第6話 王子の気に入らない本

城で暮らし始めて数日。

まだ分からないことも多いが、一つだけ分かったことがある。


それは、私の行動次第で物語の筋が変わる可能性があるということだ。


攫われずに馬車で送られた件にしろ、昨日の牢屋の件にしろ、おそらく私が本編と違う行動をしたことで何らかの変化が生じたのだ。


これからの行動次第では、このヤンデレと添い遂げる話がなくなるかもしれない。


頑張るしかない。キモいし。


ヘレヨンはキモいが、いい意味で肩透かしを喰らったこともある。


それは、城での生活環境だ。


意外にも、割と不自由なく暮らせているのだ。


食事は現代で食べたらどれくらいするだろうっていうフランス料理的な何かがいっぱい出るし。


城内にはなぜか大きな劇場もあるし。


可愛いお化粧品やドレッサー、ふりふりの天蓋ベットもあって乙女心をくすぐられる。


何より、木製の大きな図書館があるから暇には事欠かない。


おばあさまやおじいさまのことがなければ、思わず絆されていたかもしれない。


でも、私はヘレヨンに報復したい。

そのためには、絆されるわけにはいかない。

ここでは情報集めをして、ヘレヨンを出し抜く方法を探らなきゃいけないんだから。


そう思いながら私は図書館へと向かった。

図書館には色々な本が置いてある。童話から政治の本に至るまで、本当にたくさん。


この数日間はとりあえずこの国の政治制度と格闘技の本を読んでいる。


「えーっと、もう読んだところは…」


「何読んでるの。」


「!?」


ヘレヨンに肩をぽんぽんと叩かれる。


「えっ、えっと…こっ、これは…」


「僕も読んだ本だよ。勉強のために。ほら、このページとか…。」


ヘレヨンが密着しようとしてくる。私は持っていた本でさりげなくヘレヨンを小突いた。


「もう。痛いなぁ。でも、こんな本を読むなんて、君はよっぽど政治に関心があるんだねぇ。すごいなぁ、君。」


明らかに疑われている。まずい。


「あっあなたと結婚するにあたって、政治のことについて何も知らないのはなぁって…ほっほら、一国の王妃になるわけですし!?」


「格闘技の本は?」


「……屈強な女になりたくて」


「……。」


「……。」


「君達、こういう本全部撤去して。」


「かしこまりました。」


「あっ…」


みるみるうちに本が運ばれていく。


「やっやめてっ!!」


本を追う私をヘレヨンは抱きついて止めようとするので慌てて体をそり返し離れる。

急な接近に慌てている私に、ヘレヨンは近づいてこう言った。


「僕を殺そうとしても無駄だからね。君の役に立ちそうな本は全部燃やしておくよ。」


貴重な情報源を失ってしまった。

私は心臓はどくどくいうのを感じた。

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