貴方に渡すプレゼント

テマキズシ

僕は貴方のことを愛している


 僕の名前はZ

 どこにでもいるサラリーマンだ。


 僕は…彼女のことが、同僚のAさんの事が好きだ。

 初めて会った時、一目惚れをした。

 雷に打たれるような衝撃を受け、後少し彼女の顔を直視していたら理性が途切れ、倒れてしまうところだった程に。

 彼女の美しさに、僕はやられたんだ。


 Aさんと僕の共通の友人Bは僕の恋路を応援してくれた。

 Bは何処から手に入れたのかは知らないが、Aさんの好きな食べ物や好きな場所を教えてくれた。

 ……そして明日がAさんの誕生日だということも、彼は教えてくれた。



 僕は急いでバースディ・プレゼントを用意し、とうとう今日!

 僕は彼女にバースディ・プレゼントを渡す。

 これで少しでも仲を縮め、彼女の友人と呼べる仲にまでなってみせる!!!


「……Aさん。ちょっと…良いですか?」


「…? 良いですけど…。何のようですか?」


 仕事終わりに彼女を呼ぶ。

 元々人の少ない会社だからか、僕達二人の他には誰も居ない。

 僕は意を決して彼女にはバースディ・プレゼントを渡す。


「こ、これ! バースディ・プレゼントです! きょ、今日が誕生日だと聞いて…。日頃のお礼にって、思って!!!」


「!?」


 噛み噛みになりながら、持っていたカバンからバースディ・プレゼントを出し、彼女に渡す。

 だが、どれだけ待っても彼女はバースディ・プレゼントを取ろうとしない。

 不審に思って顔を上げると、彼女は見たこともないような表情で僕の事を睨みつけていた。

 そして懐から何かを取り出す。


「……え?」


 銃だ。良くドラマとかで見たことがある銃。

 それが今目の前にあり、僕の頭に突きつけられた。


「……な、何を、してるんですか? …ハハハ。……冗談にしても、変ですよ」


「……………なんで!!!」


 彼女の怒声が周囲に響く。


「なんで私の誕生日を知っている!? 答えろ!!」


「え……え?! そ、それは」


「速く!!!」


 銃を額にグリグリされ、その冷たい金属の感触に恐怖が止まらない。

 震える声で、僕は回答する。


「Bさんに教えて貰ったんですよ! ほら! Aさんの友人の! 僕もBさんとは友達で、話したら教えてもらったんです!」


「………………は?」


 彼女は、いや世界が固まった。

 錯覚だが、確かに僕はそう感じた。

 彼女は銃を突きつけたまま、何やらブツブツと独り言をしている。


「ありえないありえないありえない。確かにあの日、Bは死んだはずだ。だけど彼は嘘を言っていない。機械の故障? いやそんなはずはないメンテナンスはきちんと行なっている。だが何度彼を見ても結果は同じ。一体何がどうなって…………」


 何を言っているのか、理解ができなかった。

 ただ、とてもヤバい状況になっていることだけは理解できる。

 僕はどうしたら良い? 何か彼女に話しかけたら良いのか? でも何を?


 頭の中が混乱でグラングランしている所、ふと、Bさんが言っていた言葉が頭の中に浮かんできた。

 普段のBさんの冗談にしては珍しくマジのトーンで話したあの言葉。

 僕は彼女にあの言葉を話す。


「……Aさん。僕、Bさんに言われたことがあるんです」


「………………どんな言葉?」


 こちらを殺せそうな目で威嚇してくるBさんに、僕は覚悟を決めて話す。


「『彼女を頼む』って、言われたんです。冗談かと思ったんですけど、まじめなトーンで言われて…。まあすぐにいつものおちゃらけた様子になったんですけどね」


「!? ……そう、ですか」


 彼女はその言葉を聞いた途端、動揺と少し懐かしむような表情を取り、ゆっくりと銃を下ろす。

 だがすぐに何かに気づいたようで、周囲の様子をチラチラと見る。



 ……その時、突然会社の電気が消えた。


「うわ! なんだ!?」


「……そんな! まさかこんな所まで!!」


 彼女の慌てる声と同時に、窓ガラスの割れる音と銃声が聞こえてくる。

 何故、それが銃声だと気づいたのか。理由は明白だ。



 ……僕の足が、撃たれたからだ。


「があ!!! っつぅ……」


「Zさん! まずい!」


 彼女は持っている銃を撃つ。

 ドガガガ!!! という良い音と共に、何者かの悲鳴が聞こえる。

 そしてしばらくして、悲鳴が止んだ。


「はあ…はあ…はあ」


 激しい銃撃戦だったようで、壁は穴だらけ。

 彼女は肩で息をして、こちらの方を向く。


「…………え?」





 その時、僕は見た。

 彼女の身体に銃弾がめり込み、機械が身体から出ているのを。


「あ〜あ。見られちゃったか」


「……Aさん。……その体」


 僕が身体のことを問おうとすると、彼女は手でそれを制し、話し出す。


「巻き込んだ以上……。いや、死んだはずのBが貴方にその言葉を話したのなら、私の口から話すよ。……私の正体を」


 一息呼吸を入れてから、彼女は話を続ける。


「私とBはね、とある研究機関の生まれだったんだ。生まれつき身体を改造されたサイボーグ。世界の危機に対抗するため、という理由で私達は作られた」


 彼女の両腕がガトリング砲に変わる。


「でもある日、研究機関が何者かに襲われた。私とBは共に逃げたけど……Bは途中で敵の罠にかかって連れ去られた。」


 彼女は涙を流し、喋る言葉には嗚咽が混ざる。


「三日後、死体が見つかった。Bが改造されていた部位は全て取り除かれていた。両目はくり抜かれ、足は無くなっていて……」


「………………」


「その後私は身分を偽装して、いまらこうして普通の会社員として暮らしていたの。……まあ、偽装はバレちゃったみたいだけど」


 彼女はそこら中に散らばっている死体を蹴り上げると、ゴミを見る目で胸ぐらをつかむ。

 そしてそいつらの服に付いていたバッチのような物をこちらに見せてきた。


「これが…研究機関を襲った奴らと同一組織の犯行という証拠。……Bの人生は、こいつらに奪われた。私の人生も……」


 彼女はそう言うと、割れた窓ガラスから飛び上がろうとする。

 僕はそれを慌てて止めた。



 ……彼女に、話さなければならないことがあったからだ。


「待ってください!!! 僕も一緒に行きます!!!」


「……だめ。Bが何を考えているのか分からないけれど、貴方を巻き込めない。……それに、信用できないの。貴方の事。嘘はついていないけれど、……怖いの」




 そう言って逃げ出そうとする彼女に、僕は言った。





「僕もサイボーグです!!!」


「…………え?」


 僕は先程撃たれた足を見せる。

 撃たれた部分からは金属が露出し、人工皮膚が剥がれているのが見える。

 そして更に、僕は両目を取り出した。


「僕はかつて、両目と両足を失い、命の危機に陥りました。…その時、僕はこのケガを負わせた何者かに連れ去られ、その場に居た研究員達に改造手術を受けたんです」


「そんな……。じゃあ…………貴方も?」


「はい。貴方の後輩です。僕はその後、研究員の一人に逃がされ、今に至ります」


 色々と頭が冴えてきた。

 僕の中にある疑問の答えがでてくる。



「なんで死んだはずのBさんと出会ったのか、今の僕には分かります」


 僕は彼女を見据え、言った。


「僕のパーツはBさんの物です。……だから僕は死んだはずのBさんに会うことができて、こうして貴方の事を好きになった」


「…………………」


 絶句する彼女に僕は告げる。


「僕は貴方を守ります。これはBさんの望みであり、僕の望みです。貴方の人生は僕が守ります」


 僕は彼女に手を伸ばした。


「僕を……信用してください! 僕は! 貴方の人生を絶対に守ってみせます!!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貴方に渡すプレゼント テマキズシ @temakizushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ