

 エーリィは、ここの人に比べると結構綺麗な服を着ている。


「おはよう、セラ」 

「エリねぇ!」


 セラと呼ばれた女の子はエーリィを見るなり抱き着いていた。


 その子は、汚くてくさそうだけど、よく見ると結構かわいい顔をしていた。

 磨けば光るタイプ?


 スキルを見てみると


【回復魔法レベル2】


 お、ヒーラーじゃん。

 パーティには必須だよね。


「最近はあんまり帰ってこないから心配していたよ」


「隷属契約していたから」


「そうだったんだ」


 そうだったんだ!?


 隷属契約軽いな。

 ここではそんな感じなのか。

 もしかして奴隷王スキルって隠す必要なかった?


「もう契約は終わったの?」


「王が倒れたわ」


「そっか、それじゃこの国も荒れるね」


「ええ」


「あの、はじめまして、アキラといいます」


 とりあえず、ぼくはセラに自己紹介した。


「エリねぇ、この人は?」


 セラは明らかにぼくを警戒している感じだ。


「私の新しい主人よ」


 エーリィが答える。


「お金持ち?」


「すごいスキル持ち」


「え!? そうなの?

 ごめんなさい、私はセラ。

 回復魔法使いだ。よろしくお願いします」


 すごいスキル持ちって聞いた瞬間、態度が変わった。


「すごいスキルがあると、なんか違うの?」


「優れたスキルを持った人に仕えることができれば、食べ物や着るもの、それから住むところの心配もなくなることが多いの。

 だから私も、この国の王のスキルが素晴らしいものと聞いて、出仕していました」


 なるほど。


 スキルがある世界では、スキル次第で生活が決まる。


 恵まれないスキルの人間は、恵まれたスキルの人に仕えて、衣食住を保証してもらう感じなのか。


「回復魔法って結構良さそうなスキルなんだけどダメなの?」

「私はまだレベルが低いし、それにちょっと事情があって・・・」


 レベル2は低いのか。

 まぁ、低いか。


「セラ、アキラさまと一緒にこの国を出ましょう。

 この国は荒れるわ」


 セラは困ったような顔でエーリィとぼくをみた。


「大丈夫、アキラさまのスキルはすごいから。

 あの世界とひとつになる感覚は世界の真理が見えるわ。

 まるで神が天から降りてきて、耳元で真実を囁くような・・・

 生きる意味とかそういうのが、言葉じゃなくて感覚で理解できるわよ」


 エーリィがうっとりした顔で語る。


 あ、ぼくそれ知ってる!


 いけない薬が大好きな親戚のお姉ちゃんが同じこと言っていました!

 ダメなやつだ! それ絶対ダメなやつだ!


 でも、回復魔法はこれから先、なにかと必要な気がするので黙っていました。


「生きる意味・・・?」


 セラは怪しい宗教関係者でも見るような目でぼくをみる。


「ほら、ちょっとだけ、ね? ちょっと試すだけだから」


 エーリィが詐欺師みたいなことを言ってセラを誘う。


「エリねぇの額のそれも、すごいスキルのせいなの?」


 セラがエーリィの額を指さす。

 やっぱ気になるよね、額のかっこいいアキラマーク。


「え?」


 エーリィがぼくのほうを見る。


 あ、本人気づいてなかったのか。

 鏡とかないもんな。


 でも、それはよくわからないんだよね。


「スキルの効果です」


 それだけは確かなので、ぼくはそう答えた。


 実際、どんな効果があるのか不明だし。

 隷属マークとかだったらやだな。


「たぶん聖痕とか? かな?」


 ぼくは適当なことを言った。


「せい、こん?」


「聖なる印とか、そんな感じ」


 たぶん。そうだといいな。

 でも女の子の顔に、こんなマーク入るの嫌だよね。


「エリねぇ、痛くないの?」

「痛くないし、なにかあるのわからないわ」


 セラはちょっと考えてから


「わかった、エリねぇを信じる」


 今の流れで信じちゃうのか・・・


「ちょっと試すだけだから」


 やっぱりちょっと疑ってるっぽい。

 それはそう。


 ごめんね。


 ちょっと試すとか、ないんだ。たぶん。

 解除の仕方とかわからないし。


 だますみたいで申し訳ないけど、回復魔法が欲しいだ。

 ごめんね、セラちゃん。


「それじゃ、ぼくの言うことを聞いてください」

「はい」


 契約成立。

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